29 / 89
29
しおりを挟む
病み上がりだからなのか、それとも『異能』でいじられた記憶の中にその答えがあるのか、一瞬では判断できない。それでも、わたしが頭痛を起こしているとシオンハイトに悟られれば、話の腰が折れてしまうのは分かり切っているので、わたしは彼に気が付かれないよう、話の続きをうながした。
「それで、わたしの『異能』にも変化がないか、ってこと?」
わたしの質問に、シオンハイトが首を立てに振る。
言われてみれば、わたしの『異能』は、長いこと使っていない。それこそ、こちらに来てからは一度も。
でも、長い間『異能』を使用しなかったからといって、使い方を忘れるわけじゃない。呼吸や瞬きの仕方を忘れないのと一緒だ。
「――……。……」
わたしは少し迷って、近くにあった紙ナフキンをとり、パッと『異能』を使う。真っ白だった紙ナフキンが、白黒の横縞模様に変わる。……うん、普通にいつも通り。一応、もう一度『異能』を使って黒い部分に白を重ねてみたけれど、元の白には戻らず、黒い部分が透けて見える灰色になってしまった。ディナーシャが本物にそっくりな偽札を作れるようになったのなら、わたしは色を変えることができるようになるのかと、少し期待してしまったが、結局は前と変わらない。
「わたしの方は特に変わりない――」
少しだけ落胆しながらも、紙ナフキンをシオンハイトに見せようとしたら、きらきらとした目でわたしの手の中を見ていた。
「すごい! 『異能』ってこんなふうになるの? ちゃんと見たの、初めて!」
凄い凄い、と子供の様にはしゃぐシオンハイト。……たかが、ちょっと紙ナフキンの色を変えただけなのに。事前に仕掛けておけば、手品でも全く同じことができてしまいそうな、ハズレ『異能』。
そのはずなのに、シオンハイトの反応を見ると、まるで自分がアタリ『異能』に恵まれたような錯覚に落ちいる。
「こ、こんなの、たいしたことないし……」
わたしはくしゃっと紙ナフキンを握りつぶした。「あっ」とシオンハイトが声を上げる。残念がっているような声に聞こえた。
「いらないのなら欲しかった……」
ただの紙ナフキンなのに。紙ナフキンが欲しいのなら、シオンハイトの近くにもある。ずらりと並べられたお菓子と一緒に、わたしたちが各々取りやすい位置に置かれているのだ。
「……もう、ゴミだよ」
『異能』で色を載せたから、紙ナフキンとして普通に使えるが、ぐしゃぐしゃにしてしまったので、新しい物の方が使えるだろう。
そう思ったのに、「ゴミじゃないよ!」とシオンハイトは言った。
欲しいな、という無言のおねだりに負けて、わたしは丸めた紙ナフキンを軽く伸ばして、彼に渡した。
「それで、わたしの『異能』にも変化がないか、ってこと?」
わたしの質問に、シオンハイトが首を立てに振る。
言われてみれば、わたしの『異能』は、長いこと使っていない。それこそ、こちらに来てからは一度も。
でも、長い間『異能』を使用しなかったからといって、使い方を忘れるわけじゃない。呼吸や瞬きの仕方を忘れないのと一緒だ。
「――……。……」
わたしは少し迷って、近くにあった紙ナフキンをとり、パッと『異能』を使う。真っ白だった紙ナフキンが、白黒の横縞模様に変わる。……うん、普通にいつも通り。一応、もう一度『異能』を使って黒い部分に白を重ねてみたけれど、元の白には戻らず、黒い部分が透けて見える灰色になってしまった。ディナーシャが本物にそっくりな偽札を作れるようになったのなら、わたしは色を変えることができるようになるのかと、少し期待してしまったが、結局は前と変わらない。
「わたしの方は特に変わりない――」
少しだけ落胆しながらも、紙ナフキンをシオンハイトに見せようとしたら、きらきらとした目でわたしの手の中を見ていた。
「すごい! 『異能』ってこんなふうになるの? ちゃんと見たの、初めて!」
凄い凄い、と子供の様にはしゃぐシオンハイト。……たかが、ちょっと紙ナフキンの色を変えただけなのに。事前に仕掛けておけば、手品でも全く同じことができてしまいそうな、ハズレ『異能』。
そのはずなのに、シオンハイトの反応を見ると、まるで自分がアタリ『異能』に恵まれたような錯覚に落ちいる。
「こ、こんなの、たいしたことないし……」
わたしはくしゃっと紙ナフキンを握りつぶした。「あっ」とシオンハイトが声を上げる。残念がっているような声に聞こえた。
「いらないのなら欲しかった……」
ただの紙ナフキンなのに。紙ナフキンが欲しいのなら、シオンハイトの近くにもある。ずらりと並べられたお菓子と一緒に、わたしたちが各々取りやすい位置に置かれているのだ。
「……もう、ゴミだよ」
『異能』で色を載せたから、紙ナフキンとして普通に使えるが、ぐしゃぐしゃにしてしまったので、新しい物の方が使えるだろう。
そう思ったのに、「ゴミじゃないよ!」とシオンハイトは言った。
欲しいな、という無言のおねだりに負けて、わたしは丸めた紙ナフキンを軽く伸ばして、彼に渡した。
5
あなたにおすすめの小説
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!
カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から20年前の物語となります。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる