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3.番えないアルファ
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寝室で理央の足の爪を磨いていた。
風呂あがりのやわい膚の感触に微かな劣情を感じて、白い足の甲に口付ける。
「……剱」
「はい」
「眼帯、取れよ」
「……いえ、理央を不快にさせてしまいますから」
「見たい」
「……見せたこと、ありますよ。気持ちのいいものではありませんから」
「剱」
遮るように呼ばれて顔をあげた。
瞬間、理央の指が俺の眼帯を解く。
咄嗟に顔を伏せた。
「理央、」
「顔をあげろ」
「……しかし、また、不快な思いを、」
理央の両手が俺の頭を挟んで持ち上げる。
目を伏せ、息を殺した。
「なんだ、……綺麗じゃねーか」
「……」
「俺を見ろ」
「いえ、」
俺は恐ろしかった。
かつてのように、拒否されるのではないかと。
「剱」
厳しい理央の声に逆らえなかった。
視線を持ち上げ、理央を見上げる。
「……綺麗な蒼だ」
俺の前髪を優しく払う理央の手を掴んで手首に唇を押し付けた。
「……有り難う、御座います」
「俺の部屋では眼帯は取れ」
「ですが、ご不快では、」
「言った通りだ。今見たら悪くない。綺麗だ。今後はこの部屋に居るときは眼帯を取れ」
「……かしこまりました」
珍しく俺に優しく接する理央に戸惑う。
その俺の髪を撫で、理央は「お前はいい匂いがするな」と微かに笑んだ。
久々に両目で見た理央は、やはり美しかった。
「……理央は、変わらず綺麗です」
「……そうか」
「理央、」
「……お前が、……いや、俺が暁じゃなかったら。……お前と番になれたのにな」
理央が、暁ではなかったら。
だが、理央が暁だからこそ。
「理央が暁ではなかったら、俺は理央に仕えることができません」
「お前が剱じゃなけば?」
「俺が剱ではなければ、こうして理央のお世話をさせていただくこともありませんでした」
理央に、自由に触れることすらできなくとも。出会わないよりも、ずっといい。
ふう、と理央が溜め息を吐く。
「俺が暁ではなく、お前が剱ではなかったら?」
「……出会っていません」
「……俺が好きか」
「好きです、理央」
寂しそうに笑った理央は、儚く。
その寂寥を埋める術を、俺は知らなかった。
※
「剱」
「ん」
二条にねだられ、理央を送迎の車に乗せてから、放課後の教室で数学を教えていた。
「剱は暁と付き合ってるの」
「バカなこと言うな。理央はそんな風に見ていい対象じゃない」
「……でもいつも一緒にいるじゃん」
「俺は理央のお世話をさせていただいてるだけ。そんな風に考えること自体、失礼な人だ。……そこ、違うよ。公式を間違えてる」
突飛なことを言う二条に溜め息を吐く。
理央は俺の存在意義の全てだ。
俺は理央の所有物であり、付き合えるような、対等な立場の人間ではない。
「……剱っていい匂いするよね」
「そう、?」
「剱のバース性ってなに?」
「……アルファだよ」
そう告げたら二条が目を輝かせた。
「本当に!?」
「?、……あぁ」
「じゃあぼくの番になってよ、ぼくオメガなんだ。もうヒートもきてるし、……」
知っている。
全生徒のバース性を記憶した際に確認済み。兄の副会長はアルファ。
現在、この学校でオメガは二条と理央の二人だけだ。
そっと目を伏せる。
「……ダメだよ。二条の番にはなれない」
「どうして?」
「俺が剱だから」
もはや剱が二条に仕えることはない。
「……剱、」
「この話は終わり。続きして」
不安そうな顔を向けてくる二条に教科書を開いて渡す。
「ねえ、剱、」
「公式はこれを使う」
二条には番にと望まれるのに、暁の主人とは絶対に番になれない剱である自分が憎い。
皮肉なものだと、内心笑った。
風呂あがりのやわい膚の感触に微かな劣情を感じて、白い足の甲に口付ける。
「……剱」
「はい」
「眼帯、取れよ」
「……いえ、理央を不快にさせてしまいますから」
「見たい」
「……見せたこと、ありますよ。気持ちのいいものではありませんから」
「剱」
遮るように呼ばれて顔をあげた。
瞬間、理央の指が俺の眼帯を解く。
咄嗟に顔を伏せた。
「理央、」
「顔をあげろ」
「……しかし、また、不快な思いを、」
理央の両手が俺の頭を挟んで持ち上げる。
目を伏せ、息を殺した。
「なんだ、……綺麗じゃねーか」
「……」
「俺を見ろ」
「いえ、」
俺は恐ろしかった。
かつてのように、拒否されるのではないかと。
「剱」
厳しい理央の声に逆らえなかった。
視線を持ち上げ、理央を見上げる。
「……綺麗な蒼だ」
俺の前髪を優しく払う理央の手を掴んで手首に唇を押し付けた。
「……有り難う、御座います」
「俺の部屋では眼帯は取れ」
「ですが、ご不快では、」
「言った通りだ。今見たら悪くない。綺麗だ。今後はこの部屋に居るときは眼帯を取れ」
「……かしこまりました」
珍しく俺に優しく接する理央に戸惑う。
その俺の髪を撫で、理央は「お前はいい匂いがするな」と微かに笑んだ。
久々に両目で見た理央は、やはり美しかった。
「……理央は、変わらず綺麗です」
「……そうか」
「理央、」
「……お前が、……いや、俺が暁じゃなかったら。……お前と番になれたのにな」
理央が、暁ではなかったら。
だが、理央が暁だからこそ。
「理央が暁ではなかったら、俺は理央に仕えることができません」
「お前が剱じゃなけば?」
「俺が剱ではなければ、こうして理央のお世話をさせていただくこともありませんでした」
理央に、自由に触れることすらできなくとも。出会わないよりも、ずっといい。
ふう、と理央が溜め息を吐く。
「俺が暁ではなく、お前が剱ではなかったら?」
「……出会っていません」
「……俺が好きか」
「好きです、理央」
寂しそうに笑った理央は、儚く。
その寂寥を埋める術を、俺は知らなかった。
※
「剱」
「ん」
二条にねだられ、理央を送迎の車に乗せてから、放課後の教室で数学を教えていた。
「剱は暁と付き合ってるの」
「バカなこと言うな。理央はそんな風に見ていい対象じゃない」
「……でもいつも一緒にいるじゃん」
「俺は理央のお世話をさせていただいてるだけ。そんな風に考えること自体、失礼な人だ。……そこ、違うよ。公式を間違えてる」
突飛なことを言う二条に溜め息を吐く。
理央は俺の存在意義の全てだ。
俺は理央の所有物であり、付き合えるような、対等な立場の人間ではない。
「……剱っていい匂いするよね」
「そう、?」
「剱のバース性ってなに?」
「……アルファだよ」
そう告げたら二条が目を輝かせた。
「本当に!?」
「?、……あぁ」
「じゃあぼくの番になってよ、ぼくオメガなんだ。もうヒートもきてるし、……」
知っている。
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現在、この学校でオメガは二条と理央の二人だけだ。
そっと目を伏せる。
「……ダメだよ。二条の番にはなれない」
「どうして?」
「俺が剱だから」
もはや剱が二条に仕えることはない。
「……剱、」
「この話は終わり。続きして」
不安そうな顔を向けてくる二条に教科書を開いて渡す。
「ねえ、剱、」
「公式はこれを使う」
二条には番にと望まれるのに、暁の主人とは絶対に番になれない剱である自分が憎い。
皮肉なものだと、内心笑った。
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