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朝チュンで見たものは

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「どうしたんだい?シュガー」

 俺は、今、激しく後悔している。源氏名を付けるにあたり、俺の本名「佐藤 陽平」から、「佐藤」、「砂糖」うん。「シュガー」でいいや。と安直に付けすぎた。お客様が俺を呼ぶ度に、お客様としては全くそんな気はないのに、甘ったるい。ちなみに、この世界に砂糖はない。砂糖の精製技術は確立されていないようだった。甘味は蜂蜜に似たとろっとした液体を使用する。だから、お客様は「シュガー」が甘いものだとも、俺がもといた世界では、時として恋人を甘ったるく呼ぶ単語だとも、知る由もない。
 くっ。恥ずかしい。居たたまれない。

「シュガーは、名前を呼ばれるだけで真っ赤になってかわいいな」

 今日、俺を指名してくれているのは、ユニコーンのクレスさん。
 白い髪が虹色に輝き、燦々きらきらしい、長身の美人だ。ユニコーン、いわゆる馬のまんまじゃないぜ。馬だとこの店のドアから入れねぇ。クレスさんは人間の姿に擬態している。人間の姿になっていても、角はそのまんま額から1本生えているけれどね。
 クレスさんは、最近この店に来るようになった客だ。クレスさんが初来店したその日、いつものようにお茶をひいていた俺がたまたまクレスさんの席に着いたわけだが、その後この店に来るたびに律義にも俺を指名してくれている。

「シュガー?今日は呑まないのかい?」
「は、いえいえ。呑みますよ。頂いてもいいですか?」
「うんうん。呑んで。一番高い酒、ボトルで入れて。あと、フルーツの盛り合わせも頼んでよ」

 うへぇ。ありがてえ。頭のなかでゴールドがチャリチャリ音を立てて落ちている画像が浮かぶ。今月の売り上げノルマ達成じゃね?ちょう助かる。俺はいい気になって杯を重ねる。

 チュンチュンチュン

 鳥の鳴き声がする。んんー。頭痛ぇ。昨日は呑みすぎた。あれ?なんだ?この燦々きらきらした光景。あれあれ?クレスさんじゃ?俺ってばクレスさんの腕の中で抱き込まれてんじゃね?どうなってんだ、この状況。

「起きたのかい?シュガー」

 そういって、クレスさんは、俺の額にキスをする。はい。ばっちり起きました。起きずんばいられまい。シュガーこと、佐藤陽平25歳、意識はしっかりしております。今にも倒れそうですが。
 え?俺、大丈夫?体、なんか跡とか……。いや、大丈夫。……Siriっ。Siri穴は?ホッ。無事だ。
 クレスさん、この人ユニコーンだもんな。ブツも馬並なんじゃね?やべー。この腕の中にいる状況、ちょうやばくね?

「シュガーは本当にかわいいな。ふふ。何を焦っているんだい。大丈夫だよ。今日のところはキスだけで我慢してあげる。次はもっと気持ちいい事をしようね」

 うわ。なんだこの色気。ちょっと勃ったぞ。俺、挿れる方ならイケそうだぞ。挿れられるのはまだちょっと怖いけど。んん?「まだ」って何だ。俺、挿れられるの期待してんじゃね?うん。逃げよう。そうしよう。

 俺はなんとかクレスさんのお宅から逃げ出した。
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