127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

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肉が焦げる嫌な匂いが静寂の大広間に広がっていく。神様候補達が恐怖で顔を歪める中、金竜だけがカラカラと笑っている。直ぐそこに横たわっている金竜に憧れを抱いていた神様候補の存在など、既に興味は失せたとばかりに一瞥もくれてやらず、己のお気に入りの配下である雷蔵に今しがた話していたナジュと桃栗を紹介する。

「この二人がお前の競合かは知らないが、束の間でも仲良くするといい。名は知らないが面白そうな者達だ」

瞬間的に背後へ移動した金竜に肩を抱かれたナジュと桃栗は一寸たりとも動けない。動きを目で追えなかっただけでなく、その得体の知れぬ性分によって、横に斃れた神様候補の二の舞になる事を恐れているからである。このような事態でなければ、雷蔵の姿を見たナジュはその胸ぐらを掴んで会合での事を詰っていただろう。今はそんな場合ではない。

(こいつ…!雷みたいなのを落として…人…殺して……それがなんでもない事みたいに笑ってる…っ)
「お前達の名は……ナジュに桃栗か。うちの雷蔵と仲良くしてやってくれよ?いざ座を競う時は俺に遠慮しなくて良いからな、雷蔵を殺す気で座を勝ち取れ」
「ぼ、僕…雷座じゃなくて…別の座を目指してますから…」

金竜に微笑まれた桃栗は、震える声で言葉を発する。床に転がる神様候補と同じ運命は辿りたくない、その一心で自分は金竜が言った身の程知らず達とは違うと明言した。

「そうか。お前はどうだ?ナジュ。雷座を欲して…この学舎に足を踏み入れたのか?それとも違う目的か?…お前からは呪いの気配がする」

金竜はナジュの耳元で囁きながら、肩に置いた手を意味深に胸に向かって下降させる。神様候補をいとも容易く滅したその指先が、他夏の髪飾りが下がった場所に触れる。当初と比べそこまで存在を感じないようになってきたが、今は不思議と髪飾りが胸の先をきつく絞めている気がした。

「くっ…」
「もしや…呪いを掛けた相手への復讐の為か?クク…そういうのは好きだぞ、楽しい。相手は誰だ?俺の知っている奴か?」

髪飾りを操り、僅かに痛みを受けている様子のナジュを見て、にやにやとしながら問う金竜。その内心はこれから起こるかもしれない諍いに胸躍らせている。髪飾りをナジュに渡したのは他夏だろう、ならば他夏を狙っているのか、はたまたその髪飾りの呪いの大本である金竜を狙っているのか。金竜は楽しそうにしながらナジュの答えを待つ。金竜の近くで膝をついていた雷蔵は、主様の隣に居るのが会合の時に他夏に誘われて交わった"淫馬"であると気が付いた。

(あいつあの時の…!)
「なあ、お前は何を目指して学舎ここに来た?」
「俺は…」
「金竜殿!」

大広間の出入り口の扉を勢いよく開き、中に入って来た者がいた。金竜の動向に集中していた神様候補達は、一斉にそちらを向いた。

「おう!出海いずみ殿じゃないか!久し振りだな」
「久し振りですが騒ぎを聞きつけて見れば、全く…!また勝手に忍び込んだでしょう!」
「すまんな、暇だったんだ。それと気に入らなかったから雷落とした」
「せめて顔は判別できる位に留めておいて貰わないと、この者が誰なのか調べるのに時間が掛かるでしょう!」

出海と呼ばれた男と金竜の遣り取りは神様候補達の恐れを増長させた。この二人は、一度たりとも神様候補をこのような状態にした事について責める言葉も反省する言葉もなかった。
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