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27・ただ一つ、仄暗い喜び
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しおりを挟む「…はい」
「理央様は、『どう』だった」
「…仰る意味がわかりません」
脚を組み直し、神木はその膝の上で手を組んだ。
「先程、紫香楽が来てね。受け取ったんだが…」
神木が上着のポケットから、折り畳まれた用紙を取り出して広げる。
向きを変え、そっとローテーブルの俺の前に置いた。
「以前、紫香楽の病院で採血と細胞検査を受けただろう。理央様のバース性塩基配列と照合した結果だ」
「…」
用紙の隅、結果の欄に『99.97%合致』とあった。
「運命だよ」と、静かに告げられた言葉に呼吸を忘れた。
だが、すぐに否定する。
「データベースに登録されている情報にはそんな記載はなかったはずです」
「当然だ。そんな検査をする必要もなかった。理央様はアルファなのだからね」
神木の言葉を、理解出来なかった。
「…理央様はオメガで――」
「紫香楽の話では一般的なオメガと違い、恐らく運命以外とは番えないだろうとのことだった。抑制剤の効果が芳しくないのも仕方がない。理央様はアルファだ」
「…何を、仰っているのです。理央様は、」
「後天的なオメガだ。理央様がそう望み、『そうなった』。恐らくは暁詠理もそうだったのだろう。オメガとしての成熟は随分後のことだったはずだ。あの時代のバース性医療ではわからなかったがね」
「は…、」
「理解し難いのはわかるよ。だが事実だ。理央様は君の支配を『望んだ』。君がアルファだったから、理央様はオメガになった。そういうことだ。オメガとしての成熟が遅かったのも仕方がない。オメガの身体になるには時間が必要だったろう」
神木の声は耳に入ってはいたが、その言葉に思考が追いつかない。そんな、俺にとってだけ都合のいいことが、あるはずがないだろう。「…何を、仰っているのですか…オメガ器官を後天的に得ることなど不可能です」
「確かにそうだ。バース性が後天的に変わることは稀にあるが、殆どがベータからアルファへの昇格だ。周囲にオメガ個体が多く、アルファ個体が居ない環境下で成長過程にある場合、アルファ器官の成長ホルモンが分泌され稀に起こる。逆の例は無い。オメガ性は胎児の間に成長ホルモンが分泌され決定するのでね。オメガ性よりもアルファ性のほうが多いのはこの影響もあるだろう。…が、アルファが後天的にオメガ器官を得て、ヒートを迎えた前例はない」
「オスがメスになるのは原始的な生物でなければ不可能です」
「だが暁の人間ならば可能だということだ。おそらく脳機能が影響しているとは思うが。この事実は絶対に外には漏らせない。絶対にだ」
「…なぜ」
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