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25 悪役は思考し、
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「――以上が、私が知る三年前の真実になります。その後私の容態は悪化し、ここ一年は意識は浮上する時もありましたが、常に身体が言うことを聞かない状態にありました。残る全ての力を精霊の加護に割いて、ルイスと再会するまではと、死に物狂いで生きようとしていました」
呼吸を止めてまで生きようとしたメドウィカ様。
それは一種の賭けだったのだろう。助けは来なかったかもしれない。けれどそれだけルイス王子のことを案じ、文字通り命をかけて最後まで生きることを諦めなかったのだ。
――本当に、この方を助けることができて良かった。
話を聞いてそう思い、長い話を終えて一息ついたメドウィカ様に心から礼を言う。
「思い出すのも辛いであろう出来事を話してくださり、本当にありがとうございました。心から殿下をお救いできて良かったと、改めて思います」
ゲームでの内容からある程度の推察をすることはできるが、それも限られている。
メドウィカ様についての記述は少なく、ゲームはあくまで聖女であるリーンの活躍が主な描写だった。
細かい背景が設計されていたかどうかはともかく、黒幕の存在はこれでハッキリとした。
グレイブル王国内に蔓延る教会の暗部。女神唯一絶対主義派。この理念を掲げる派閥こそ、ゲームにおける黒幕だった。
彼らはヒロインであるリーンこそ次代の盟主に相応しいとし、その理念のためならば自国の王子を貶めることすら厭わなかった。
正義感の強かったルイス王子であれば絶対にその存在を許さなかっただろうし、対立したはずである。
「あの苛烈な主義を掲げる者たちが真犯人だというのなら、託宣を偽り、私を聖女と知っていながら追放したのにも納得できます」
エルダイン公爵家の娘で矜恃の高い高慢な悪役令嬢と、平民でありながらも聖女候補として名を上げた可憐な少女。
どちらを聖女として御しやすいかなど、考えるまでもない。
エルダイン公爵家はグルイブル王国でも有力な家系。教会の影響力など及ぶべくもなく、社交界でもそれなりに力を発揮する家柄だ。
何より無駄に高いプライドが教会の聖女として選ばれたところで、彼らの駒になどなることを許さない。
そこに来てヒロインであるリーンに惚れ込んでいた第二王子レインの存在が、彼らの目的と噛み合ったのかもしれない。もしくは、レイン自身がルイスの存在を忌まわしく思っていたのか。
そこら辺についての詳しい事情は、ゼストが必ず突き止めてくれるだろう。
それにしても悠久の女神アルキュラスを信仰し、敬虔な祈りを捧げるべき存在が、女神の加護を得た自分達こそ選ばれし者だと勘違いするなど。
ルイス王子が教会に対して警戒心を抱いていたのも頷ける。果てにその女神からの託宣を偽り、聖女の存在を無視したことも含めて、いつか天罰が下ることだろう。
「私からもひとつ質問があります」
メドウィカ様から聞いた話を元にあれこれと思考していると、メドウィカ様からそう声をかけられる。
私が思考をやめてメドウィカ様を見ると、彼女は顔を伏せて遠慮がちに問いかけてきた。
「貴女が最近までグレイブル王国におられたと聞いて、どうしても知りたいことがひとつあるのです。それを聞いてもよろしいかしら?」
どことなく躊躇いを見せるメドウィカ様に、私は先程の話のお礼も兼ねてと頷く。
「はい、どのようなことでしょうか」
「ずっと、問いたかったのだけれど、怖くて……。でもどうしても気になるから聞くわ」
そうしてスっと顔を上げたメドウィカ様が、私を見上げてついに問うた。
「グレイブル王国第一王子……ルイス王子殿下は……ルイは無事なの? 彼は今、グレイブル王国でどういう扱いになっているの?」
――やはり、そこが気になるのですね。
その言葉を飲み込み、私はしばし沈黙した。
呼吸を止めてまで生きようとしたメドウィカ様。
それは一種の賭けだったのだろう。助けは来なかったかもしれない。けれどそれだけルイス王子のことを案じ、文字通り命をかけて最後まで生きることを諦めなかったのだ。
――本当に、この方を助けることができて良かった。
話を聞いてそう思い、長い話を終えて一息ついたメドウィカ様に心から礼を言う。
「思い出すのも辛いであろう出来事を話してくださり、本当にありがとうございました。心から殿下をお救いできて良かったと、改めて思います」
ゲームでの内容からある程度の推察をすることはできるが、それも限られている。
メドウィカ様についての記述は少なく、ゲームはあくまで聖女であるリーンの活躍が主な描写だった。
細かい背景が設計されていたかどうかはともかく、黒幕の存在はこれでハッキリとした。
グレイブル王国内に蔓延る教会の暗部。女神唯一絶対主義派。この理念を掲げる派閥こそ、ゲームにおける黒幕だった。
彼らはヒロインであるリーンこそ次代の盟主に相応しいとし、その理念のためならば自国の王子を貶めることすら厭わなかった。
正義感の強かったルイス王子であれば絶対にその存在を許さなかっただろうし、対立したはずである。
「あの苛烈な主義を掲げる者たちが真犯人だというのなら、託宣を偽り、私を聖女と知っていながら追放したのにも納得できます」
エルダイン公爵家の娘で矜恃の高い高慢な悪役令嬢と、平民でありながらも聖女候補として名を上げた可憐な少女。
どちらを聖女として御しやすいかなど、考えるまでもない。
エルダイン公爵家はグルイブル王国でも有力な家系。教会の影響力など及ぶべくもなく、社交界でもそれなりに力を発揮する家柄だ。
何より無駄に高いプライドが教会の聖女として選ばれたところで、彼らの駒になどなることを許さない。
そこに来てヒロインであるリーンに惚れ込んでいた第二王子レインの存在が、彼らの目的と噛み合ったのかもしれない。もしくは、レイン自身がルイスの存在を忌まわしく思っていたのか。
そこら辺についての詳しい事情は、ゼストが必ず突き止めてくれるだろう。
それにしても悠久の女神アルキュラスを信仰し、敬虔な祈りを捧げるべき存在が、女神の加護を得た自分達こそ選ばれし者だと勘違いするなど。
ルイス王子が教会に対して警戒心を抱いていたのも頷ける。果てにその女神からの託宣を偽り、聖女の存在を無視したことも含めて、いつか天罰が下ることだろう。
「私からもひとつ質問があります」
メドウィカ様から聞いた話を元にあれこれと思考していると、メドウィカ様からそう声をかけられる。
私が思考をやめてメドウィカ様を見ると、彼女は顔を伏せて遠慮がちに問いかけてきた。
「貴女が最近までグレイブル王国におられたと聞いて、どうしても知りたいことがひとつあるのです。それを聞いてもよろしいかしら?」
どことなく躊躇いを見せるメドウィカ様に、私は先程の話のお礼も兼ねてと頷く。
「はい、どのようなことでしょうか」
「ずっと、問いたかったのだけれど、怖くて……。でもどうしても気になるから聞くわ」
そうしてスっと顔を上げたメドウィカ様が、私を見上げてついに問うた。
「グレイブル王国第一王子……ルイス王子殿下は……ルイは無事なの? 彼は今、グレイブル王国でどういう扱いになっているの?」
――やはり、そこが気になるのですね。
その言葉を飲み込み、私はしばし沈黙した。
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