『神様ポスト』

キンモクセイ

文字の大きさ
3 / 5
安堂 薫

『彼に会いたい』(3)

しおりを挟む
日差しが少し高くなり、顔に当たって目が覚めた薫。
寝起きで少し呆然としていたが、ジャックの事を思い出しガバっと起き上がった。
周りを見ると、ベットの上には服を着た自分だけだった。
昨夜の事は夢だったのかと不安になり、
「ジャック………?」と小さな声を出すと、隣の部屋から足音が聞こえてきた。
ドアが開くと、水色のYシャツに紺のスラックスを着たジャックが立っていた。

『おはよう、お寝坊さんなカオル』

「お、おはようジャック」

『ふふっ、この世界の時間軸はまだあまり分かって無いけど、おはようはとっくに過ぎてる事だけは分かるよ。』

そう伝えながら近づいてくるジャックに薫は顔を赤らめ、見られまいとシーツの中に顔を隠した。

『ほらほら、ベットの中に隠れようとしないで。ついさっき、冷えた不思議な箱の中にあった食材使ってご飯を作ったんだ。一緒に食べよう。』

「え?ジャックの作ったご飯?」

『そうだよ。味の保証はできないけどね。それとも、あの不思議な箱の中の食材は、使っちゃ駄目だったかな?』

「ううん、そんな事ないよ。むしろ、ありがとう。」

『どういたしまして。お返しといったらなんだけど、食事しながらこの世界の事を少し教えて欲しいな。良いかな?』

「もちろん、私で答えられる事だったら何でも教えるよ。」

『ありがとう、それじゃ食事にしよう。おいで、カオル。』


薫は、差し出された手をとり、ベットから出た。
『あぁ、そういえばこの服、洋服棚の中の隅に置いてあったけど、着て大丈夫だった?』
ジャックは思い出したように聞いてきた。

「あ…うん、もういらない服だったし、全然問題ないよ。」

『ふぅん、そっか。じゃあ行こう。』

その後2人は、ジャックが作ってくれた料理に舌鼓をうちながら、様々な会話をした。
この世界の事や、どんな文明なのか、社会の仕組みなど、薫の説明出来る範囲で教えていた。

食事を済ませ、作ってくれたお礼に、薫は食器を洗っている。ジャックは、そんな薫の動作を興味津々な表情で見ている。

「ジャック、そんなに見られると、恥ずかしいよ。」

『そんな事言わないで。僕にとっては、この瞬間でさえも、とても素晴らしいものなんだから。』

「も~、言っても聞かないんだから。」

『それにしても、本当に凄いね。特にあのレイゾウコ?だっけ、本当に不思議だよ。動力は一体何なの?』

「電気だよ。ジャックの世界でいうところの雷属性って言った方が早いかな?」

『え?そうなの?』

「そうだよ。この世界では電気が無ければ困る事がたくさんあるの。」

『そうなんだね。それなら僕の風属性は、あまり役に立たないかもしれないね。』

「そんな事ないよ、洗濯物の時とか絶対役立つよ。」

『ほんとに?じゃあ今度試してみたいな。』

「それに、風の力を電気に変える技術もあるのよ。」

『そんな事も出来るのかい?やっぱりこの世界の文明は、本当に進んでるんだね。』

ジャックはゲームの世界では、元騎士団の副団長をしていたが、怪我が原因で若くして引退せざるを得なかった。
退団後は、持ち前の明るさと、人脈で商業ギルドと情報ギルドを経営していた。
この世界は、ジャックの知識欲を刺激するには、もってこいの場所だったらしい。

洗い物も一通り終わり、一息ついた薫。

「ねぇジャック、一緒にお買い物に行かない?」

『買い物?どうして?』

「だってジャックが此処で、生活するなら、色々と必要な物がたくさんあるでしょ?」

『確かに…そうだね。僕は何も分からないから、カオルが選んでくれると嬉しいな。』
ジャックは、考え込む仕草をしたあと、薫を見つめてそう答えた。

「もちろん、任せて!」
薫は、早急に必要な物を、頭の中でリストアップした。

『じゃあ、ここで待ってるから、着替えてきておいで。その格好は、この世界でいう寝巻きなんでしょ?』

「分かった。ちょっとだけ待っててね。」

こうして、薫は出掛ける身支度を始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

処理中です...