すべては誤解だったけど、なぜか二人の男に愛されています。これはきっと冬の花火のせい

橘 咲帆

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09.ナオは見た②

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 夏が過ぎ、秋が来て、冬になった。
 中間試験のときもそうだったが、期末試験の時期もナオはハルキと連れ立って登下校をすることにした。
 十二月も中頃にもなると、街は華やいだ雰囲気になる。温暖な平野にあるナオが居住する地域は、紅葉が終わるのと入れ違うようにイルミネーションの光が灯る。今日は試験最終日ということもあり、ナオとハルキは最寄りの駅から数駅の所にある大型ショッピングモールのあるターミナル駅に降り立った。

「あ、れ? ここ、店が変わっている」

 以前、二人でこの街に来た時にあった、冷えた大理石の上でアイスやトッピングのナッツなどを混ぜ合わせて供するアイスクリーム屋を目指して来たのに、その場所には別のアイスクリーム屋が入っていた。
 そのアイスクリーム屋はナオとハルキの最寄り駅にもあるアイスクリーム屋だったため、その隣にあるスープ屋に入った。ちょうど小腹も空いていたし、何より寒かったので、今日はアイス食べるより、スープだよなと笑いあった。

「あちっ」
「……ナオ、相変わらずの猫舌かよ」

 イルミネーションが輝く通りに面したカウンター席で、二人は並んでスープを啜る。しかし、ナオは猫舌なので、熱いスープに苦戦していた。

「うっせぇ」
「そういや、こないだテレビでやってたけど、人間の舌は先っぽの方で温度を感じるんだってさ」
「ん?」
「舌の先っぽ」
「ここ?」

 ナオがちょろりと舌を出し、指でしめした。

(うっ)

 ハルキは、薄くて真っ赤な、猫の舌にも似たナオの舌を見てドギマギした。夏以降、ナオのちょっとした仕草に色気を感じてしまうようになったハルキは、ほんのり赤く染まってしまった自分の頬を誤魔化すように、人間が猫舌である所以ゆえんについて、テレビの受け売りうんちくを語った。なんでも熱さに強い人は、熱いものを食べたり飲んだりするときに温度を感じる舌先を口蓋こうがいに付け舌の裏側にポケットを作り、一旦そこに熱い食べ物を冷ました後に咀嚼そしゃくするのだとか。

「ふーん。スープを舌を付けないように、舌裏のポケットに流し込む……あちっ。対策しても熱いじゃん」
「一度熱いと認識しちゃってるから、今日のところは無理なんじゃね。最低一週間くらいは訓練が必要とか言っていたし」

 そういうもんかなといいつつ、熱いスープを猫背になってふーふーするナオは可愛かった。そんなナオと、イルミネーションと、自分が飲んでいるスープを交互に見るハルキは、ナオがピクリと身じろぎをして、一点を見つめだしたことを逃さなかった。

「ナオ? どした?」
「う、うん。なんでもない、よ」

 ナオは一点を見つめていた視線をハルキに移し、にへっと笑ったが、目が笑っていなかった。
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