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御殿編
悪夢
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「ぎゃああああああッ!!」
焼け爛れた死体の中に飲みこまれた狩人のモノに激痛が走る。狩人は自分の下半身から煙が出て、自分の肉の焼ける匂いを嗅いだ。皮膚が焼け爛れ、その下の赤々しい肉が露出する。モノに這う筋肉も血管も焼け落ち、その地獄の苦しみに狩人は声にならずのた打ち回る。それを見て死体はカラカラと笑う。
「ほおら…犯せよ犯せ……この身体を貫きたくて堪らなかったのだろう……?いまだ恨みの炎は燃え続けている……このチンケな薪を得て…さらに業火は燃え上がる…ハハハ…」
焼死体は血の滴る焼けた尻肉を上下して狩人をからかう。剥き出しの肉がさらに焼かれ、摩擦によって激痛を齎す。狩人は苦しみを奥歯を噛んで一瞬堪えて力を溜める。
「ッ地獄に…!地獄にッ還れッ…化け物ッ!!」
狩人は無残な焼死体を力の限り蹴り飛ばした。
足の裏は焚火をそのまま素足で踏み抜いたような熱に晒される。地面に転がった焼死体は、土に汚れながらむくりと起き上がり、残った肉と剥き出しの下顎で嘲笑う。
「酷い男だ…身体はナジュのものだというのに……所詮出来がいい兄には成れぬ、卑しい獣か……ククク」
「ッ!!!!」
その言葉に狩人は眉を吊り上げ、ぎょろっとした目で焼死体を睨みつける。森の中に狩人の怒号が響き、立ち上がるのも待てず、手足を使って焼死体に向かって駆けていくその姿は、まさしく獣であった。狩人はその焼死体を踏みつぶそうと足を上げた。しかし焼死体はカカカと笑うと、その姿を変化させた。
「俺を殺すのか…?」
ナジュであった。狩人の親友にして想い人。死して尚欲した相手。何も知らぬような顔をして見上げるナジュの姿に、狩人は魂からの言葉を発する。
「死ねッ死ねッ死ねッ!!お前とてッ…俺を愚弟と蔑む奴は、死ねッ!死に晒せッ!!!!」
「ああ……矢張り、人の情なき、肉欲だけの獣よ…」
ドシャ、グシャ、グシュ、と生前の美しさを保ったナジュの身体に何度も繰り返し振り下ろされる狩人の足。美しい顔はひしゃげ、見るも無残な姿と変わってゆく。しかし、狩人の耳にはナジュのとも、誰ともわからぬ嗤い声が絶えず響いていた。
「ハアッハアッハアッ…!」
どれほどの時間が経過したのか。足に溜まった疲労が狩人を転ばせて、地面に尻もちをつく。尻が着いた時、びしゃっと音がした。生ぬるい水たまりに尻が浸かっている。狩人はそれが何だかわかっていた。ナジュだったものは、頭部が潰れピクリともしなくなった。ようやく死んだか、と狩人は暴れ狂う心臓とナジュの肉体を殺した足を休ませる。息が整ってくると、自分の下半身に目を落とした。そこが確実に焼かれた光景を見た狩人であったが、今見ると何の変化もない。どういうことだ、ともう一度ナジュの肉体に目をやると、そこには焼死体も踏みつぶしたナジュの肉体も無く、ただ変哲のない地面がそこに在るだけであった。
「何だ…!?何も……何もない…!?」
狩人が立ち上がり、恐ろしいものが居たはずの地面を手で触る。少し熱を持った土に狩人の足跡があり、土は渇いている。狩人は自分の足裏を確認すると、そこに一滴も血はついておらず土で汚れていた。
「狐狸の類…白昼夢でも見ていたのか……?」
狩人は滝のような汗をかき、冷え冷えとした背筋に自分の身体を掻き抱く。後味悪い終わりにすぐに山を下りようと、転がっていた下衣と褌を付け直し、服を雑に整えて狩猟道具を持って山を下った。
狩人は背後に視線を感じ、何度も振り返りながら山道を歩いた。彼の悪夢はまだ終わらない。
焼け爛れた死体の中に飲みこまれた狩人のモノに激痛が走る。狩人は自分の下半身から煙が出て、自分の肉の焼ける匂いを嗅いだ。皮膚が焼け爛れ、その下の赤々しい肉が露出する。モノに這う筋肉も血管も焼け落ち、その地獄の苦しみに狩人は声にならずのた打ち回る。それを見て死体はカラカラと笑う。
「ほおら…犯せよ犯せ……この身体を貫きたくて堪らなかったのだろう……?いまだ恨みの炎は燃え続けている……このチンケな薪を得て…さらに業火は燃え上がる…ハハハ…」
焼死体は血の滴る焼けた尻肉を上下して狩人をからかう。剥き出しの肉がさらに焼かれ、摩擦によって激痛を齎す。狩人は苦しみを奥歯を噛んで一瞬堪えて力を溜める。
「ッ地獄に…!地獄にッ還れッ…化け物ッ!!」
狩人は無残な焼死体を力の限り蹴り飛ばした。
足の裏は焚火をそのまま素足で踏み抜いたような熱に晒される。地面に転がった焼死体は、土に汚れながらむくりと起き上がり、残った肉と剥き出しの下顎で嘲笑う。
「酷い男だ…身体はナジュのものだというのに……所詮出来がいい兄には成れぬ、卑しい獣か……ククク」
「ッ!!!!」
その言葉に狩人は眉を吊り上げ、ぎょろっとした目で焼死体を睨みつける。森の中に狩人の怒号が響き、立ち上がるのも待てず、手足を使って焼死体に向かって駆けていくその姿は、まさしく獣であった。狩人はその焼死体を踏みつぶそうと足を上げた。しかし焼死体はカカカと笑うと、その姿を変化させた。
「俺を殺すのか…?」
ナジュであった。狩人の親友にして想い人。死して尚欲した相手。何も知らぬような顔をして見上げるナジュの姿に、狩人は魂からの言葉を発する。
「死ねッ死ねッ死ねッ!!お前とてッ…俺を愚弟と蔑む奴は、死ねッ!死に晒せッ!!!!」
「ああ……矢張り、人の情なき、肉欲だけの獣よ…」
ドシャ、グシャ、グシュ、と生前の美しさを保ったナジュの身体に何度も繰り返し振り下ろされる狩人の足。美しい顔はひしゃげ、見るも無残な姿と変わってゆく。しかし、狩人の耳にはナジュのとも、誰ともわからぬ嗤い声が絶えず響いていた。
「ハアッハアッハアッ…!」
どれほどの時間が経過したのか。足に溜まった疲労が狩人を転ばせて、地面に尻もちをつく。尻が着いた時、びしゃっと音がした。生ぬるい水たまりに尻が浸かっている。狩人はそれが何だかわかっていた。ナジュだったものは、頭部が潰れピクリともしなくなった。ようやく死んだか、と狩人は暴れ狂う心臓とナジュの肉体を殺した足を休ませる。息が整ってくると、自分の下半身に目を落とした。そこが確実に焼かれた光景を見た狩人であったが、今見ると何の変化もない。どういうことだ、ともう一度ナジュの肉体に目をやると、そこには焼死体も踏みつぶしたナジュの肉体も無く、ただ変哲のない地面がそこに在るだけであった。
「何だ…!?何も……何もない…!?」
狩人が立ち上がり、恐ろしいものが居たはずの地面を手で触る。少し熱を持った土に狩人の足跡があり、土は渇いている。狩人は自分の足裏を確認すると、そこに一滴も血はついておらず土で汚れていた。
「狐狸の類…白昼夢でも見ていたのか……?」
狩人は滝のような汗をかき、冷え冷えとした背筋に自分の身体を掻き抱く。後味悪い終わりにすぐに山を下りようと、転がっていた下衣と褌を付け直し、服を雑に整えて狩猟道具を持って山を下った。
狩人は背後に視線を感じ、何度も振り返りながら山道を歩いた。彼の悪夢はまだ終わらない。
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