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05.マーキングは控え目に
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なし崩し的にタケヒコとの関係を続けることになったナオは、タケヒコとのセックスに溺れた。基本的に外に働きに出ることはなく、家にいるタケヒコからペントハウスのカードキーを受け取ると、朝な夕な寸暇を惜しんでタケヒコのもとを訪れた。
ところでハルキはというと、恋人が出来たというのはナオの誤解だった。告白を受けたように見えた黒髪美少女はハルキに告白するのではなく、野球部の先輩に告白をしようとしていたのだ。野球部のマネージャーでもあった黒髪美少女はハルキに頼み、告白の練習をしていたという顛末。その後ハルキと黒髪美少女の下校が一緒であったのは、ハルキがナオに避けられていて、一人で帰ろうとしていたところを、帰る方向が同じだったため一緒に帰ったにすぎなかった。教室等で談笑していたのは共通の話題である野球部に関して話していたのだった。
ハルキは何故かナオに避けられている自覚はあったが、試験だったり、野球の大会であったりと忙しさにかまけて連絡をしていなかった。もとより毎日顔をあわせていたため、メッセージアプリで連絡を取るなどといった対処は眼中になかったのだ。
しかし、いつも一緒に行く夏祭りくらいはナオからお誘いがあるだろうと思ったが、特に誘われることもなく、当日を迎える。いぶかしみつつも、ナオが祭り会場にいるかもしれないという望みを持って行ってみたが、ナオは祭り会場に居なかった。
──その頃のナオは、酔っ払って裸踊りしそうになり、タケヒコに止められていた所だったわけだが──。
ナオに会えなかったハルキは、あいつ、お祭りに来なかったんだなとすごすごと一人で帰っていた。
夏休みも全くナオに会えなかったハルキが、新学期になり学校でナオを見かけると妙に色気がある。廊下ですれ違うナオをじっとりと湿度のある眼差しで見ていると、ナオの首筋には隠しきれない鬱血痕が見えた。
(え? あいつ、いつの間に? いやいやベタに虫刺されかもしれないし……)
ナオは外見はチャラいが中身は素直ないいやつだ。女子にも人気がないわけではない。
(あいつに彼女が出来るのは……おかしくないよな。だから避けられているのかな? でも、友情と恋愛は違うんじゃね? 彼女を優先するあまり、幼馴染を放置かよ)
訳もなくムカついた。彼女が出来たなら出来たで言ってくれればいいのに──。一学期が終わる頃から夏休みを挟んで新学期が始まり、数日が経っている。かれこれ一か月半もまともに話をしていない。考え出すとますます怒りがこみ上げて来る。ハルキは激情のままメッセージを打ち込むと、送信アイコンをタップした。ほどなく既読マークが付いたが、ナオからの返信はなかった。
(畜生、なんなんだ! もうこうなったらアイツんちに押しかけてやる)
勝手知ったる幼馴染の家だ。訪ねてみればナオの母に温かく迎えられた。ナオの家は麹屋で、ショップも構えているため、店番がある。ナオの母はハルキにスナック菓子と炭酸飲料のペットボトルを手渡し、ナオの部屋で待てばいいと母屋の鍵を開ける。ナオの部屋は相変わらずごちゃついていて、漫画やフィギュアが棚に並んでいた。
十年ほど前に宅地造成された新興住宅地にあるハルキの家に比べて、古くからこの土地で過ごして来たナオの家は随分と広い。ハルキの親は本を置くスペースがないからと、電子書籍の端末をハルキに与えており、読書は専ら電子書籍で行っている。ゆえに、小さい頃から入り浸っていたナオの部屋はハルキのワンダーランドで、ナオの部屋で読破している漫画シリーズも多い。
「あ、これ新刊出てんじゃん」
作りつけられた大型の本棚とは別に、ベッド脇にある小さな棚にはナオが直近で読んでいる本が積み重なっている。ハルキは層になっている本の塊から長く続いている少年漫画シリーズの最新刊を引っ張り出そうとした。すると、本の間から数枚の写真が床に落ちる。今時スマホで写真をシェアするのが一般的なのに、写真なんて珍しいなと拾い上げると、それは解像度が高く、人物にしっかり焦点のあたった、撮影技術が妙に高い写真だった。神社の氏子会にはカメラが趣味のおじさんがいて、祭り当日にはここぞとばかりにシャッターチャンスを狙うのだ。
ハルキは写真を繰っていく。りんご飴を舐めるナオを見て、「あいつ、祭りに行ったんだな」と思った。リトルリーグで一緒だったが、高校は別になってしまったメンバーとポーズをきめて映る写真もあった。引きで撮った座敷での写真には、今にも茶色い物体に大きな口を開けてかぶりつこうとしているナオが端っこに映っていた。そして何故かナオの親戚の兄ちゃんの写真が多い。舞台に上がって笛を吹いているところや、氏子会の長老と打ち合わせをしているところなど。最後の写真を見て、ハルキは絶句した。シッシッと追い払うようなジェスチャーをする兄ちゃんにしなだれかかっているナオ。二人は仲が良いという言葉だけでは表せないような雰囲気を醸し出している。
「彼女、じゃなくて。彼氏、なのか?」
──ナオが男と? え? その場合、挿れる方? 挿れられる方?
ハルキは想像した。想像してしまった。
──いや、ナオだぞ。俺、何を想像して?
ところでハルキはというと、恋人が出来たというのはナオの誤解だった。告白を受けたように見えた黒髪美少女はハルキに告白するのではなく、野球部の先輩に告白をしようとしていたのだ。野球部のマネージャーでもあった黒髪美少女はハルキに頼み、告白の練習をしていたという顛末。その後ハルキと黒髪美少女の下校が一緒であったのは、ハルキがナオに避けられていて、一人で帰ろうとしていたところを、帰る方向が同じだったため一緒に帰ったにすぎなかった。教室等で談笑していたのは共通の話題である野球部に関して話していたのだった。
ハルキは何故かナオに避けられている自覚はあったが、試験だったり、野球の大会であったりと忙しさにかまけて連絡をしていなかった。もとより毎日顔をあわせていたため、メッセージアプリで連絡を取るなどといった対処は眼中になかったのだ。
しかし、いつも一緒に行く夏祭りくらいはナオからお誘いがあるだろうと思ったが、特に誘われることもなく、当日を迎える。いぶかしみつつも、ナオが祭り会場にいるかもしれないという望みを持って行ってみたが、ナオは祭り会場に居なかった。
──その頃のナオは、酔っ払って裸踊りしそうになり、タケヒコに止められていた所だったわけだが──。
ナオに会えなかったハルキは、あいつ、お祭りに来なかったんだなとすごすごと一人で帰っていた。
夏休みも全くナオに会えなかったハルキが、新学期になり学校でナオを見かけると妙に色気がある。廊下ですれ違うナオをじっとりと湿度のある眼差しで見ていると、ナオの首筋には隠しきれない鬱血痕が見えた。
(え? あいつ、いつの間に? いやいやベタに虫刺されかもしれないし……)
ナオは外見はチャラいが中身は素直ないいやつだ。女子にも人気がないわけではない。
(あいつに彼女が出来るのは……おかしくないよな。だから避けられているのかな? でも、友情と恋愛は違うんじゃね? 彼女を優先するあまり、幼馴染を放置かよ)
訳もなくムカついた。彼女が出来たなら出来たで言ってくれればいいのに──。一学期が終わる頃から夏休みを挟んで新学期が始まり、数日が経っている。かれこれ一か月半もまともに話をしていない。考え出すとますます怒りがこみ上げて来る。ハルキは激情のままメッセージを打ち込むと、送信アイコンをタップした。ほどなく既読マークが付いたが、ナオからの返信はなかった。
(畜生、なんなんだ! もうこうなったらアイツんちに押しかけてやる)
勝手知ったる幼馴染の家だ。訪ねてみればナオの母に温かく迎えられた。ナオの家は麹屋で、ショップも構えているため、店番がある。ナオの母はハルキにスナック菓子と炭酸飲料のペットボトルを手渡し、ナオの部屋で待てばいいと母屋の鍵を開ける。ナオの部屋は相変わらずごちゃついていて、漫画やフィギュアが棚に並んでいた。
十年ほど前に宅地造成された新興住宅地にあるハルキの家に比べて、古くからこの土地で過ごして来たナオの家は随分と広い。ハルキの親は本を置くスペースがないからと、電子書籍の端末をハルキに与えており、読書は専ら電子書籍で行っている。ゆえに、小さい頃から入り浸っていたナオの部屋はハルキのワンダーランドで、ナオの部屋で読破している漫画シリーズも多い。
「あ、これ新刊出てんじゃん」
作りつけられた大型の本棚とは別に、ベッド脇にある小さな棚にはナオが直近で読んでいる本が積み重なっている。ハルキは層になっている本の塊から長く続いている少年漫画シリーズの最新刊を引っ張り出そうとした。すると、本の間から数枚の写真が床に落ちる。今時スマホで写真をシェアするのが一般的なのに、写真なんて珍しいなと拾い上げると、それは解像度が高く、人物にしっかり焦点のあたった、撮影技術が妙に高い写真だった。神社の氏子会にはカメラが趣味のおじさんがいて、祭り当日にはここぞとばかりにシャッターチャンスを狙うのだ。
ハルキは写真を繰っていく。りんご飴を舐めるナオを見て、「あいつ、祭りに行ったんだな」と思った。リトルリーグで一緒だったが、高校は別になってしまったメンバーとポーズをきめて映る写真もあった。引きで撮った座敷での写真には、今にも茶色い物体に大きな口を開けてかぶりつこうとしているナオが端っこに映っていた。そして何故かナオの親戚の兄ちゃんの写真が多い。舞台に上がって笛を吹いているところや、氏子会の長老と打ち合わせをしているところなど。最後の写真を見て、ハルキは絶句した。シッシッと追い払うようなジェスチャーをする兄ちゃんにしなだれかかっているナオ。二人は仲が良いという言葉だけでは表せないような雰囲気を醸し出している。
「彼女、じゃなくて。彼氏、なのか?」
──ナオが男と? え? その場合、挿れる方? 挿れられる方?
ハルキは想像した。想像してしまった。
──いや、ナオだぞ。俺、何を想像して?
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