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41. キィウェィさん

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 誰だか知らないが、タイミングがよすぎないか?
 俺はノックの音におそるおそる声をかけた。


『はい、どなたですか?』

「あ、ユーキさん。起きてましたか? あなたのルルルフです。おはようございます!」

『俺の、ルルルフさん、ですね。その表現、やめてもらえます? 金輪際。絶対に』

「とりあえず扉を開けてくださいよぉ。ユーキさぁん」



 爽やかな一日の始まりに、底抜けに陽気なルルルフさんの声が響く。

 いろいろな意味で濃いルルルフさんの顔を見るのは、非常にためらわれる。
 たが、こうしている間もルルルフさんは廊下で騒いでいるのだ。

 うるさい。

俺は仕方なくドアノブに手をかけた。その瞬間、向こう側から勢いよくドアが開けられた。


「おっはようございまぁす!」 

『わあっ!』 



 俺が条件反射でドアを閉めようと押さえても、ルルルフさんの足に阻まれて閉められない。
 ひい!


「この世界のドアノブって、触れると自動解錠されるので、気をつけてくださいねぇ。今は僕だから大丈夫ですけど、変な人だったら危ないですからね!」


 屈託ない笑顔のルルルフさんはそういいながら、ドアの隙間からじりじりと足を押し込み侵入を試みている。


『お前が一番危ないわ!』


 俺の心からの叫びとともに、バコォンとなにかがぶつかる音が聞こえた。

 ルルルフさんは、扉の向こうで頭をおさえてうずくまっている。


 俺、物理的なツッコミは入れていないぞ。


「ごめんなさいねぇ。この子ったら朝っぱらからはしゃいじゃって」


 おそるおそるドアを開けると、エプロン姿の年配の女性が、にこにこ笑顔で立っていた。

 手に持っているバケツが、少しへこんでいる。まさかそれで……?  

 異世界怖い。
 ルルルフさん、頭、大丈夫? いろんな意味で。


「うう、ひどい。キィウエィさん、結構、本気で痛い」

「何をいっているんですか。こんなに怯えてるじゃないの、かわいそうに。ほら早く謝りなさいな。ルルルフったら、いくつになっても悪戯ばかりで」

「ううう、どうもすみませんでした。ちょっとびっくりさせよっかなって僕の遊び心だよぉ。あ、こちらは清掃係のキィウエィさん。僕の義叔母おばさんにあたる人です」


 たしかにびっくりしましたよ。通報するレベルでな!


 キィウェィさんは何事もなかったかのように、ほほほほと上品に笑いながら、よろしくお願いしますねと挨拶をしている。

 パォ一族ってみんなこんなに濃いのかな。
 それとも、まさか異世界の標準? とりあえず俺はキィウェィさんに、助けていただいてありがとうございましたとお礼をいっておいた。

 長いものには巻かれておくのだ。



「ユーキさんはここに来たばかりで、まだまだ大変でしょう。ここでは気兼ねせず、のびのび暮らしてくださいねぇ。汚れた服や洗濯物があったら、この私が責任を持ってなんでもピカピカにしますから。さぁさぁ、今からまたベッドで寝る予定じゃないのなら、シーツを出してくださいな」

『あ、すみません。これからお世話になります。清野優希です。どうぞよろしくお願いします。……あの、もしかして俺、すごく寝坊しました? ちょっと待っててもらえますか? すぐ、すぐなんで』

「いいえ。まだ朝の七時前ですよ?」





『朝の七時前からこんなに騒ぐやつがあるか!』



 俺の叫び声が早朝の空に響いたのだった。







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