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第六章 お手並み拝見
第6話
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安由雷は、両肘をテーブルについて、両手の五本の指を各々合わせると、鼻の先でピラミッドのような形を作って、
「その時、おまえが言った言葉が、この謎を解くカギになった」
と、そのピラミッドの先を、静かに悠真へ向けた。
「僕が言った言葉、ですか?」
「ああ」
と、安由雷が微笑んだ。が、それでも悠真はピンと来ていない様子で、首を傾げた。
「おまえが『注文の変更は、弁当を買う前なら有効だけど、買った後は無効にしたい』と言っただろ」
「はい、本音ですけど」
「本郷が乗った8号機じゃなくって、一階ホールに呼ばれている8号機に本郷が乗ったんだよ」
「えっ、どういうこと?」
「買った後は無効、でも買う前なら有効。エレベーターの中で地下一階を押した後に、一階ホールの上行ボタンのロックは(優先度が最下位で)無効だけど、一階ホールの上行ボタンでロックされた後に、そのエレベーターの中で地下一階のボタンを押す事は(一階よりも下の階なので)有効だって事に気が付いた」
「お、おおっ!」と、悠真が大きく頷いた。
「おそらく、十五階とかの十三階よりも上の階にいた8号機のエレベーターが、一階ホールの上行ボタンでロックをされて下りて来る途中に、本郷が十三階ホールの下行ボタンでエレベーターを止めて乗り込んだ。そして中で、地下一階のボタンを押した。その偶然が作り上げたアリバイをさっきの実験で崩してみせたのさ」
「へぇ~、そうだったんですね、……スゴイ!」
と、悠真が、たった今、実験内容を説明してはもらったが、不幸にも実験の全容は見させてはもらえなかった。
しかし、そんな悠真は、全く不幸では無い様子で、
「やっぱりスゴイや。今回は先輩を完全に超えましたよね。僕の助言が無ければ、今回の事件は迷宮入りしてたかもしれない」と、言い切った。
「はぁ」
「やっぱり、スゴイや、自分!」
と、悠真が、大きなガッツポーズを作って頷いた。
「そうだ、先輩。僕にも、一つ疑問があるんですよ」
「ん?」
「あの実験の時に、一階で、6号機のエレベーターのドアが閉まらないようにしていた捜査員に向かって、先輩が『グッドジョブ!』ってやってましたよね。あれは何だったんだろうと?」
「ああ、あれか。あれはあんまり気にするな」と、安由雷が意味深な顔で微笑んだ。
「その時、おまえが言った言葉が、この謎を解くカギになった」
と、そのピラミッドの先を、静かに悠真へ向けた。
「僕が言った言葉、ですか?」
「ああ」
と、安由雷が微笑んだ。が、それでも悠真はピンと来ていない様子で、首を傾げた。
「おまえが『注文の変更は、弁当を買う前なら有効だけど、買った後は無効にしたい』と言っただろ」
「はい、本音ですけど」
「本郷が乗った8号機じゃなくって、一階ホールに呼ばれている8号機に本郷が乗ったんだよ」
「えっ、どういうこと?」
「買った後は無効、でも買う前なら有効。エレベーターの中で地下一階を押した後に、一階ホールの上行ボタンのロックは(優先度が最下位で)無効だけど、一階ホールの上行ボタンでロックされた後に、そのエレベーターの中で地下一階のボタンを押す事は(一階よりも下の階なので)有効だって事に気が付いた」
「お、おおっ!」と、悠真が大きく頷いた。
「おそらく、十五階とかの十三階よりも上の階にいた8号機のエレベーターが、一階ホールの上行ボタンでロックをされて下りて来る途中に、本郷が十三階ホールの下行ボタンでエレベーターを止めて乗り込んだ。そして中で、地下一階のボタンを押した。その偶然が作り上げたアリバイをさっきの実験で崩してみせたのさ」
「へぇ~、そうだったんですね、……スゴイ!」
と、悠真が、たった今、実験内容を説明してはもらったが、不幸にも実験の全容は見させてはもらえなかった。
しかし、そんな悠真は、全く不幸では無い様子で、
「やっぱりスゴイや。今回は先輩を完全に超えましたよね。僕の助言が無ければ、今回の事件は迷宮入りしてたかもしれない」と、言い切った。
「はぁ」
「やっぱり、スゴイや、自分!」
と、悠真が、大きなガッツポーズを作って頷いた。
「そうだ、先輩。僕にも、一つ疑問があるんですよ」
「ん?」
「あの実験の時に、一階で、6号機のエレベーターのドアが閉まらないようにしていた捜査員に向かって、先輩が『グッドジョブ!』ってやってましたよね。あれは何だったんだろうと?」
「ああ、あれか。あれはあんまり気にするな」と、安由雷が意味深な顔で微笑んだ。
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