おバカな第三王子、お慕いしております!

春先 あみ

文字の大きさ
2 / 7

姫君は少し変わっている

しおりを挟む
「エレン・クリスティア嬢!私が貴女を救済して差し上げましょう!」
移動教室の途中、大切な話があるからと校舎裏に呼び出されたエレンの目の前に膝をついているのは確かベルリッツ侯爵の次男だったかしらと首を傾げた。
何故か頬を赤らめて高らかに宣言すると騎士のように膝をついてこちらに手を伸ばしている。
「大切なお話とはなにかしら?」
「え?だから、私があの身の程知らずのジェイク王子から貴女をお救いすると申しているのです!」
エレンはますます目の前の男が言っている意味がわからない。
なにやら焦っている様子だが全く心当たりがなく首を傾げていると勝手に語り始めた。
「クリスティア嬢、貴女のような美しく才能に溢れた素晴らしい女性があんななんの取り柄もない馬鹿王子との婚約…なんという悲劇!彼奴に弱味を握られているんですよね!?もしくはクリスティア侯爵が王族に取り入るために貴女に婚約を強いたのでしょう?身分を盾にして貴女の力で国の重役を手に入れるつもりに違いない!しかし、もう安心ですエレン嬢!この私が貴女を侯爵家に匿いあの馬鹿王子の代わりに貴女との婚約を結べば万事解決です!貴女の辛い日々は今日で終わるのです!私が悪しき者達に正義の鉄槌を下してみせましょう!!」
長々と語られたが全くわからない。彼はなにが目的なのだろうか?
エレンは頭を捻り…これだという答えをようやく見つけた。
「お芝居の練習ですね?でしたら最初に言ってくださいな」
「…へ?」
よかった、どうやら当たりのようだ。
王子との望まぬ婚約を取り付けられ、親からも見放された姫…その裏には国を乗っ取るための陰謀…それに立ち向かう騎士。なかなか面白いお芝居だ。
「コンセプトは良いと思うのですが、少し台詞が長いと思います。観客も飽きますし、ヒロイン役も長台詞の間にはアクションを起こせませんから疲れてしまいますわ。それに一度に説明してしまうと先の展開も読めてしまいますから…もう一度台本を書き直すことを進めます」
「え?え?え?」
うーん、やはり台本を書き直せとは酷だったかしら?お顔を真っ青にされてしまいました。
しかし、実在の人間の名前を使うのもよくないと思うのです。
お芝居とはいえ王夫妻や王太子達に心証を悪くしてはいけないと思うので。
「あと、私はお芝居をみるのは好きですが専門家ではないので改めてきちんと意見を聞いてみるべきだと思います。演技力は素晴らしいですわ、とても迫力があって…よろしければまた見せてくださいね?」
「いや…違います!これは芝居などではなく私の本心です!!」
立ち上がったベルリッツ様が私に詰め寄りました。
お芝居ではない…どういうことでしょうか?
「誤魔化さなくても構いませんエレン嬢!貴女がジェイク王子との婚約に不満を抱いているのはわかっています!そうに違いない!」
「いえ、全く不満などありません。何故そのような勘違いを?」
ベルリッツ様は顔を赤くしたり青くしたりされています。器用な方ですね。
「ジェイク王子はなんの取り柄もないただの王族のお飾りですよ!」
「それがなにか?」
あ、赤くなりました。お猿さんみたいで可愛いですね。
「貴女にはもっと相応しい婚約者がいる筈だ!」
「ジェイク様は素敵な殿方ですよ?私はあの方と生涯を共に出来ることを楽しみにしております」
「そのような嘘をつかなくてもいいのですよ、エレン嬢」
何故信じて頂けないのでしょうか?困りました、私が口下手なばかりに誤解をさせてしまったようです。
このままでは大変です。彼の首が飛びます、物理的に。
「ベルリッツ様は私がジェイク様と婚約しているのが気に入らないのですか?」
「当然です!」
「何故ですか?」
「ジェイク王子は頭も悪く品もなく才もない!第一王子や第二王子のような優れたものが一つもないのに貴女という美しく才能に溢れたご令嬢と婚約を結んだ…どう考えてもおかしい!なにかの陰謀に違いありません!」
先程からとかとしか言ってませんがご自分で推測だけで話しているのに気づいていないようですね。
困りました、ベルリッツ様はこのままでは首が飛ぶだけでは済まなくなってしまいます。さすがに目覚めが悪いので嫌です。
ここは頑張って納得させなければ!
「確かにジェイク様は目立った才能や特技はありませんね」
「でしょう!?ならば…」
「しかし、悪いことも何一つしていませんよ」
今度はお顔が真っ白になりました。
「た、確かにその通りですが…恐らく裏で策略を巡らせ国をも揺るがす反乱を企んでいる筈…!」
「その証拠はあるのですか?そもそも先程ご自分でジェイク王子は頭が悪いと申していましたよね?それならば何故裏で策略を巡らすなど出来るのですか?」
どんどん白くなりますね。少し畳み掛けましょうか。
「貴方が申しているのはすべて想像ですよね?それとも証拠はあるのですか?ジェイク王子がなにか企んでいると」
「証拠など!あの馬鹿王子の愚鈍さが十分な証拠です!」
「では、裁判を起こさなければなりませんね」
さらに白くなりました。ちょっと面白いです。
裁判と言っても両親とジェイク様だけで済ますつもりですが第一王子と第二王子の耳に入る前になんとしてでも阻止しなくては!
「第一王子と第二王子は素晴らしい方々ですよね?」
「ええ、ご高名はかねがね!お二人がいれば我が国は安泰でしょう!」
「そのお二人が弟王子の反乱を止められない訳がありませんよね?」
あら、私も仮定で話してしまいました。
しかし、固まっているので効果はあったようです。
「そもそもお二人が近辺の国と和平を結び、敵国を排除しているからこの国は平和で豊かなのです。ジェイク様がその安寧の世を乱すメリットはどこにもありませんし、そもそも協力者も集まらないと思いますよ。折角の平和で豊かな生活を捨ててまで貴方の仰るの反乱に協力して成功する訳がありませんし、仮に成功しても近辺の国に潰されてしまうのは子供でもわかります。戦いたいのなら兵団に入ればいいのですし」
どんどん白くなりますね。少し心配です。
「ですので、裁判を起こした場合貴方が得られるものは一つもありません。むしろ不敬罪に処されてしまいますよ。なので、今のお話はお芝居の台本ということにするのが懸命かと」
真っ白になったまま固まってしまいました。
とりあえず、今のところは大丈夫でしょうか?
なんだか疲れましたので失礼ですがそのまま立ち去る事にします。

結局、次の授業には間に合わず欠席扱いになってしまいました。
好きな授業なのでとても残念です。
しかし、過ぎた事を悩んでいても仕方ないので次の授業を頑張りましょう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

 怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~

美袋和仁
恋愛
 ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。  しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。  怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。  なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。

亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。 だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。 婚約破棄をされたアニエル。 だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。 ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。 その相手とはレオニードヴァイオルード。 好青年で素敵な男性だ。 婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。 一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。 元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……

家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました

ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。 一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。 「大変です……!」 ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。 手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。 ◎さくっと終わる短編です(10話程度) ◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

処理中です...