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19.悪い魔法使いと魔法のランプ
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「だめだ、やめろ。やめてくれ! そんなことしなくていい。命令は取り消しだ!」
魔人はここでようやく表情を崩す。にっこりと笑ってラシードの傍に移動した。
「はい。畏まりました」
ラシードとジャファル、それにこの場にいた他の側妃たち全てが虚を突かれたような顔をしている。
「ああ、そうそう。ちょっと皆さんにはお眠りいただきましょうか」
パチンという魔人の指の音に合わせて、他の側妃たちがばたばたと倒れて眠りにつく。今、寝室で意識があるのはラシードと魔人、ジャファルの三人だけということになった。
「お前っ! 魔人! 何故俺の言う事を聞かない?」
ジャファルが唾を飛ばす勢いで吠えた。
「何故でしょうねぇ? それはヒミツです」
魔人は意味ありげな表情を浮かべてジャファルを小ばかにする。
「魔人、こちらへ来い」
「行かなくていい」
ジャファルがした命令を、ラシードが即座に取り消した。
「はい。行きません」
魔人はラシードの言に従う。
「ど、どういうことだ。その邪魔な男を縛り上げて追い出せ!」
「やらなくていい」
とうとうジャファルはラシードを邪魔者として追い出そうとしたが、ラシードにより命令が取り消された。
「はい。やりません」
魔人は再びラシードの言にしか従わない。命令を悉く聞かない魔人に対して怒ったジャファルは叫んだ。
「もういい。魔人。ランプの中に戻って二度と出て来なくていい。封印だ」
「そんなことしなくていいよ」
「はい。もちろんです」
ジャファルの身体がしゅるしゅると音をたてて煙になっていく。そして、王城の寝室にあったランプが一つ浮かび上がった。魔人のランプとは違い、真新しく、ピカピカに磨かれたランプだ。そのランプが煙になったジャファルを吸い込んでいく。ジャファルの断末魔をも飲み込んで、ランプがコトリと床に転がった。
「さてはて。どうしましょうね。このランプ」
床に転がったランプを拾い。くるくると指で弄んだ魔人が、ふっと息を吹きかけると、ふわりとランプが浮き上がり、すっと消えた。
「アイナバル山なんかよりもずっと厳しい、火山のマグマ溜まりの真ん中に飛ばしました。ご本人が封印すると仰っていたので彼を呼び出すことは出来ないでしょうが、その前に誰も好き好んで火山の中には行かないでしょうねぇ」
「ジーニー、どういうこと?」
寝室内で今意識があるのはラシードと魔人だけだったが、用心のためにラシードは魔人のことを眞名ではなく別称で呼んだ。
「ランプの御主人様の命令を、ワタシの眞名を知る人は取り消せるのです。眞名を知る人の命令を直接受けることは出来ないのですが、ランプの御主人様の命令を取り消すという点では、眞名を知る人の命令が優先されます。でも、最後の命令はちょっぴり拡大解釈をしたんですけれどね」
うまくいきました、褒めてくださいと言う魔人にラシードは口づけた。八年越しのキスは甘くて。美味しくて。二人は角度を変えて、何度も口づけを交わした。最初は啄むようなものだったそれは、次第に貪り合うようなものに変わり、やがて二人の間に銀糸の橋を渡した。
「これからどうするの? もう戻って来れるの?」
寝室の片隅でもたれ合いながらラシードは魔人に問う。
「いえ、まだアラジン様の願いが一つ残っています」
「そっか。でも、いつまでも待つよ」
「本当は、ワタシの事なんて待たないでどなたかと幸せになってくださいと言うべきなんでしょうけれどねぇ」
「馬鹿だな。僕はたとえ記憶を消されたとしても君の事を求めるよ」
「ふふ。ありがとうございます」
魔人の目に浮かんだ涙をラシードが口づけて吸い取る。どこからか一番鶏の鳴き声がして、朝日が寝室に差し込んできた。新しい一日の始まりだ。
「そろそろ行かなくては」
「……そうか」
「ワタシはアラジン様をご自宅にお連れして身体を清めて差し上げることにします」
「僕は、他の側妃たちにここであったことを口外しないように言い含めて元の生活に戻させるよ。幸い、この政変……政変と言えるのかな。まあいいか。この政変を知るものは王城内の一部だけだ。国民には秘密にして事を収めるよ」
「そうですね。アラジン様には立派な王配になって頂かなくては」
「お二人の結婚式は来月だからな。僕も準備を頑張るよ」
魔人は、ジャファルによって抱き潰されて昏倒したアラジンと自分のランプを抱きかかえると、ふっと搔き消えた。ラシードは立ちあがると魔人により眠らされていた側妃たちを一人一人起こしていった。
魔人はここでようやく表情を崩す。にっこりと笑ってラシードの傍に移動した。
「はい。畏まりました」
ラシードとジャファル、それにこの場にいた他の側妃たち全てが虚を突かれたような顔をしている。
「ああ、そうそう。ちょっと皆さんにはお眠りいただきましょうか」
パチンという魔人の指の音に合わせて、他の側妃たちがばたばたと倒れて眠りにつく。今、寝室で意識があるのはラシードと魔人、ジャファルの三人だけということになった。
「お前っ! 魔人! 何故俺の言う事を聞かない?」
ジャファルが唾を飛ばす勢いで吠えた。
「何故でしょうねぇ? それはヒミツです」
魔人は意味ありげな表情を浮かべてジャファルを小ばかにする。
「魔人、こちらへ来い」
「行かなくていい」
ジャファルがした命令を、ラシードが即座に取り消した。
「はい。行きません」
魔人はラシードの言に従う。
「ど、どういうことだ。その邪魔な男を縛り上げて追い出せ!」
「やらなくていい」
とうとうジャファルはラシードを邪魔者として追い出そうとしたが、ラシードにより命令が取り消された。
「はい。やりません」
魔人は再びラシードの言にしか従わない。命令を悉く聞かない魔人に対して怒ったジャファルは叫んだ。
「もういい。魔人。ランプの中に戻って二度と出て来なくていい。封印だ」
「そんなことしなくていいよ」
「はい。もちろんです」
ジャファルの身体がしゅるしゅると音をたてて煙になっていく。そして、王城の寝室にあったランプが一つ浮かび上がった。魔人のランプとは違い、真新しく、ピカピカに磨かれたランプだ。そのランプが煙になったジャファルを吸い込んでいく。ジャファルの断末魔をも飲み込んで、ランプがコトリと床に転がった。
「さてはて。どうしましょうね。このランプ」
床に転がったランプを拾い。くるくると指で弄んだ魔人が、ふっと息を吹きかけると、ふわりとランプが浮き上がり、すっと消えた。
「アイナバル山なんかよりもずっと厳しい、火山のマグマ溜まりの真ん中に飛ばしました。ご本人が封印すると仰っていたので彼を呼び出すことは出来ないでしょうが、その前に誰も好き好んで火山の中には行かないでしょうねぇ」
「ジーニー、どういうこと?」
寝室内で今意識があるのはラシードと魔人だけだったが、用心のためにラシードは魔人のことを眞名ではなく別称で呼んだ。
「ランプの御主人様の命令を、ワタシの眞名を知る人は取り消せるのです。眞名を知る人の命令を直接受けることは出来ないのですが、ランプの御主人様の命令を取り消すという点では、眞名を知る人の命令が優先されます。でも、最後の命令はちょっぴり拡大解釈をしたんですけれどね」
うまくいきました、褒めてくださいと言う魔人にラシードは口づけた。八年越しのキスは甘くて。美味しくて。二人は角度を変えて、何度も口づけを交わした。最初は啄むようなものだったそれは、次第に貪り合うようなものに変わり、やがて二人の間に銀糸の橋を渡した。
「これからどうするの? もう戻って来れるの?」
寝室の片隅でもたれ合いながらラシードは魔人に問う。
「いえ、まだアラジン様の願いが一つ残っています」
「そっか。でも、いつまでも待つよ」
「本当は、ワタシの事なんて待たないでどなたかと幸せになってくださいと言うべきなんでしょうけれどねぇ」
「馬鹿だな。僕はたとえ記憶を消されたとしても君の事を求めるよ」
「ふふ。ありがとうございます」
魔人の目に浮かんだ涙をラシードが口づけて吸い取る。どこからか一番鶏の鳴き声がして、朝日が寝室に差し込んできた。新しい一日の始まりだ。
「そろそろ行かなくては」
「……そうか」
「ワタシはアラジン様をご自宅にお連れして身体を清めて差し上げることにします」
「僕は、他の側妃たちにここであったことを口外しないように言い含めて元の生活に戻させるよ。幸い、この政変……政変と言えるのかな。まあいいか。この政変を知るものは王城内の一部だけだ。国民には秘密にして事を収めるよ」
「そうですね。アラジン様には立派な王配になって頂かなくては」
「お二人の結婚式は来月だからな。僕も準備を頑張るよ」
魔人は、ジャファルによって抱き潰されて昏倒したアラジンと自分のランプを抱きかかえると、ふっと搔き消えた。ラシードは立ちあがると魔人により眠らされていた側妃たちを一人一人起こしていった。
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