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3. パブリックスクール
しおりを挟むリューイは十二歳になっていた。
慣例に従い、歴史あるパブリックスクールに入学をすることに決まったらしい。
長らく顔を見ていなかった父から、入学の必要事項伝達のために呼び出されたリューイは、そそくさと自室に戻っていた。
そして膝を抱えるいつものポーズで始まった脳内会議。
「お父さま、ルクラント学園の入学準備をするようにって、いってたよねぇ。聞き間違えならいいのになぁ......」
リューイが竜士と協力して勉強に励むうちに、うすうすは気付いていたのだ。
聞き覚えのある地名、人名、そしてこのパブリックスクールの名前が最後の決め手になってしまった。
「でも、やっぱりそうだったかって、思っちゃったよねぇ」
ルクラント学園、それにブルーイット辺境伯の一人息子リューイといったら、竜士が前世でやりこん でいた恋愛シュミュレーションゲーム『恋する聖女・ルクラント学園』に出てきてた悪役令息と完全一致なのだ。
金髪碧眼の天使みたいな見た目に反して、性格の悪い正統派悪役なのがリューイだった。
「ゲームのリューイはもっと意地悪な顔をしてたって竜士はいってたけどさぁ、やっぱりこうなるとあの悪役令息って僕のことだよねぇ」
もはやここまできたら、ゲームの世界じゃないと思い込むより、ゲームの世界である前提で傾向と対策を練ったほうがいいに決まってる。
正常性バイアスは脳の危険なメカニズムなのだ。
すべて竜士の受け売りだけども。
ゲームの中でリューイというキャラは、世界を平和に導く聖女ルルンの邪魔ばかりする嫌われ者だった。
聖女は攻略対象者と協力し、愛の力で悪役令息リューイの策略を暴き、世界に平和をもたらすというストーリーだ。
聖女がどの攻略対象者を選んでも、リューイが処刑されることは変わらない。
むしろリューイが処刑されないということは、聖女にとってどの攻略対象者とも結ばれなかったというバッドエンドになるわけで。
このままいくとリューイの生存率はかなり低いのだ。
攻略対象者は、第一王子アデルさま、騎士のべイントン、幼馴染のロー、歴史学のレズリー先生など総勢8人。
脇役を含めどのキャラにも深い生い立ちが丁寧に用意されていて、竜士はこのゲームの世界観が大好きだったのだ。
「竜士は、隠れ攻略者エンド?まで全クリしたんだよねぇ。どうにか逃げ道はないのかなぁ」
竜士だって、好きなキャラに嫌われるのは悲しい。
何よりも、処刑されるのは御免こうむりたい。
「もうさ、悪役令息の汚名を返上して、全力で良い子になればいいんじゃない? なるべく目立たず騒がず接触せず、全力で死亡エンド回避! がんばろうね!」
これまでもたくさんの苦難を二人で協力して乗り越えてきたのだ。
きっと今回も二人ならば何とか なるはず。
心の中で、リューイと竜士は固い握手を交わしあったのだった。
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