127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

天界を蝕む毒

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お香屋まではそれほど距離は無いとの事なので、2人はなるべく手短に簡潔に話すと前置きして話し始める。

「まず、芥子っていうのは植物の名前。一般的には実を料理に使ったり、病気を治すための薬として使われていたんだ。けれど、いつしか芥子から作られた薬を服用すると、良い気分になれるって病気以外で芥子を求める人が出てきた。最初は嗜好品として楽しむ人が多かったんじゃないかな…」
「芥子は服用すると鎮痛効果や睡眠効果が期待され、医師の指示の元適量を飲用していたのだが、天界における近年、新たな摂取方法ができてからその効力が悪い方に増幅され、芥子を嗜んでいた者が廃人化するようになった。中毒性も深刻で芥子を断つには相当な苦痛を伴うと聞いている。芥子を売る商人、芥子を求める者、芥子を使う者が集まっているのが芥子窟だ。入り口が中に商人が居る事が多いらしいが、そのような者は居たか?」
「それらしい奴が居たかどうかは……うーん、わからないな。中に居るのは項垂れてるばかりで、話し掛けられたりもなかった。だが…暗がりに居た奴が何かを取り出してカチカチ音を立ててたな。その時一瞬手元がチカチカしてた」

ナジュの言葉に、そこにいた者が何をしようとしていたか見当がついた丹雀は、少し考えてから口を開いた。

「…あまり教えたくはないのだが、絶対にするなという意味で話しておく。芥子を火で炙りその煙を吸うつもりだったのだろう。飲用よりそちらの方が効果が高く、芥子が切れた時の代償も大きいらしい。私には理解できないな、そんな物に手を出すなど」
「使ったらもう元に戻らないって言われているよ、それこそ時間を巻き戻す以外にない位にね。芥子の効力が切れると苦しみが襲ってくるから…辞めようとしてもまた芥子に手を出しちゃうんだって。芥子を手に入れる為に盗みを働いたり、自分の身体を売ったり……大切な人、子どもとか恋人とか…捨ててしまえるようになっちゃう」
「芥子への執着は底無しだ。それを商人はよく心得ているから、知識のない者や心の弱い者、財のある者を狙う。我が主様も天界の住人を蝕み始めている芥子の存在を以前から憂いている。会合でも議題に上がった筈だ」
「芥子って言わないで売りつける悪い人もいるから。それとこの町に芥子窟があるなら、間違いなく芥子商人も居る。関わったら絶対に良い事ないからね」
「ぐぇっ!!?」

桃栗はナジュの首の後ろをキツく掴む。そして出会ってから聞いた事のない低い声で強く念押しした。

「ぜっったいに芥子商人と取引しちゃダメだから!芥子窟にはもう近付かない!他人から貰ったものを何でもかんでも口にしない!!約束だよ!!」

ナジュが芥子窟に入りかけた事をまだ怒っている桃栗が、にこにことしながら言い聞かせる。

「おまっ…いてててっ、力強っ!!首左右に揺らされてコキコキいってる!わかった、わかったからっ!」
「桃栗、そこらで……もう香屋が見えてきた」
「折角友達になったのに、変な物に手を出して壊れちゃったら悲しいからね!二人とも約束なんだから!」

ナジュの首根っこを離し、今度は丹雀の首の近くで掌を開閉させている。初日に桃栗の昔話を聞いている丹雀は、その細腕で武闘派配下として主様を支えてきたという話を思い出し、掌から距離を取った。
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