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第二部
38 元社畜と少年-17
まだ少年が依頼へ向かってから三週間ちょっとしか経っていない。早くて一か月、と言っていたくらいだから、流石にもう少しかかるだろうと思っていた。さらにそこからまくなんてできるのか? 幻聴?
しかし、聞き間違いではなかった。
「おねーさん、ただいまっ!」
声を弾ませ、わたしの前に立つのはまぎれもなく少年だ。冒険者ギルドからそのままここへ来たのか、少年はちょっと汚れている。でも、どこか大怪我をしている、ということはなさそうだ。無傷、というわけではないけれど、軽くガーゼを貼るだけで済むような怪我がほんの数か所、という感じ。
「お、おかえり……? え、もう帰ってきたの?」
もしかして失敗して、途中で帰ってきたの? という考えも一瞬よぎったが、そうでないことは、少年の顔を見れば明らかだ。こんな、にっこにこで帰ってきたのだから、いい結果になったに決まっている。
「おねーさんに早く会いたくて、頑張ってきちゃった」
「そ、そっかぁ……」
頑張った、で、どうにかなるものなのだろうか? 仮にもランク昇格試験を兼ねた依頼なわけでしょ? しかも最上位ランクの。
少年、こわ……すご……。
きらきらと、期待しているような目でこちらを見てくるので、「少年は凄いね」と言いながら頭を撫でる。正解だったのか、少年は、ほんのりと顔を赤らめ、にまにまと口元をさらに緩めた。
「ギルド長のおっさんから聞いたよ。おねーさん、鑑定のお店開くんだって?」
「うん、丁度今から開店するところ」
わたしは店先に看板を出し、木札のオープン・クローズを表すサインプレートをオープンが表になるようにひっくり返す。
「じゃ、じゃあ、これ! これ鑑定して!」
少年が、背負っていた鞄から麻袋を取り出す。そこそこな大きさだ。キャベツくらい入りそう。
わたしは少年からそれを受け取る。……ちょっと重い。よくもまあ、これを軽々と片手で持てるものだ。
「お、じゃあ少年がお客さん第一号だね」
「……! うん!」
わたしは少年から受け取った麻袋を両手で持ち、店の中へと入る。カウンターにそれを置くと、カウンターの内側へ。
「そこの椅子、好きに使って」
わたしは壁際に並べられた椅子を指さす。待合用の椅子だ。本当はソファとかが良かったんだけど、店のサイズ的にもわたしの懐事情的にも、大きくてふかふかのソファをドーン! とは置けなかった。
「……おねーさんさえよければ、鑑定してるところ、見てもいい?」
「わたしはいいけど……」
帰ってきたばかりで疲れているんじゃないだろうか? と思ったけれど、当の本人が見たいと言うのなら、別にわたしは構わない。
「やった」と小さく声を上げ、カウンターに寄りかかる少年の横で、わたしは麻袋を開ける。
中に入っていたのは……宝石?
しかし、聞き間違いではなかった。
「おねーさん、ただいまっ!」
声を弾ませ、わたしの前に立つのはまぎれもなく少年だ。冒険者ギルドからそのままここへ来たのか、少年はちょっと汚れている。でも、どこか大怪我をしている、ということはなさそうだ。無傷、というわけではないけれど、軽くガーゼを貼るだけで済むような怪我がほんの数か所、という感じ。
「お、おかえり……? え、もう帰ってきたの?」
もしかして失敗して、途中で帰ってきたの? という考えも一瞬よぎったが、そうでないことは、少年の顔を見れば明らかだ。こんな、にっこにこで帰ってきたのだから、いい結果になったに決まっている。
「おねーさんに早く会いたくて、頑張ってきちゃった」
「そ、そっかぁ……」
頑張った、で、どうにかなるものなのだろうか? 仮にもランク昇格試験を兼ねた依頼なわけでしょ? しかも最上位ランクの。
少年、こわ……すご……。
きらきらと、期待しているような目でこちらを見てくるので、「少年は凄いね」と言いながら頭を撫でる。正解だったのか、少年は、ほんのりと顔を赤らめ、にまにまと口元をさらに緩めた。
「ギルド長のおっさんから聞いたよ。おねーさん、鑑定のお店開くんだって?」
「うん、丁度今から開店するところ」
わたしは店先に看板を出し、木札のオープン・クローズを表すサインプレートをオープンが表になるようにひっくり返す。
「じゃ、じゃあ、これ! これ鑑定して!」
少年が、背負っていた鞄から麻袋を取り出す。そこそこな大きさだ。キャベツくらい入りそう。
わたしは少年からそれを受け取る。……ちょっと重い。よくもまあ、これを軽々と片手で持てるものだ。
「お、じゃあ少年がお客さん第一号だね」
「……! うん!」
わたしは少年から受け取った麻袋を両手で持ち、店の中へと入る。カウンターにそれを置くと、カウンターの内側へ。
「そこの椅子、好きに使って」
わたしは壁際に並べられた椅子を指さす。待合用の椅子だ。本当はソファとかが良かったんだけど、店のサイズ的にもわたしの懐事情的にも、大きくてふかふかのソファをドーン! とは置けなかった。
「……おねーさんさえよければ、鑑定してるところ、見てもいい?」
「わたしはいいけど……」
帰ってきたばかりで疲れているんじゃないだろうか? と思ったけれど、当の本人が見たいと言うのなら、別にわたしは構わない。
「やった」と小さく声を上げ、カウンターに寄りかかる少年の横で、わたしは麻袋を開ける。
中に入っていたのは……宝石?
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