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氷の姫君はお飾りがお好き
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王立魔法学校
国内でも一部の人間のみにもたらされる魔力の加護を受けた選ばれし者だけが通う事を許される。
その制服に身を包み、優雅に登校する麗しい女生徒。
銀色の長い髪はサラサラと雪解け水のせせらぎのように滑らか、白い肌は朝日を浴びた新雪のように美しく、青い瞳は凍り付いた湖の水面。
彼女の名はエレン・クリスティア。
クリスティア侯爵家の令嬢であり、代々優秀な氷の魔術師を数多く生み出してきた国内でも有数の名家の娘。
エレンもまた、強い氷の加護を持って生まれ成績も学園の中でもトップクラス。
容姿、生まれ、才能に恵まれた通称「氷の姫君」
「クリスティア様!おはようございます!」
「ごきげんよう」
「エレン嬢、今日も美しい君に出会えて素晴らしい朝だよ」
「光栄です」
「エレン様!今度是非、魔法のご指導をお願い致しますわ!」
「構わなくてよ」
彼女が氷の姫君と呼ばれるのは誰彼構わず笑顔を振りまくこともなく、媚びを売るような甘い言葉も使わない。
表情も言葉も最低限、学生の中でエレンの笑顔を見たものはほとんどいない。
皆が我先にとエレン嬢の笑顔を、と声をかけ続ける。
しかし、学生達が声をかけられるのは毎朝、門までだ。
何故なら…
「エレン!!待ちくたびれたぞ!今日も美しい私が待っていてやったぞ、はーっはっはっは!!」
校門のど真ん中に仁王立ちする偉そうな男学生。
真っ赤に燃えるような赤い髪に、夕陽のような瞳。恐ろしいまでに整った顔立ちの彼はジェイク。
この王国の第三王子にしてエレンの正式な婚約者である。
炎の加護を持った彼は毎朝必ずエレンを待っているのだ。
「おはようございます、ジェイク様。毎朝申しておりますが、王子がそんな所に突っ立っていては皆さんが通りにくいですよ。もっと端にいてくださいまし」
「む、いつの間にか真ん中にいたか。最初はきちんと端にいたのだぞ!本当だぞ!」
「では何故いつの間に真ん中に?」
「端ではエレンが来ているかよく見えぬのだ!お前は輝かんばかりに美しいが、視界に入らないと流石にこの私でも見えぬ!」
「では、明日からは門の柱の上に立ってお待ちになられては?」
「それは名案だな!流石エレンだ!」
「冗談です。真ん中で構いませんので絶対にやめてくださいませ」
「む、確かに落ちたら危ないな!私とした事が!」
はーっはっはっは!と高笑いするジェイクの隣をエレンが歩いていく。
エレンに向けられていた羨望の眼差しは、ジェイクへの嫉妬の視線に変わる。
『羨ましい!王子だからってエレン嬢と婚約出来るなんて!』
『なんて下品な!エレン様とは大違いだわ!』
『お気の毒なエレン様…あんな馬鹿王子と婚約者なんて…』
第三王子、ジェイクはとても顔立ちが整っている。
女性なら十人中十人が振り返るだろう。
しかし、それだけだ。
炎の加護を受けているが成績は下から数えた方が早い。
剣の腕も下の下、いつも偉そうで声もでかい。
しかも第三王子…第一王子は加護を持っていないが品があり頭の回転も早く、国民を第一に考える産まれながらに王の素質を授かった子と他国からの信頼も厚い。
第二王子は水の加護を持ち、剣の扱いも幼い頃から優れていた。新しいものを取り入れる柔軟性と敵には決して容赦はしない冷酷な一面。
若くして王室御用達の軍隊に入りゆくゆくは第一王子の右腕として国を守る騎士となるだろうと期待されている。
そしてジェイクは、甘いマスクと絶対的な自信、僅かな炎の加護のみ。
国民は口を揃えて「出涸らしの王子」「国のお飾り」と陰口を叩いていた。
そしてエレンという才能に溢れた美しい婚約者を得てさらに国民の行き場のない怒りは頂点に達した。
エレンの立場なら、第一王子の婚約者でも十分務まる筈なのだ。
何故よりによって「お飾りの出涸らし」なんかの婚約者に…!
『きっと弱みを握られているんだ』『本当は嫌な筈だ』
皆がそう思って疑わなかった。
「エレン!今日は随分機嫌が良さそうだな。なにかいい事があったんだろう?」
エレンのクラスに向かう途中でジェイクが訪ねた。
「さあ、どうでしょうか?」
「ふふん、この私が当ててやろう!」
思い切り胸を張るとしばらく悩んで
「わかった!先日、怪我をした小鳥を拾ったと言っていたな?そいつが元気になって野生に帰してやれたんだろう?昨日までは元気がなかったからな!」
どやぁと胸をはるジェイクの姿に、ほんの少し、少しだけ頬を赤らめるエレン。
「ええ、今朝元気に飛んで行きましたわ。産卵期に入る前に飛べるようになってほっと致しました」
「そうか!それはよかった!最近のお前ときたらずっと上の空だったからなぁ。私にとっては鳥なんかどうでもいいが、エレンのために怪我を治し、野生に帰って安心させたことは賞賛に値する!勲章をくれてやれないのが残念だ」
「そんなことで勲章を配っていたらきりがありませんわよ?ジェイク様」
「そんなこととはなんだ!?私の愛しい婚約者の願いを叶えたのだぞ?しかし、鳥に勲章をやっても困らせるな。なにか褒美を考えなくては…」
そんな会話をして、エレンとジェイクは別れた。
教室に入ったエレンに幼なじみの親友が声をかけた。
「おはよ、エレン。顔赤いけど、また例の王子様?」
「顔に出てる?やだわ、恥ずかしい。顔洗ってくる」
美貌と才能と産まれに恵まれた才女は、顔以外にいい所無しの第三王子の…優しさにベタ惚れなのである。
国内でも一部の人間のみにもたらされる魔力の加護を受けた選ばれし者だけが通う事を許される。
その制服に身を包み、優雅に登校する麗しい女生徒。
銀色の長い髪はサラサラと雪解け水のせせらぎのように滑らか、白い肌は朝日を浴びた新雪のように美しく、青い瞳は凍り付いた湖の水面。
彼女の名はエレン・クリスティア。
クリスティア侯爵家の令嬢であり、代々優秀な氷の魔術師を数多く生み出してきた国内でも有数の名家の娘。
エレンもまた、強い氷の加護を持って生まれ成績も学園の中でもトップクラス。
容姿、生まれ、才能に恵まれた通称「氷の姫君」
「クリスティア様!おはようございます!」
「ごきげんよう」
「エレン嬢、今日も美しい君に出会えて素晴らしい朝だよ」
「光栄です」
「エレン様!今度是非、魔法のご指導をお願い致しますわ!」
「構わなくてよ」
彼女が氷の姫君と呼ばれるのは誰彼構わず笑顔を振りまくこともなく、媚びを売るような甘い言葉も使わない。
表情も言葉も最低限、学生の中でエレンの笑顔を見たものはほとんどいない。
皆が我先にとエレン嬢の笑顔を、と声をかけ続ける。
しかし、学生達が声をかけられるのは毎朝、門までだ。
何故なら…
「エレン!!待ちくたびれたぞ!今日も美しい私が待っていてやったぞ、はーっはっはっは!!」
校門のど真ん中に仁王立ちする偉そうな男学生。
真っ赤に燃えるような赤い髪に、夕陽のような瞳。恐ろしいまでに整った顔立ちの彼はジェイク。
この王国の第三王子にしてエレンの正式な婚約者である。
炎の加護を持った彼は毎朝必ずエレンを待っているのだ。
「おはようございます、ジェイク様。毎朝申しておりますが、王子がそんな所に突っ立っていては皆さんが通りにくいですよ。もっと端にいてくださいまし」
「む、いつの間にか真ん中にいたか。最初はきちんと端にいたのだぞ!本当だぞ!」
「では何故いつの間に真ん中に?」
「端ではエレンが来ているかよく見えぬのだ!お前は輝かんばかりに美しいが、視界に入らないと流石にこの私でも見えぬ!」
「では、明日からは門の柱の上に立ってお待ちになられては?」
「それは名案だな!流石エレンだ!」
「冗談です。真ん中で構いませんので絶対にやめてくださいませ」
「む、確かに落ちたら危ないな!私とした事が!」
はーっはっはっは!と高笑いするジェイクの隣をエレンが歩いていく。
エレンに向けられていた羨望の眼差しは、ジェイクへの嫉妬の視線に変わる。
『羨ましい!王子だからってエレン嬢と婚約出来るなんて!』
『なんて下品な!エレン様とは大違いだわ!』
『お気の毒なエレン様…あんな馬鹿王子と婚約者なんて…』
第三王子、ジェイクはとても顔立ちが整っている。
女性なら十人中十人が振り返るだろう。
しかし、それだけだ。
炎の加護を受けているが成績は下から数えた方が早い。
剣の腕も下の下、いつも偉そうで声もでかい。
しかも第三王子…第一王子は加護を持っていないが品があり頭の回転も早く、国民を第一に考える産まれながらに王の素質を授かった子と他国からの信頼も厚い。
第二王子は水の加護を持ち、剣の扱いも幼い頃から優れていた。新しいものを取り入れる柔軟性と敵には決して容赦はしない冷酷な一面。
若くして王室御用達の軍隊に入りゆくゆくは第一王子の右腕として国を守る騎士となるだろうと期待されている。
そしてジェイクは、甘いマスクと絶対的な自信、僅かな炎の加護のみ。
国民は口を揃えて「出涸らしの王子」「国のお飾り」と陰口を叩いていた。
そしてエレンという才能に溢れた美しい婚約者を得てさらに国民の行き場のない怒りは頂点に達した。
エレンの立場なら、第一王子の婚約者でも十分務まる筈なのだ。
何故よりによって「お飾りの出涸らし」なんかの婚約者に…!
『きっと弱みを握られているんだ』『本当は嫌な筈だ』
皆がそう思って疑わなかった。
「エレン!今日は随分機嫌が良さそうだな。なにかいい事があったんだろう?」
エレンのクラスに向かう途中でジェイクが訪ねた。
「さあ、どうでしょうか?」
「ふふん、この私が当ててやろう!」
思い切り胸を張るとしばらく悩んで
「わかった!先日、怪我をした小鳥を拾ったと言っていたな?そいつが元気になって野生に帰してやれたんだろう?昨日までは元気がなかったからな!」
どやぁと胸をはるジェイクの姿に、ほんの少し、少しだけ頬を赤らめるエレン。
「ええ、今朝元気に飛んで行きましたわ。産卵期に入る前に飛べるようになってほっと致しました」
「そうか!それはよかった!最近のお前ときたらずっと上の空だったからなぁ。私にとっては鳥なんかどうでもいいが、エレンのために怪我を治し、野生に帰って安心させたことは賞賛に値する!勲章をくれてやれないのが残念だ」
「そんなことで勲章を配っていたらきりがありませんわよ?ジェイク様」
「そんなこととはなんだ!?私の愛しい婚約者の願いを叶えたのだぞ?しかし、鳥に勲章をやっても困らせるな。なにか褒美を考えなくては…」
そんな会話をして、エレンとジェイクは別れた。
教室に入ったエレンに幼なじみの親友が声をかけた。
「おはよ、エレン。顔赤いけど、また例の王子様?」
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