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オドゥールは君のなか5
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からりと晴れたある土曜日の朝。諒はいつもの土曜日よりほんの少し、早起きをした。
もう少し寝ていたい気持ちはあったが、今日はキョウが遊びに来る日。それなりに身なりを小綺麗にしておこうという気持ちを振り絞り、まだぼんやりとした頭を奮い立たせるように顔を洗う。水道を捻ると同時に、流れ出る水音と共にパシャリと跳ねる水。
狭い洗面所に微かな涼が舞い、今日が始まることを告げた。
寝間着を脱ぎ捨て、シンプルだが小綺麗な余所行きの服に着替える。白いTシャツに薄手のカーディガン、背の高いシルエットの映えるスリムボトム。
(部屋の掃除は昨日にしたし、洗濯物は⋯⋯キョウが来る前に干し終わるかな)
よしっ、と1人呟いた諒は、洗濯機にここ数日分の衣類を放り込むために、洗面所に再度足を運んだ。欠伸のでない午前はゆるゆると過ぎていった。
──────────────
からりと晴れたある土曜日の朝。キョウは茶色の毛並みに寝癖をこしらえたまま、いつもの時間に目を覚ます。
もう少し早起きするつもりだったが、二度寝の誘惑に勝利することはかなわなかった。育ち盛りだししょうがないしょうがない⋯⋯そう自分で言い訳しつつ、もそもそと布団から這い出る様子は普段の快活な姿とは真逆のものである。
まだまだ寝足りないと言わんばかりの眼を擦りながら、枕元の時計に眼をやると、時間は午前9時を少しまわったところであった。
待ち合わせの時間は11時。
(今からシャワー浴びて⋯⋯朝飯食べて⋯⋯したくして⋯⋯まにあうかあ⋯⋯ねむ⋯⋯)キョウの思考を睡魔が邪魔をする。このまま〃三度寝〃してしまえば、確実に待ち合わせに遅刻だ。
欠伸をしながら凝った身体をぐいっと解しつつ、まとわりつく睡魔を振り払う。
⋯⋯⋯⋯。
よしっ、と自身に気合いをこめるように呟いたキョウは、ベッドから立ち上がり朝日の漏れるカーテンを勢いよく開け放つ。漏れ陽は拡散し、シンと冷えた空気に温かさをはらませた。
何を着ていこうかな、あっ、ゲーム持っていかなきゃな⋯⋯
そんなことを考えながら、キョウは洗面所に足を運ぶ。穏やかな朝日色が漂う空気を鼻歌で震わせながら。
──────────────
諒とキョウのバイト先から10分ほど歩くと駅があり、そこは行き交う人々で休日の賑やかさをみせている。
都心とは言えないが、綺麗に整備された駅舎や道、並木がある点を鑑みれば、この街はそれほど田舎ではないのだと改めて気付かされる。
そんな駅前には金色ポールで背の高い時計があり、待ち合わせに利用しているであろう人達が数人、見受けられる。
その数人の中には、イヤホンを耳にスマートフォンの画面を見つめる諒の姿。
スマートフォンの時刻は、待ち合わせ時刻15分前を表示していた。
待ち時間を持て余しつつ、諒はスマートフォンに残された、今日に至るまでのキョウとのメッセージのやり取りを読み返す。
デフォルメされた可愛らしいメッセージスタンプと、他愛ないメッセージ、今日の待ち合わせ場所と待ち合わせ時間。
ここ最近は、バイト先で顔を合わせながら喋る頻度も多い(と思われる)が、手元に残るメッセージからもキョウらしい快活さを思え、少しばかり微笑ましい気持ちに。そしてそのやり取りを反芻する度に、諒は歳上らしからぬ浮き足立った気分になってしまうのだ。
そうこうとしているうちに、目線遠くに、茶毛並みでパーカーを着たシルエットをかすかに捉えた。
頭の中心部にある匂いをふと思い出しながら、諒は耳にしていたイヤホンを取り外し、カーディガンのポケットにしまった。
諒に近づく可愛らしい茶色の気配が、朗らかな土曜日の始まりを告げている。
もう少し寝ていたい気持ちはあったが、今日はキョウが遊びに来る日。それなりに身なりを小綺麗にしておこうという気持ちを振り絞り、まだぼんやりとした頭を奮い立たせるように顔を洗う。水道を捻ると同時に、流れ出る水音と共にパシャリと跳ねる水。
狭い洗面所に微かな涼が舞い、今日が始まることを告げた。
寝間着を脱ぎ捨て、シンプルだが小綺麗な余所行きの服に着替える。白いTシャツに薄手のカーディガン、背の高いシルエットの映えるスリムボトム。
(部屋の掃除は昨日にしたし、洗濯物は⋯⋯キョウが来る前に干し終わるかな)
よしっ、と1人呟いた諒は、洗濯機にここ数日分の衣類を放り込むために、洗面所に再度足を運んだ。欠伸のでない午前はゆるゆると過ぎていった。
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からりと晴れたある土曜日の朝。キョウは茶色の毛並みに寝癖をこしらえたまま、いつもの時間に目を覚ます。
もう少し早起きするつもりだったが、二度寝の誘惑に勝利することはかなわなかった。育ち盛りだししょうがないしょうがない⋯⋯そう自分で言い訳しつつ、もそもそと布団から這い出る様子は普段の快活な姿とは真逆のものである。
まだまだ寝足りないと言わんばかりの眼を擦りながら、枕元の時計に眼をやると、時間は午前9時を少しまわったところであった。
待ち合わせの時間は11時。
(今からシャワー浴びて⋯⋯朝飯食べて⋯⋯したくして⋯⋯まにあうかあ⋯⋯ねむ⋯⋯)キョウの思考を睡魔が邪魔をする。このまま〃三度寝〃してしまえば、確実に待ち合わせに遅刻だ。
欠伸をしながら凝った身体をぐいっと解しつつ、まとわりつく睡魔を振り払う。
⋯⋯⋯⋯。
よしっ、と自身に気合いをこめるように呟いたキョウは、ベッドから立ち上がり朝日の漏れるカーテンを勢いよく開け放つ。漏れ陽は拡散し、シンと冷えた空気に温かさをはらませた。
何を着ていこうかな、あっ、ゲーム持っていかなきゃな⋯⋯
そんなことを考えながら、キョウは洗面所に足を運ぶ。穏やかな朝日色が漂う空気を鼻歌で震わせながら。
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諒とキョウのバイト先から10分ほど歩くと駅があり、そこは行き交う人々で休日の賑やかさをみせている。
都心とは言えないが、綺麗に整備された駅舎や道、並木がある点を鑑みれば、この街はそれほど田舎ではないのだと改めて気付かされる。
そんな駅前には金色ポールで背の高い時計があり、待ち合わせに利用しているであろう人達が数人、見受けられる。
その数人の中には、イヤホンを耳にスマートフォンの画面を見つめる諒の姿。
スマートフォンの時刻は、待ち合わせ時刻15分前を表示していた。
待ち時間を持て余しつつ、諒はスマートフォンに残された、今日に至るまでのキョウとのメッセージのやり取りを読み返す。
デフォルメされた可愛らしいメッセージスタンプと、他愛ないメッセージ、今日の待ち合わせ場所と待ち合わせ時間。
ここ最近は、バイト先で顔を合わせながら喋る頻度も多い(と思われる)が、手元に残るメッセージからもキョウらしい快活さを思え、少しばかり微笑ましい気持ちに。そしてそのやり取りを反芻する度に、諒は歳上らしからぬ浮き足立った気分になってしまうのだ。
そうこうとしているうちに、目線遠くに、茶毛並みでパーカーを着たシルエットをかすかに捉えた。
頭の中心部にある匂いをふと思い出しながら、諒は耳にしていたイヤホンを取り外し、カーディガンのポケットにしまった。
諒に近づく可愛らしい茶色の気配が、朗らかな土曜日の始まりを告げている。
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