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結局、シオンハイトの持っている絵を、誰に渡したのか思い出せなかった。でも、思い出せないのは、それだけ。人にあげた作品は、あの絵以外は全て思い出せるし、誰に渡したかも覚えている。
ずっと、思い出せるかも、と考えて、そのたびに頭痛がして、最終的には諦めた。もしかしたら、あの絵を渡した誰かのことが分かれば、シオンハイトがわたしのことをここまで構ってくる理由が分かると思って、記憶を取り戻したかった。でも、もうオアセマーレに戻れることはないだろうし、仮に思い出しても情報を得るのは難しいかな、なんてここ数日考えていたからだろうか。
「――ずずっ」
風邪を引いていることに、気が付かなかったのは。
鼻水が垂れそうな感覚がして、鼻をすすったが、完全に詰まってしまって、どうしようもない。そして、ティッシュで鼻をかもうとしても、出てこない。最悪だ。
思い出そうとすると頭が痛くて、ここ最近はずっとそんな感じだったから、頭痛が慢性化していることに気が付くのが遅れた。何も考えていないときでも頭が痛い、と気が付き、もしかして何か食事に毒が、と最初は思ったけれど、すぐに喉の痛みと鼻水、妙な寒気が襲ってきて、風邪だということに気が付いた。
そんなわけで、昨日から、わたしは一人でベッドに横たわり、現実と夢の中をうろうろしていた。
一応、医者と紹介された、犬っぽい耳としっぽを持った、白衣のおばあさんに診察されて、風邪、と言われた。普段だったら、本当に医者なのか、とか、疑いもするけれど、この症状はどうしたって風邪にしか思えないし、疑ってかかる体力と気力が残っていなかった。
オアセマーレにいた頃は、薬なんて飲んだことがなかった。体調を崩したことはあるものの、怪我も病気も全て『異能』で治すのだ。だから、オアセマーレは医療という分野がかなり遅れている。『異能』でパッと治せてしまう分、研究することがないのだ。
だから、薬なんて、せいぜい二日酔い対策に作られた薬草のスープか、食べすぎたときのための消化を早める薬草汁が関の山。『異能』による治療や、その二つ以外では、本当に効果があるのかも分からない民間療法が幅を利かせている。
「どうしてオアセマーレに薬がないの!?」とシオンハイトに泣きつかれたのは記憶に新しい。というか、ついさっきのことだ。リンゼガッドの薬では、わたしが安心して飲めないだろうと、オアセマーレから風邪薬を取り寄せようとしたシオンハイトに、そんなものはない、とわたしが言ったのだ。
医者らしいおばあさんは、薬を用意する、と言われたけれど、わたしにとって薬は毒と区別のつかない摂取したくないもの。絶対に飲みたくないと、ごねて、結局寝て治すということになり、今にいたる。
「――う、ずずっ」
鼻の通りが悪いのは分かっているのに、思わず鼻をすすってしまう。その音が、妙に部屋で響いた気がした。
今日は、シオンハイトはこないらしい。今が何時かは分からないが、随分と、部屋が静かなままだ。
ずっと、思い出せるかも、と考えて、そのたびに頭痛がして、最終的には諦めた。もしかしたら、あの絵を渡した誰かのことが分かれば、シオンハイトがわたしのことをここまで構ってくる理由が分かると思って、記憶を取り戻したかった。でも、もうオアセマーレに戻れることはないだろうし、仮に思い出しても情報を得るのは難しいかな、なんてここ数日考えていたからだろうか。
「――ずずっ」
風邪を引いていることに、気が付かなかったのは。
鼻水が垂れそうな感覚がして、鼻をすすったが、完全に詰まってしまって、どうしようもない。そして、ティッシュで鼻をかもうとしても、出てこない。最悪だ。
思い出そうとすると頭が痛くて、ここ最近はずっとそんな感じだったから、頭痛が慢性化していることに気が付くのが遅れた。何も考えていないときでも頭が痛い、と気が付き、もしかして何か食事に毒が、と最初は思ったけれど、すぐに喉の痛みと鼻水、妙な寒気が襲ってきて、風邪だということに気が付いた。
そんなわけで、昨日から、わたしは一人でベッドに横たわり、現実と夢の中をうろうろしていた。
一応、医者と紹介された、犬っぽい耳としっぽを持った、白衣のおばあさんに診察されて、風邪、と言われた。普段だったら、本当に医者なのか、とか、疑いもするけれど、この症状はどうしたって風邪にしか思えないし、疑ってかかる体力と気力が残っていなかった。
オアセマーレにいた頃は、薬なんて飲んだことがなかった。体調を崩したことはあるものの、怪我も病気も全て『異能』で治すのだ。だから、オアセマーレは医療という分野がかなり遅れている。『異能』でパッと治せてしまう分、研究することがないのだ。
だから、薬なんて、せいぜい二日酔い対策に作られた薬草のスープか、食べすぎたときのための消化を早める薬草汁が関の山。『異能』による治療や、その二つ以外では、本当に効果があるのかも分からない民間療法が幅を利かせている。
「どうしてオアセマーレに薬がないの!?」とシオンハイトに泣きつかれたのは記憶に新しい。というか、ついさっきのことだ。リンゼガッドの薬では、わたしが安心して飲めないだろうと、オアセマーレから風邪薬を取り寄せようとしたシオンハイトに、そんなものはない、とわたしが言ったのだ。
医者らしいおばあさんは、薬を用意する、と言われたけれど、わたしにとって薬は毒と区別のつかない摂取したくないもの。絶対に飲みたくないと、ごねて、結局寝て治すということになり、今にいたる。
「――う、ずずっ」
鼻の通りが悪いのは分かっているのに、思わず鼻をすすってしまう。その音が、妙に部屋で響いた気がした。
今日は、シオンハイトはこないらしい。今が何時かは分からないが、随分と、部屋が静かなままだ。
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