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04.いわゆる据え膳ってやつ※微
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明るい朝の陽ざしの中、ナオは頭の痛さで目が覚めた。
「痛ったぁ、頭痛い……」
思わずつぶやく声が妙に枯れていておかしいなと見回すと、自分の部屋ではない。シックな黒で統一された、趣味のいい広々とした寝室だった。
小野田毅彦はこの辺一帯の大地主の長男だ。付近には大学も多数あるため、小野田家の所有する豊富な土地は、大部分が賃貸マンションになっている。タケヒコは宅地建物取引士の資格を取得し、マンション経営で潤沢な不労収入を得ていた。所有する一棟の最上階をまるまると自分のものとして独り暮らしをし、タケヒコの父母は近隣で一番の豪邸を構え、離婚して戻って来たタケヒコの姉と、姉の子ども達も同居している。もちろんこの一家全てが、タケヒコが管理するマンションの家賃で生計をたてている。
ナオが「兄ちゃん」と呼ぶタケヒコは、明るくなりつつある自分の部屋で、ナオの寝顔を見つめていた。
「痛ったぁ、頭痛い……」
ようやくナオが起きたかと思えば、初めて飲んだ酒のせいで頭が痛いと言っている。まだ覚醒しきっておらず、周りをキョロキョロと見回すナオを見てニヤニヤと笑みをうかべた。
「あれ? 兄ちゃん?」
「おはよ。身体は大丈夫か?」
へ? あ? 身体? と裸であることをいぶかしむナオに、昨日のあらましを説明する。
「ナオは昨日、酒を飲んだことは覚えているか?」
「あ、うん。間違えて飲んじゃったのは覚えてる」
「歌を歌ったのは」
「うん。覚えてる」
「踊ったのは?」
「清武のおじさんが何故かどじょうすくいを踊ってたよね」
「脱ごうとしたのは?」
「え? 何? それは全然……」
「覚えていない?」
「うん」
「座敷の隅で俺に寄り掛かって寝ちゃったあたりも?」
「覚えていない」
ふーん、そっかと、タケヒコはナオを抱き寄せ、ちゅちゅ、とこめかみにキスをする。
「兄ちゃん」
「うん?」
「あのさ」
「うん」
「まさか」
「まあ、俺も男だし? 据え膳は頂いとこうかなと」
据え膳、って。据えられたごはんってことで、さあ召し上がれってされたってことだよなと、ナオの頭の中で色々な行動パターンが浮かぶ。──えっと、えっと、俺が兄ちゃんを誘ったってこと!?
「……あの、さ。俺、兄ちゃんに何かしちゃった?」
「んー。先ず、帰りたくないとか駄々をこねたな」
「駄々って、子どもじゃん」
「駄々としか言いようがない感じだったからなぁ、嘘はつけない」
「まじか……」
「まあ、酔っ払いのまま帰ったらおばさんにも怒られちゃいそうだったから、俺んち連れて来た」
「そっか、ありがとう」
「そうしたら、なんか知らん玄関先で俺の首根っこを捕まえてキスなんかして来て」
「ええええ? 俺ってばそんなこと?」
「そそ、まさに据え膳」
「それは据え膳ってやつだね……」
喉乾いたか? 麦茶でいいか? と、2リットルのペットボトルからコップに移された麦茶を口にして、ナオに口移しで飲ませるタケヒコ。こくん、こくんと喉を鳴らして麦茶を飲む様が可愛くて、タケヒコの口から零れ落ちる言葉といえば──。
「ナオ、また抱いていい?」
「え? あ? ちょっと」
ぎゅっと肌を合わせて抱きしめられると、さらさらの肌はほんのり温かくて気持ちがいい。頤を取られて深いキスをされれば、頭がぼおっとして何も考えられなくなる。思春期の男の身体など、ちょっとつついてやればすぐに快楽を求める。たとえその相手が従前より好きであったハルキでなかったとしても、だ。それに、タケヒコのことは嫌いではない。格好良くて、頭もよくて。憧れていた。そんな相手が自分に大人のキスをしていると思うと興奮をした。
腰のあたりを取られて、四つん這いにされると、後ろから熱杭が穿たれる。このずるりと排泄にも似た快感は……なんとなく昨夜の自分の痴態が思い起こされた。
──ああ、俺ってやっぱ昨日、ケツ掘られてんじゃん。本命じゃないけどさ……でも、気持ちがいいから、ま、いいか。
「痛ったぁ、頭痛い……」
思わずつぶやく声が妙に枯れていておかしいなと見回すと、自分の部屋ではない。シックな黒で統一された、趣味のいい広々とした寝室だった。
小野田毅彦はこの辺一帯の大地主の長男だ。付近には大学も多数あるため、小野田家の所有する豊富な土地は、大部分が賃貸マンションになっている。タケヒコは宅地建物取引士の資格を取得し、マンション経営で潤沢な不労収入を得ていた。所有する一棟の最上階をまるまると自分のものとして独り暮らしをし、タケヒコの父母は近隣で一番の豪邸を構え、離婚して戻って来たタケヒコの姉と、姉の子ども達も同居している。もちろんこの一家全てが、タケヒコが管理するマンションの家賃で生計をたてている。
ナオが「兄ちゃん」と呼ぶタケヒコは、明るくなりつつある自分の部屋で、ナオの寝顔を見つめていた。
「痛ったぁ、頭痛い……」
ようやくナオが起きたかと思えば、初めて飲んだ酒のせいで頭が痛いと言っている。まだ覚醒しきっておらず、周りをキョロキョロと見回すナオを見てニヤニヤと笑みをうかべた。
「あれ? 兄ちゃん?」
「おはよ。身体は大丈夫か?」
へ? あ? 身体? と裸であることをいぶかしむナオに、昨日のあらましを説明する。
「ナオは昨日、酒を飲んだことは覚えているか?」
「あ、うん。間違えて飲んじゃったのは覚えてる」
「歌を歌ったのは」
「うん。覚えてる」
「踊ったのは?」
「清武のおじさんが何故かどじょうすくいを踊ってたよね」
「脱ごうとしたのは?」
「え? 何? それは全然……」
「覚えていない?」
「うん」
「座敷の隅で俺に寄り掛かって寝ちゃったあたりも?」
「覚えていない」
ふーん、そっかと、タケヒコはナオを抱き寄せ、ちゅちゅ、とこめかみにキスをする。
「兄ちゃん」
「うん?」
「あのさ」
「うん」
「まさか」
「まあ、俺も男だし? 据え膳は頂いとこうかなと」
据え膳、って。据えられたごはんってことで、さあ召し上がれってされたってことだよなと、ナオの頭の中で色々な行動パターンが浮かぶ。──えっと、えっと、俺が兄ちゃんを誘ったってこと!?
「……あの、さ。俺、兄ちゃんに何かしちゃった?」
「んー。先ず、帰りたくないとか駄々をこねたな」
「駄々って、子どもじゃん」
「駄々としか言いようがない感じだったからなぁ、嘘はつけない」
「まじか……」
「まあ、酔っ払いのまま帰ったらおばさんにも怒られちゃいそうだったから、俺んち連れて来た」
「そっか、ありがとう」
「そうしたら、なんか知らん玄関先で俺の首根っこを捕まえてキスなんかして来て」
「ええええ? 俺ってばそんなこと?」
「そそ、まさに据え膳」
「それは据え膳ってやつだね……」
喉乾いたか? 麦茶でいいか? と、2リットルのペットボトルからコップに移された麦茶を口にして、ナオに口移しで飲ませるタケヒコ。こくん、こくんと喉を鳴らして麦茶を飲む様が可愛くて、タケヒコの口から零れ落ちる言葉といえば──。
「ナオ、また抱いていい?」
「え? あ? ちょっと」
ぎゅっと肌を合わせて抱きしめられると、さらさらの肌はほんのり温かくて気持ちがいい。頤を取られて深いキスをされれば、頭がぼおっとして何も考えられなくなる。思春期の男の身体など、ちょっとつついてやればすぐに快楽を求める。たとえその相手が従前より好きであったハルキでなかったとしても、だ。それに、タケヒコのことは嫌いではない。格好良くて、頭もよくて。憧れていた。そんな相手が自分に大人のキスをしていると思うと興奮をした。
腰のあたりを取られて、四つん這いにされると、後ろから熱杭が穿たれる。このずるりと排泄にも似た快感は……なんとなく昨夜の自分の痴態が思い起こされた。
──ああ、俺ってやっぱ昨日、ケツ掘られてんじゃん。本命じゃないけどさ……でも、気持ちがいいから、ま、いいか。
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