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――シディール様との婚約破棄が決まりました。
お母様にそう告げられた瞬間、血の気が引くのが分かった。さあ、と一瞬にして、立つのがやっとなくらいにまで力が抜ける。触ってもいないのに、指先が冷たくなったのが分かるような気がした。
わたしが前世の記憶を思い出したときも。
この国が戦争中であると気が付いたときも。
貴族令嬢なんていう、自由がない身に転生したのだと分かったときも。
ここまで動揺なんて、しなかった。
「お、お母様――それじゃあ、わたし、わたしは……」
だって、シディール様が最後の一人だった。この国内でまだ婚約が決まっていない、結婚適齢期の貴族は。
わたしが男だったら、まだ結婚適齢期に満ちていない年下の女も婚約の範囲に入ることもあったが、わたしは女だ。子供を産まないといけない以上、どうしても、年下の男では不都合が出る。
一歳か二歳くらい、結婚適齢期とされる年齢よりも下であれば、まだなんとかなったかもしれない。
でも、今国内にいる婚約者が決まっていない子息は幼子というべき年齢ばかり。そんなの、同年代の令嬢が婚約者になるに決まっている。
貴族令嬢で婚約破棄。そんなの、前世のネット小説で飽きるほど読んできたけれど、でも、この世界では違う。誰かヒーローが出てきて助けてくれて、元婚約者に恥をかかせてくれるなんてこと、ありえない。
だって――だって。
国内で婚約相手が見つからなかったら、わたしは――。
「ど、どうしてわたしが婚約破棄なんですか!?」
わたしは婚約破棄という事実が受け入れられなくて、声を荒げてしまう。
何も悪いことはしていない。シディール様との仲だって、恋愛結婚のように仲むつまじく、とは到底言えないものの、政略結婚としてはよい方だったと思う。少なくとも、険悪の二文字からは、ほど遠かったはずなのに。
嘘だ、と言ってほしい一心で、お母様に聞くと、「お前は酷い姉ね」と言われてしまった。
「スノーティアが可哀想じゃないのかしら?」
スノーティア。わたしの、血のつながらない妹だ。まだ、結婚適齢期一歩手前の年齢。そろそろ婚約の話が出てもおかしくない時期だが――彼女には、相手となる人物が残っていない。少し上のわたしですら、シディール様しかいなかったのだから。
わたしは可哀想じゃないの。
そう言いたい気持ちを、ぐっと堪えた。そんなの、スノーティアの方が、お母様にとっては大切に決まっている。
分かり切っていて、わたしなんか大事じゃないと言われることを簡単に予想できてしまうからこそ、問いたくなかった。
はっきりと、お母様の口から言われるのが、嫌だから。
スノーティアはお母様がお腹を痛めて産んだ子。
対するわたしは、お母様とは血のつながらない、お母様の妹の子。ただの姪。
お母様が、姉妹仲のいい方だったら、まだわたしも今よりはまともな扱いを受けたかもしれないが、かなり仲が悪かったと聞いている。だからこそ、わたしの実母は、家督を継ぐお母様よりも先に結婚し、わたしを産み、なかなか子供に恵まれなかったお母様をさげすんでいたらしい。
お母様にそう告げられた瞬間、血の気が引くのが分かった。さあ、と一瞬にして、立つのがやっとなくらいにまで力が抜ける。触ってもいないのに、指先が冷たくなったのが分かるような気がした。
わたしが前世の記憶を思い出したときも。
この国が戦争中であると気が付いたときも。
貴族令嬢なんていう、自由がない身に転生したのだと分かったときも。
ここまで動揺なんて、しなかった。
「お、お母様――それじゃあ、わたし、わたしは……」
だって、シディール様が最後の一人だった。この国内でまだ婚約が決まっていない、結婚適齢期の貴族は。
わたしが男だったら、まだ結婚適齢期に満ちていない年下の女も婚約の範囲に入ることもあったが、わたしは女だ。子供を産まないといけない以上、どうしても、年下の男では不都合が出る。
一歳か二歳くらい、結婚適齢期とされる年齢よりも下であれば、まだなんとかなったかもしれない。
でも、今国内にいる婚約者が決まっていない子息は幼子というべき年齢ばかり。そんなの、同年代の令嬢が婚約者になるに決まっている。
貴族令嬢で婚約破棄。そんなの、前世のネット小説で飽きるほど読んできたけれど、でも、この世界では違う。誰かヒーローが出てきて助けてくれて、元婚約者に恥をかかせてくれるなんてこと、ありえない。
だって――だって。
国内で婚約相手が見つからなかったら、わたしは――。
「ど、どうしてわたしが婚約破棄なんですか!?」
わたしは婚約破棄という事実が受け入れられなくて、声を荒げてしまう。
何も悪いことはしていない。シディール様との仲だって、恋愛結婚のように仲むつまじく、とは到底言えないものの、政略結婚としてはよい方だったと思う。少なくとも、険悪の二文字からは、ほど遠かったはずなのに。
嘘だ、と言ってほしい一心で、お母様に聞くと、「お前は酷い姉ね」と言われてしまった。
「スノーティアが可哀想じゃないのかしら?」
スノーティア。わたしの、血のつながらない妹だ。まだ、結婚適齢期一歩手前の年齢。そろそろ婚約の話が出てもおかしくない時期だが――彼女には、相手となる人物が残っていない。少し上のわたしですら、シディール様しかいなかったのだから。
わたしは可哀想じゃないの。
そう言いたい気持ちを、ぐっと堪えた。そんなの、スノーティアの方が、お母様にとっては大切に決まっている。
分かり切っていて、わたしなんか大事じゃないと言われることを簡単に予想できてしまうからこそ、問いたくなかった。
はっきりと、お母様の口から言われるのが、嫌だから。
スノーティアはお母様がお腹を痛めて産んだ子。
対するわたしは、お母様とは血のつながらない、お母様の妹の子。ただの姪。
お母様が、姉妹仲のいい方だったら、まだわたしも今よりはまともな扱いを受けたかもしれないが、かなり仲が悪かったと聞いている。だからこそ、わたしの実母は、家督を継ぐお母様よりも先に結婚し、わたしを産み、なかなか子供に恵まれなかったお母様をさげすんでいたらしい。
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