127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

色別組分け講義

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飯処で茶と干菓子を楽しんでゆっくりと過ごしたナジュは、周囲の神様候補が席を立ちだした頃に自分も席を立つ。悩みは何も解決してはいないが、少しの間焦りから解放された時間を得ることが出来た。飯処を出て正面にある厨房に空になった急須と茶碗の乗った盆を届け、皿洗いに御馳走様と伝えて宿舎に戻る。雁尾に首根っこを掴まれて飯処に連れて来られた時と違い、足取りは軽快だ。悩みに囚われていた思考は、次の講義への関心に移動し始めている。いつの間にか部屋に届けられていた、昨日の体力訓練で使用した着物に袖を通しながら机に開いて置いた学舎案内を読む。

「午後の講義……“色別組分け”」

学舎についての説明の際、それぞれに配布された座毎の冊子に挟まれていた紙。それを持って息を吹きかけると、自分の名が浮かび上がって紙の色が変化する。色は術の素養を表しており、ナジュは極薄い黄色であった。講義は前日に告知されていたので、勉強机の良く見える場所にしっかりと置いて寝た。それぞれの色の確認の為、初回の色別組分け講義に持参する必要があるらしい。

「俺の色の場所は……“菊花錠きっかじょう”」

学舎案内の中にある地図で場所を確認すると、宿舎を出て近い学舎への出入り口から入って、廊下を真っ直ぐに進んだ先の右手方向にある一室のようだ。初回はどの色に何人の神様候補が集まるか把握していない為、毎回の傾向を参考にして大小の部屋を振り分けている。最高の素養を持つとされる紫が一番小さな部屋に、秀でているとは言えないがそれなりに術が扱える赤の割合が一番多いので一番大きな部屋を指定されている。ナジュはしっかりと黄ばんだ紙を懐に収めて、菊花錠の間に向かった。

本日の昼餉を手早く済ませた雷蔵は、他夏を宿舎の部屋に残して色別組分けの“紫”を担当する師の元を訪れていた。雷蔵と他夏の組分けは違う為、他の講義のように面倒を看てやることができない。他夏の状態を師達がどこまで知っているかわからないが、念の為、怠惰と判断されるような様子であっても事情があると説明しに行ったのだ。師は雷蔵の話を一通り聞いてから、既に茂籠茶老から他夏の扱いについての話をされていると言った。色別組分け講義の際は、傷病者を看る救護所で他夏を預かるように内々に決められたらしい。茂籠茶老は体力訓練を担当した五島や病座の出海から状態や講義での様子を聞き取りし、十分に素養があると判断された為、色別組分け講義については免除、本人の状態次第で参加するかどうか選ばせる、となった。尚、体力訓練や空座の講義については免除は無い。雷蔵は一つ気がかりが解消してホッと息を吐いた。

「講義に出ても、恐らく居るだけになると思ってたが……面倒見てくれんなら上々だ。ちゃんとした奴が側についてんなら、俺も講義に集中できるしな」

雷蔵は自分の支度を終えて他夏を救護所まで送って行った。救護所の主は病座の出海で、その配下や雇われた常駐する部下が面倒を看てくれる。今日は眠気の強かった他夏は、さっそく寝台に横になり、すぐに寝息を立てた。

「それじゃ……よろしくお願いします」

救護所を後にした雷蔵は、振り分けられた菊花錠の間に一人で向かった。
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