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27・ただ一つ、仄暗い喜び
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しおりを挟む「アルファを生めるのはアルファと番ったオメガだけで、アルファ性が生まれる可能性は極めて低い。運命であれば僅かに確率は上がるが、それでもたかが知れている。これはアルファ性の誕生にオメガ性の因子が必要だからだ。ベータがアルファに昇格するのも、必ずオメガなりアルファなりの血縁が過去にいたからで、ほぼ全ての人間はオメガの因子を有している。論理上、アルファ性とアルファ性で子を生すなら必ずアルファが生まれる。これがわかっていて不可能なのは、アルファ性はアルファ性に惹かれない。互いの匂いを生理的に受け付けないからだ。だが理央様は違う。…わかるだろう」
「…以前から一つ気になっていたことがあったのですが…通常、オメガのフェロモンを感知出来るのはアルファや一部のベータだけで間違いありませんか」
「間違いない」
「理央様は他のオメガの匂いやメスの匂いに酷く敏感で、アルファ同士のように拒絶されていました。暁の血筋やオメガとしての成長が遅いことが原因かと思っていたのですが…」
「理央様はアルファ性でもある。オメガのフェロモンも感知出来ただろう。アルファ同士の匂いもオメガ同士の匂いもわかるなんて不快だっただろうね」
「…っ、やはり、アルファのようなオメガではなく、アルファであり、オメガだと」
思わず口もとを手で覆った。
「いわば理央様はオメガ器官を持ったアルファだ。アルファの子を生めば必ずアルファを生む。誰もが喉から手が出るほど欲しい代物だ。それが暁の血を継いでいる。外部の人間が知れば『何をしてでも』手に入れたいだろうことは想像がつくだろう」
「…理央様のオメガ器官を除去することは――」
「倫理に反する。すでにオメガ性を公表した後だ」
「しかし前例が無い以上、どちらのバース性を選ぶかの権利は――」
「アルファ性は人間という種としての財産だ。ゆえにアルファ性を生んだオメガは社会に優遇される。本来なら公表して人類に貢献する為に研究と繁殖に従事すべきだ」
悉く否定され、唇を噛む。
「…俺の、せいで、」
「暁ゆえのことだ。暁以外の人間ではありえない。絶対に外部には出せない情報だ。一族で検討し今後を決定する必要がある。…理央様はただのオメガだ。もし、何かあっても全て沈黙で通せ。いいな」
「はい」
神木が深いため息を吐いた。
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