127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

かりいで交流

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「ナジュ様も私の事は気軽にオウソウ、とお呼びください」
「なら、俺に様もつけなくていいぞ」
「フフ…私と名だけで呼び合う仲になりたいと…そう取ってよろしい、という事でしょうか?」
「様でいい、ずっと付けておいてくれ」
「かしこまりました、ナジュ様」

自己紹介ついでに、同室が居なくなり一人部屋になった事や飯処で出されたかりいという料理が美味しかった事をナジュが話すと、二人もかりいを味わってみたいと言うので、給水湯室から小さめの器と匙を棚から持ち寄り、二人を部屋に招き入れた。

「ほあ…辛ぁい…でも、美味しい…」
「!…これは美味ですね、是非唐梳様に味わっていただきたいです」
「だろ?厨房係が、渾身の出来なのに今日の昼餉の時間全然人が来ないって残念がっていたぞ」
「私も唐梳様の食事と一緒に自分の分も手作りいたしますが、珍しき料理は後学の為御馳走になるのもよさそうです。このかりいという料理の作り方を教えていただけないでしょうかね…」
「……ふう、竹筒のお水もう無くなっちゃいました。また汲んでこないと」

かりいを食べ終えた二人は、水を飲んでまったりとしながらナジュの部屋を見て、寝台の上に置かれた紙の束が気になったようだ。

「おや、ナジュ様、まだ学舎での講義が始まらぬうちに先んじてお勉強を?勤勉でございますね」
「これは…漢字の?」
「ああ、つい最近まで読み書きできなかったからな。これまで皆に手伝って貰って、まだまだ勉強中だ」
「そうでしたか。…屋敷に来たばかりの頃の唐梳様の教育も担当しておりました故、懐かしい心持になります」
「僕は書物を読んでいる時、見知らぬ字を見つける都度調べないと気が済まなくて、忘れないように紙に書きいれ続けたら、こうした紙束が出来上がってました。全部は覚えきれていないのですが、えへへ…積み重ねたそれが成果みたいでちょっとした自慢です」
「どの位厚いんだ?」

興味を持ったナジュが聞くと、南天はこの位と手でおおよその厚さを再現する。
「半紙一枚を二段に分けて、一段につき4つか5つ程の漢字とか諺とかを書いていました。本当は“あ行“から並べられたら見返す際に便利なのですが、書物で記されていた順番なのでばらばらでして。整頓出来たら自作の字引きが出来るのですけれど」
「成程…それならば師の茂籠茶老様に相談したらいかがでしょう」
「茂籠茶老って、読座の神様の…おじさん?」
「左様で。読座は書物や文字などを司る神様にございます。字に関わる事ならば茂籠茶老様の右に出る方はおられません。何か良い術を授けていただけるのではないでしょうか」
「で、でも…学舎の最高権力者であり、神様でもある茂籠茶老様に直接お願いなんて…とても畏れ多いです…」

ナジュは恐縮してしまっている南天を見かねて、桃栗から聞いた茂籠茶老の話を伝える。

「俺の知り合いの桃栗っていう神様候補が、茂籠茶老サマの事を落ち着いた素敵な…おじちゃん?だって言ってたぞ。だから相談くらいなら乗ってくれるんじゃないか?」
「ええーっ!ナジュ君まで…」
「私もそれ程緊張する必要はないと思いますよ。特にいかがわしい理由から知恵を借りたいと申している訳ではございませんし、学びの効率の為とお伝えすれば無碍にすることはないかと。南天様の真面目で勉強熱心なお人柄をわかっていただけましょう」
「あとは…桃栗の主様と碁を打つのが好き…だとか」

南天はナジュとオウソウに挟まれて、明日にでも茂籠茶老に相談に行く事になってしまった。
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