すべては誤解だったけど、なぜか二人の男に愛されています。これはきっと冬の花火のせい

橘 咲帆

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03.一人で行った夏祭り

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 ナオが住む地区の神社は、近所のおじさんやおばさんが氏子会を作って運営をする神社だ。小さな神社なので、テキ屋も入ることはない。極々身内感満載の屋台が並ぶ。もちろん売り子も見知った人ばかりで、なんならナオと血縁関係にある人もいる。そんな面々からすると、毎年一緒に来ていた仲良しさんが一緒に来ていないので、疑問を持つ。

「あれあれ? ハルキ君はどうしたの? 喧嘩でもしたの?」

 小野田家本家のおばさんがナオに声をかけた。

「いえいえ、あいつ、彼女が出来たから今年は誘わなかったんですよ」

 おばさんはそっかそっかとナオの肩を叩き、くじを一回おまけしてくれた。
 当たったのは髪留めで、スイッチを入れるとビカビカ光るものだった。それを今まで嵌めていたピンと取り換えて長めで癖のある前髪にパチンと嵌めた。

「あら、可愛いわね。ナオくんも早くいい人見つけなきゃ」

 バンバンと背中を叩くおばさんに閉口しつつも、はははと力なく笑う。ナオはもう帰りたいと思ったが、今日は本家の兄ちゃんがお囃子で舞台に上がるので、これを見ないと母親に怒られることになる。昔ながらの地区で親戚づきあいをするのも大変なのである。
 所在なげにお囃子舞台が始まるまで、神社の境内をうろつくナオ。
 手作りのりんご飴は、テキ屋が作るりんご飴よりも砂糖っぽくて。これは、これで美味しいんだよなと、ぼんやり舐めていると、氏子会のおじさんが声をかける。

「ナオ、暇ならこっち来て酌でもするか? ご馳走もあるぞ」

 ご馳走ったって、近所の居酒屋からケータリングした揚げ物やら、おばちゃんが漬けた漬物じゃんと、笑いながらナオは神社に設えられた座敷に上がり込んだ。

「あれ? でも、おいしいな。トウモロコシのかき揚げに、イワシの梅しそ揚げ」
「そうだろ。そうだろ。そのトウモロコシはうちの畑でとれたやつだからな。新品種を作ってみたら甘くてな。まだ市場に出してないやつだから、貴重だぞ。梅は去年漬けたやつがいい塩梅だったし、大葉は庭に自生してるのを使ったんだ」
「へぇー。そっか、美味しいね」

 ナオはコップにつがれた透明な液体をこくんと飲み込んだ。

「んん? ちょっと待て。ナオ、それお酒だぞ?」

 みるみるナオの頬は真っ赤に染まる。慌てておじさんがナオに水を飲ませるも、時すでに遅し。初めて身体に入ったアルコールは強烈で、あっという間に酔っ払いが出来上かった。

 ナオは誰にも請われていないにもかかわらず、「歌いまーす!」と調子外れな歌を歌う。最初こそナオがお酒を飲んで慌てていたおじさん達も酔っ払いなので、やんやと拍手をして盛り上げた。「踊りまーす!」というと、何故かその周りでどじょうすくいをするおじさんもいたりして、さらに盛り上がる。「脱ぎまーす!」といって、ぺろりとTシャツと脱ごうとして褐色ピンクのつつましやかな乳首が露わになったところで、本家の兄ちゃんがTシャツの裾をおさえて脱ぐのを止めた。
 どうどう落ち着けと、兄ちゃんに座敷の隅に連れて行くかれると、ナオはごろにゃんと猫のように兄ちゃんに縋りついて身体を擦り付けた。
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