ベノムリップス

ど三一

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投獄編

第8話 繋がれた手、1秒前のキス

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ギャリアーのニスを連れて帰ると言う発言を、ランが警備隊長グンカに報告している間、取調室の二人は話を続けていた。

「言い忘れたが、俺の家はリビング兼台所兼寝室みたいなもんだ。寝る時は同じ部屋になるが、それは我慢してくれ。部屋の隣には店のスペースと工房のスペースがある、後は…」
「工房…」

ニスが興味を示した。

「ああ、うちは宝飾店でな。俺は店で売ってる宝飾のデザインを考えたり、実際に加工する装飾技師の仕事をしてる。偶に原石や研磨した宝石も売ったりするが、メインは加工だ。この町の名産の潜源石っていう特殊鉱物を使ったアクセサリーなんかも作ってる」
「特殊鉱物…?」
「加工すると特殊な性質を持つ石で、俺が作ってるのは指輪の台座の上にガラス玉が乗った…」
「台座に、ガラス玉……」

ニスが一瞬目を見開いて、ギャリアーの方を向く。今までのぼんやりした反応が、霧の晴れたように鮮明になる。全体をなんとなく見ていたような視線は焦点をギャリアーの目にあわせた。ギャリアーはその時初めて、本来のニスと対峙した気がした。

「面会中失礼!」

突如取調室の扉が勢いよく解放され、そして轟音をたてて閉められる。中に居た二人はその音にびくっと肩を跳ねさせ何事かと出入り口に目をやった。

「貴様、どういうつもりだっ!」

つかつかと2人に歩み寄り、机に手をついた。その時のドン、という音は待機所にも聞こえ、中の様子を伺おうと待機要員達はガラス戸に集まる。その先頭はランだった。

「ああ…やはりこうなるか…」



「釈放の申し出があったと聞いたが…!?」

グンカは鋭い目でニスを見下ろす。ギャリアーは自分が代わりに答えようと口を開くが、ニスがグンカを見上げて、ええと返事をした。

「此処を出て見たいものが出来た。その後どこへ行くかは知らないけれど、一先ず此処を出る。釈放して」

強い言葉だった。数日間ニスと対峙していたグンカはその人の変わりように内心驚いていた。

「随分流暢に話すではないか…!私の尋問には大した答えも出さなかったというのにっ…」
「答えられることは答えたわ…」
「…あの曖昧な回答がか!?」

数日のフラストレーションが口調に怒気を含ませる。

「やはり貴様は何かを隠しているっ…!この男を殺めようとしたのではないならば、殺人の予行演習の可能性がある!この唇でターゲットの殺害を目論んでいたのではないか!?そしてこのギャリアーが共犯では…ッ」

グンカの親指がニスの唇に触れる。
ギャリアーは素早く手を伸ばし、グンカの腕を掴んでニスから遠ざける。
離れる瞬間手袋の表面が唇の表面を擦り、小さな傷を作った。

「!」
「ッ…悪い!」
「…」

ニスは痛みの走った唇を指先で触れてみる。少し濡れた感触がして拭ってみると、見た目より深く切れていた傷口からの流血が唇を赤く染めた。気まずそうにニスを見るギャリアーとグンカの2人。態とではないものの流血に至った事に動揺する。
ニスは怒るでもなく痛がるでもなく、血のついた指をじっと見下ろした。そしてグンカを見上げる。

「…この唇に容疑が掛かっているのなら、貴方が調べればいい。今唇を重ねても、貴方に影響はない」
「な゛ッ!?」
「それですぐに釈放して」

冗談と判断するには目が真剣だった。グンカは初めて被疑者に対して狼狽えた。それは、いや、しかし、等と短い言葉を小さく繰り返している様子に、ギャリアーは珍しい光景だと目を丸くする。

「調べるのならすぐに」
「き、貴様…羞恥はないのか…!」

制帽の下のグンカの頰が色付く。ニスの発言を、ギャリアーも居るこの場で唇を重ねて見せる、と解釈をして動揺した。

「羞恥…」

ニスが少し首を傾ける。ギャリアーは両者の間に認識の違いがあるのではないかと思い当たる。

「貴様自身に、毒…問題があるかどうかは私が判断する…!」

グンカは覚悟を決めてニスの輪郭を手で包む。親指で傷口に触れると白い手袋に血が滲んだ。

「…傷付けた事は、すまない」

グンカが上体を屈め、制帽が当たらないように顔を傾けてニスに近づいて行く。ギャリアーはニスの様子を見た。グンカの行動を待っているばかりで、拒否する気配がない。流石に黙って見ている事はできないギャリアーは、また手を伸ばす。今度はニスに向かって。先程グンカを抑えた拍子に傷を負わせた事を気にして、掌で唇をガードするつもりだった。

「おい、ちょっと待て…!」
「いい。終わるまで待っていて」

ニスは伸ばした手を握り返した。一方では手を重ね、もう一方では唇を重ねようとしている。グンカの唇が数センチの所まで迫る。

(これは検査としての接触だ…他意はない…!)

雰囲気など関係なく、ただ淡々と。
瞼を閉じる必要はない。
2人の間に情などない、しかしニスはその暗い瞳を閉じた。

「!……」

それに釣られてグンカも瞳を閉じる。
無意識の事だった。

「…」

ギャリアーには、まるで恋人同士の逢瀬を日陰から見る間男の立場を再現しているようであった。鋭い目で被疑者を睨むグンカの目元は、閉じられたら案外威圧的ではない等と知りたくもない情報を知ってしまった。ギャリアーは静かに目を伏せて、時間が過ぎるのを待つ。

2人の距離が1センチまで迫る。
呼吸が触れあい、生命が発する熱がやんわりとお互いの肌に伝わる。
熱い、ニスは目を瞑っていても感じる熱気を受けて、ただそう思った。



「はいはいそこまで~」

目を瞑っていたグンカはハッとして、出入り口の方を見る。そこには先頭のユンとその姿に隠れるようにして口を手で覆うラン、顔を赤らめたチャムとユウト、関係者が勢揃いして取調室の中で起こる怒涛の展開を見守っていた。ユンはまだ近いグンカとニス、そして手を握るギャリアーに近づいて、呆れた顔をする。

「隊長~、任意同行の人に手を出しちゃダメでしょ~」
「て、手を出すなど!私はっ、同意のもとにっ…!」
「駄目です!!」

ユンに隠れながら一緒に近づいていたランが、グンカの反論を止める。グンカはランを見た。頼りになる部下に見られたくない場面を見られたグンカの頬は一層赤くなっている。それをランがどう解釈したのか、クールな美人と評判の涼しげな顔は紅く膨れる。

「た、隊長は……一体何をしているんですか!!こんな、薄暗い場所にずっと2人きりで居たから、変な気分になるんです!!さあ、出なさい!皆出て!!」

ランに背中を押されて取調室を強制的に退出させられるグンカ。幸いにも他の警備隊員にキス未遂のシーンは見られていなかったが、普段隊長に忠実なランが、隊長であるグンカに愚痴愚痴と言葉になりきれない何かを言いながら席に戻される、という隊員には疑問しか浮かばない光景が目の前で繰り広げられる。

「だから私が尋問を変わると言ったんです!!何ですか目なんて瞑って!?」
「……ラ、ラン」
「大体、隊長はっ…!…、…!」

ランに説教を受けて困惑するグンカを見つめる隊員達。取調室の方では、呆気に取られた一同がランとグンカを見送った体勢のまま突っ立ってた。

「…どうしたんだ、ランは」
「グンカさんに下剋上…?」
「ああ~……成る程ね~」

ランの事情を察したユウトは、ユンに意味ありげな笑みを向けて、「大変だね」と労う。

「ユウトは首を突っ込まなくていいの~。ちゃんと反省してなさい」
「はい…」

ユンの説教を思い出してげっそりとした顔をする。ニスが許すという判断をした為、直ぐに釈放される筈が、グンカがニスの勾留を伸ばした為ニスの発見者であるユウトも余計に勾留され聴取を受けた。しかし話す事が殆どないので、ランとユンに繰り返し説教を受ける事になった。ランならば反省している態度を示せばそれで済ませてくれるが、ユンの説教は今回の事件から生活態度まで幅広く、何処からそんな情報を得たのかという話まで引っ張り出してくる。ユウトの悪心はここで大分削られた。

「お姉さん」
「…何?」

ユウトがニスに近づく。

「大事な物盗んで御免なさい」
「ユウト…!」
「……私が何か立派な事を言える立場じゃないけど、もうやらないようにね」
「うん。本当にやらない」
「…そう」

ユウトはニスに謝罪して和解した。後程ウォーリーに伝えてやれば、口では悪態をつくが内心喜ぶだろう、とギャリアーはその光景を満足そうに見ている。

「それでギャリアーさん?」
「ん…?」
「その手は何のために~?」

ユンがニコニコした表情で指差す。ギャリアーは指摘されて漸く繋いでいた事を思い出した。

「ああ、これは…」

脳裏にニスとグンカのキス未遂シーンが思い浮かぶ。止めようとして結局目を逸らした自分も。ギャリアーはバツの悪い様子で、ニスの手を握ったまま立ち上がる。ニスもギャリアーに引かれて側に立つ。

「……うちに連れて帰る、から?」

ギャリアーのその言葉に、ユンのいつもの笑みは崩れ、顔色は驚きに染まった。変わらず繋がれた手はその宣言と共に握り直される。その瞬間をユンは視界に捉えていた。ニスはギャリアーの行動を大して気にしていないようで、握られているからという理由で握り返している。あまりにも自然に2人連れ添う姿を見たユンは、自分が離れている間に起こった事をランに詳しく聞こうと決めた。

「………ふ~ん?」
「えっお姉さんここ出られるの!?良かったー!ギャリアーのうちなら大丈夫!綺麗だったし、お姉さんが寝るスペースもあったから!」
「そう…」
「えっギャリアーさんとこに?お姉さんが?…へ~」

ユウトがギャリアーにニヤついた笑みを向ける。恋愛絡みの話はユウトの大好物である。ギャリアーは面倒臭そうに口を開く。

「邪推するな。お前が勘繰ってるような色気ある理由じゃねえよ」
「え~?でもギャリアーさんの一人暮らしの家で一緒に暮らすってそういう事でしょ?」
「全く…無罪放免になってから、落ち込んでたのが嘘みたいに元気になったなユウト」
「本当に~。貴方も元気というか不思議だけどね~」
「…そうか?」
「ええ~」

ニコニコして2人を見比べるユン。そのの探る笑みをよく知っているギャリアーは、ニスの手を引いて逃げるように取調室を出る。チャムとユウトもその後に続いた。

「………ふう」

残ったユンは髪をかき上げてため息を吐く。そして深呼吸するといつもの笑顔に戻した。
待機所ではこれからまた一悶着ある筈、隊長をサポートせねばと気合を入れた。


「この2人を一緒にしておくと、何を企むかわからん!釈放には同意しかねる…!」

ユンが待機所に戻ると、案の定グンカの怒り滲む声が聞こえた。

「それだと不当に拘束してるって事になるぞ」
「隊長、ここは釈放する他ないのでは…?」

ランが耳打ちするが、グンカにとって怪しんでいた人物2人、片方は殺人未遂の嫌疑をかけるまでした人物を黙って釈放するなど、到底受け入れられぬ事であった。

「まだその者の嫌疑は晴れていない…!私は治安維持の為、釈放に反対している!」
「またその話か。毒物はないんだからいいだろ」
「ああ…確かに検出されていなかった。それは私も認めよう。…だが!」

ニスを制帽ごしに睨む。

「その者との口唇同士の接触後、貴様が倒れたのは事実!秘密の何らかをその場所に隠しているというのが、私の見解だ!従って、確実に安全だと認められるまで見張もつけずに釈放は出来ん!必要であれば、隊長権限による出頭要請を出そう…!」

特に怪しいとされる被疑者に対して、警備隊隊長が発令できる特権であり、一度殺人未遂の容疑者にもなったニスに対しては、権利を行使する理由は十分である。

「あの手この手で捕まえようとしやがって…!」
「フン…!」

どちらも譲る気は毛頭ない。
ギャリアーは完全な釈放を、グンカは悪さする余地のない目の届く所にニスを置きたい。2人の主張をそう解釈したチャムは、名案を思い付く。

「はい!」
「どうした、チャム」
「ランちゃん、あたしに提案があるんだけど」
「ああ…ユウトを連れて帰っていいぞ。隊長の許可は頂いた」
「それはありがとうなんだけど、この2人の遣り取り何時迄も続きそうじゃない?」
「そうだな…」
「権限はグンカさんが持ってて、お姉さんを怪しんでるのもグンカさん」
「…隊長と私くらいだ」
「ならさ、みんな一緒に帰れば安心じゃない?」

チャムの提案にランは首を傾げる。

「ギャリアーにグンカさーん!」
「何だ…!?ユウトは釈放だ、遅くなる前に帰れ…!」
「チャム、ユウトと一緒に先帰って、ウォーリーに顔見せてきな」

チャムは邪魔者扱いされていると感じてムッとする。彼女の中では、【第二次うみかぜ計画】が始動していた。目標は変わらずニス及びユウトの無罪放免での釈放、片方の達成は確定している。残るニスを自由にする為の考えがチャムにある。

「聞いて!つまるところ、連れて帰りたいのと見張りたいんだよね?」
「そうね~。でも両方は難しいかしら~」
「ならさ…」

チャムはグンカの腕を引っ張って、ギャリアーとは反対のニスの隣に移動させる。そしてグンカとニスの手をギャリアーとニスのように握らせた。ランは焦ってチャムを咎める。

「なっ!?チャム、何をしてる…!邪魔してはいけない、私のところへ来なさいっ」
「まあまあ、ランちゃん。チャムに考えがあるみたいだから、少し話聞いてやってよ~。ね?」

ユウトがランを引き止める。チャムは集まった注目の中、コホンと意味の無い咳をして、有用な提案を話す。

「この3人でギャリアーの家に住めばいいじゃない!」

ギャリアーやラン、ユン、グンカでさえも口を開いたまま唖然とする、突拍子の無いその案は、長引くニスの処遇を巡っての対立を終わらせる救世主となる。




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