異世界転移して冒険者のイケメンとご飯食べるだけの話

ゴルゴンゾーラ三国

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第二部

35 元社畜と少年-14

 ここにいるつもりがある、という意思表示のために店を持つことに決めてはや一週間。わたしは開店のために準備を始めていた。
 物は客に持って来てもらうし、鑑定はわたしが魔法でちょちょいと見るだけ。備品として必要なものは、待合用の椅子くらいだ。後々、あれもあった方がいいな、これもいるかな、となるかもしれないが、今のところ思いつくのはこのくらい。

 資格として必要なのは、既に鑑定者として資格を持っている人間に、わたしが本当に鑑定魔法を持っているという証明をしてもらうだけなので、特別勉強することもない。店を開くにあたって開業届を提出する必要もあるらしいが、鑑定魔法持ちである証明書を貰う場所と同じところで手続きができると、ギルド長に教えてもらった。

 ――ということで、わたしはこの街の、役場に来ていた。
 役所、というのはどこも似たようなものなのか、内装こそ異世界風情あふれる建築になっているのだが、雰囲気というか空気感というか、そういうものは元の世界の市役所と大差ない。

「――三十五番の方」

 わたしの番号を呼ばれ、窓口の方へと行く。開業届は書類を書いて終わりだったが、鑑定魔法をかけてもらうには少しばかり待ち時間が発生する。両方合わせて半日で終わりそうなので、事業を始める準備としてはかなりのスピードだとは思うが。わたしはずっと雇われの人間だったから相場が分からないけれど、初期費用がほとんどいらなくて、準備するものもほぼない状態では、こんなものなのだろうか?

「こんにちは。ぼくが本日貴女に鑑定魔法をかける鑑定者になります」

 にこ、とわたしに笑いかけてくれた鑑定者さんは、人当たりがよさそうで、優し気な青年だった。多分、わたしより何歳か年下だと思うが、そうとは思えないほど落ち着いた態度である。

 わたしより年下なのに、普通に役所で立派に働いてるんだなぁ……。
 ちくり、となぜか罪悪感のようなものを抱いてしまう。
 こう考えると、やっぱり店を持って、ある意味良かったのかもなあ。別にその日暮らしの生活が駄目だとは思わないが、わたしには合わないのかもしれない。社畜根性が染みついているのか、どうしても定職の方がいいような気がしてしまうのだ。

「こちらの部屋のお席にお座りください」

 鑑定者さんに案内され、わたしはとある一室に入る。狭い一室は、二畳もないだろう。ちょっとした机と、椅子があるだけ。元の世界で役所に行くとよく見かける、相談ブースみたいな場所が完全に個室になった感じにしか見えない。
 わたしが入口近くの椅子に座ると、鑑定者さんが机を挟んで奥の椅子に腰を下ろす。

「今日は鑑定書発行資格の取得と聞きました。一応、既に同意書を書いていただいていると思いますが、取得している五次魔法以外のものも見えてしまう可能性があります。そこはご了承ください」

「あ、はい。大丈夫です」

 すでにその辺りは説明をされている。これも形ばかりの確認だろう。

「では、失礼しますね」

 鑑定者さんが、わたしと彼の間に手を置き、すいすい、と軽く手を動かす。
 同じく鑑定魔法を使えるわたしにはなんとなく分かるが、わたしのステータスを今見ているのだろう。

「はい、鑑定魔法の方、確認でき――……ん?」

 にこやかだった鑑定者さんの顔が少し固まる。ピタリ、と彼は手を止めた。
 え、何か問題でもあったのかな?
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