127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

金竜の配下

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大広間を恐るべき力の片鱗とその無慈悲な振る舞いで沈黙させた金竜は、出海という男に何処かへ連れて行かれた。二人が立ち去ると、緊張していた場に誰かの溜め息の音が漏れたのをきっかけに、次々と深い疲労を含んだ呼吸と安堵に胸を撫で下ろす神様候補達の話声が聞こえ始める。自らこそが神に相応しいと豪語する自信家たちも、金竜の前になす術がないと、じっと息を潜めていた。中には恐れを抱きながらも神の力、座の持つ力に魅せられ、より一層座を得ようと決心を固めた者達も居た。その中の一人が金竜の配下の雷蔵である。出海が「これ以上場を混乱させるな、学舎の応接室で持て成すから」と言って渋る金竜を何とか連行した。雷蔵は大広間の扉の前まで金竜を見送り、扉が閉められると自分の席に戻った。その一連の流れは、その場にいた神様候補全員が固唾をのんで見守っていた。

「……」

同席の者達は、雷蔵に何か聞きたそうにその顔を見て、直ぐに視線を下げた。決意した男の顔は刃先の如き鋭さと、たじろぐような迫力を帯びて、無自覚に周囲を威圧していた。金竜の登場以前に雷蔵に対して軽口を叩き、挑発するような発言をしていた別席の者も、興味本位で金竜についての話を尋ねようとしていた者も、とても口を出せる雰囲気ではないと、時折様子をちらちらと盗み見ながら静観していた。

「ふわあ~…びっくりしたねえ」

他の神様候補達と同じように、ナジュと桃栗は嵐が去って行くのを確認し、安堵のため息を吐いた。

「ああ…一瞬何が起こったか理解できなくて、気付いたらあいつが…こんな姿に…」

金竜と出海が去った大広間だが、異質な存在はまだ残っていた。金竜の雷に打たれた神様候補である。ナジュ達の机のすぐそこに横たわったまま、惨い姿をさらしている。ナジュの言葉に悲痛な面持ちになった桃栗は、懐から気に入っている手拭いを取り出し、床に横たわる神様候補の顔にそっと掛けてやった。そして大広間の扉を少し開けて外に居る者に事情を説明し、焦げた神様候補を移動させてくれるように頼んだ。少しすると学舎の者達が担架を持って入室し、顔に布を掛けられた神様候補を運搬していった。運んでいる最中に担架からだらんと落ちた腕を見て、神様候補達は今命ある事を感謝した。桃栗が席に座ると、学舎の者達に聞いた話をナジュに伝える。

「そろそろ師達がいらっしゃるみたいだよ。あと、この特別席は金竜様に用意されたものじゃなかったんだって」
「じゃあ別の誰かがここに座るのか。……あの神様候補も運が悪かったのかもな」
「そうだね…金竜様が来たのは気まぐれのようだから。僕知らないで気軽に話しかけてたから本当に肝が冷えたよ…」
「もしかしたら俺達があの雷を食らってたかもしれないもんな…」

轟音の雷と無残な神様候補の姿を思い出してその身を震わせる。二人で金竜について話している最中、ナジュは金竜に言われた呪いの件について考えていた。

(金竜ってやつ…俺から呪いの気配がするって……神様に成るとそういうのがわかるようになるのか?)

先程まできつく絞められていると感じた胸の髪飾りは、今は普段と変わらず沈黙している。ジンと痛む胸を抑えて、いまだ鼓動が早い心臓を休めていた。
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