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27・ただ一つ、仄暗い喜び
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しおりを挟む「…なぜ、」
俺の髪を撫でていた理央の手が止まる。
「…俺は、…お前を幸せにしたい」
「っでしたら、」
「俺はお前から全てを奪ってしまう。自由も、意思も」
「自由など必要ありません。あなたの剱でいられることが俺の幸福です」
曖昧に笑って、理央は「そんなわけがないだろう」と静かに、吐息するように囁いた。
ゆっくりと降りた理央の目蓋が、その夜色の眸を隠す。
俺の機嫌を窺う仔犬のように、俺の頬に恐る恐る鼻先を擦らせる仕草に堪らなくなった。
理央の手に指を絡め、小さな頭を抱き寄せる。
身を寄せてくる理央の美しい黒髪にキスして頬にも口付け、自分の身体で隠すように抱き締めた。
夜など来なければいい。
声に出さずに呟き、腕の中の理央の馨りに吐息した。
※
次に目を覚ましたとき、ベッドには俺一人しかいなかった。
眠るまいと、耐えていた自分の努力は無駄になったらしい。
部屋に明かりはなく、既に日は落ちていた。
月明かりの中で冷えたシーツに手をのばす。
「…理央」
居ないと分かっていて呼んだ。
シーツに染み込んだ甘い匂いに目眩を感じながら時計で時間を確認し、身体を起こす。
二十一時を過ぎていた。
ベッドサイドのソファの背に掛けられていた自分のシャツを羽織り、理央の寝室を出る。
瞬間、部屋の明るさに目が眩んだ。
人の気配に、白い視界で無理矢理瞬きを繰り返す。
リビングの隅の理央のお気に入りのソファに、運転手の制服のままの神木隼斗が座っていた。
一瞬でも期待した自分の愚かさに嫌気が差す。
膝にのせた本を閉じ、目の前のローテーブルに置いて、神木は俺に目を向けた。
「お早う、大和。…気分はどうだね」
「…最悪です」
「理央様は二時間ほど前にここを出た。僕が吉良邸まで送ったよ」
「そうですか」
「挨拶くらいしてはどうかと、一応は勧めたが」
「…そう、ですか」
憐れな、捨てられた仔犬を見るような目で、神木は俺を見た。
「座りたまえ」
「…はい」
「その前に何か飲むといい。声がかすれているよ」
「…」
カウンター横の冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り、神木の正面のソファに座る。
水を飲んで一つ息を吐いた。
「…理央様は僕を見て笑ったよ。疾うに知られていたのだろうね」
「俺はあなたのことを訊かれていませんが、…理央様に隠し事など、できるはずもありません。俺が番のオメガを探していることすら、知られていたのですから」
「そうか」
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