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第二十四話 レジオの復興 ⑨
しおりを挟む「ユフラテ、やったなおい!」
ギルドマスターは、俺の肩をゆすって大声で言った。
若干額が後退しているが、本人は気にしているので言わない。
「おいおい、なんだよ。」
「叙爵だって?大した出世じゃないか。」
「バカ言え、まだ分かった話じゃないよ。王宮に行って、爺様たちにイヤミ言われて終わりってこともある。」
「ううむ…冷めてるな。叙爵といえば冒険者の夢だぞ。」
「それだけ、気持ちの悪いところだってことさ。」
「ふうん、それで?今日はなんだ?」
「ああ、レジオで獲ってきた魔物だけどさ、どうする?ここで出すかい?」
「一万匹をか?」
「いや、二五〇〇はヘルム爺さんにくれてきたから、残り七五〇〇。それにオークキングにオークロードにトロール。」
「鬼かおまえは!」
「鬼はオークだろうに。買い取りしてくれないのか?」
「そんな大量に買い取って、どうしろと言うんだ。この町は二万人しかいないんだぞ。」
「じゃあどうすればいい?」
「そうだな、紹介状書いてやるから、王都のギルドで売ってこい。あそこなら十五万人いるからだいじょうぶだろう。」
「なんだかなー、オークキングとか、ここで卸してやろうか?」
「そうだな、半分でいい。ワイバーンも出せよ。」
「ハーピーとか、いろいろレアもんがあるぜ。」
「このやろう、大儲けじゃねえか。」
「そう言やあ、冒険者レベルはEとかに上がるんか?」
「Eどころじゃねえよ!王都からBに上げろって言ってきた。」
ギルドマスターは、両手を広げて笑っている。
「はあ?そこまでじゃねえだろ、たかが一万匹で。」
「バカ言え、一人で一万匹だぞ、おれならA付けるか、AA付けるわ。」
「へえ~。」
「今のマゼランで、お前に勝てる奴なんざ居やしないよ。」
「うへ、やりすぎたか…」
「まったく…、コステロ!仕事だ!」
いや~売れた売れた、オークロード十匹、一匹当たり百二十貫で、銀板一枚半×一〇匹=十五枚ってことは、金貨1枚と半分。(四百五十万円)
ワイバーンは、二八〇貫なので、銀板一枚と銀貨六枚と銅版八枚。(五十万四千円)
オークキングとトロールは王都で売ることにした。
ゴブリンは、いつでもいいや。
ふところがあったかくなったので、ほくほくしてチグリスの家に戻った。
「ティリス、アリス、仕度しろ買い物に行くぞ。」
「ほえ?なんですか?」
「なんでしょう、カズマさま。」
「みんなで王都に行くんだ、そんなくたびれたローブじゃダメだろ。新しいのを買いに行こう。」
「え~、このローブは支給品ですよ。」
「教会から支給されているものですから、町では売ってませんよ。」
「じゃあ、教会に言って新品をもらおう。それから、ラルとウォルフ!」
「おう。」
「はい。」
「お前たちも、いい服と防具をそろえる。ナイフもいるな、武器屋にも行こう。町に繰り出すぞ!」
「「「「はい~?」」」」
なぜかチコもくっついて、洋服屋に向かう。
さすがに、古都マゼランには、センスのいい服屋も多くてまよう。
とりあえず、ティリスとアリスに、上等な下着をあつらえる。
ドロワーズなんか、ひらひらのレースだらけだ。
「こ、こんなのつけるんですか?」
「は、派手です。」
「どうせ見る人なんかいないんだ、せいぜい派手なので行こう。」
ブラジャーなんてものはまだないが、コルセットとブラシェールなんてものがあるので、それも買い込む。
「カズマが見たいだけなんじゃないの?」
「それのどこが悪い。」
「あ、開き直った。まったく、どんな勇者よ。」
「ば~か、俺は勇者なんかにゃならねえよ。」
(やっとタイトル回収かよ!)
「スケベだもんね。」
「それと勇者にどんな関係が…」
アリスが、複雑な顔をした。
「ぼ、ぼくもですか?」
ウォルフがあせっている。
「そうだよ、お前も王都に着いてくるだろ?」
「着いていってもいいんですか?」
「いいから、いい服にしろ。と言っても、自分じゃ遠慮してしまうだろうから、店員に任せろ。」
「ええ~!」
「おねいさん、こいつにいい服選んでよ。おあしは銀貨一〇枚。」
「はい!かしこまりました。」
「ラル、おまえが一番大事だ、なんせ従者の役だからな。服だけじゃない、皮鎧もあつらえるぞ。」
「ほえ~。」
「チコ、お前もいい服を着るんだ。」
「なんであたしまで!」
みんなにいい服をあつらえて、全部ストレージに入れて意気揚々と街に出る。
街角のブラッスリーに入って、昼食を注文する。
「いや~、オークロードが思ったより高く売れたから、今日はどんだけ食ってもいいぞ。お大尽だからな。」
「またまた、そんな散在していいの?」
「ばかやろう、金貨二枚分儲かったんだぜ、一年寝て暮らせるわ。」
「うぐ、金貨二枚!」
「まだまだ稼ぐし、お前ら食べさせないとアカンからなあ。」
「食べさせてくれるの?」
ティリスはにこにこしている。
「おまえ、そのつもりだったんだろ?」
「まあ…ただ、教会もかなりめんどくさいこと言ってきた。」
「なにをさ?」
そこからアリスが口を開く。
「使徒が受肉したカズマを逃がすな、ですって。」
「あからさまに言われたわけじゃないけど、そういう内容のことを言われたの。」
「それは?」
つまり、枕営業してでも教会につなぎ留めろと言う、冷酷な命令だ。
「つまり、そういうことよ。あたしとアリスは、生贄にするって。」
「うげ、ナマグサ~。」
「私もですか?」
「そうだよ、あんたのプリンで誘惑しろってことよ。」
「プリン…」
アリスティアは、自分の胸を見下ろした。
たしかに、大きなプリンだ…
「あからさまに、そういう手を使うってことは、教会の立場が王都ではけっこう綱渡りってことかね?」
出てきた料理をみんなでつつきながら、今後のことを話した。
「そうかもね、教会庁の総主教さまだって、権力があるわけでもないし、所詮は民衆の信仰がたよりだもん。」
いやでも、レジオの司祭なんか、けっこう貯め込んでたぞ。金貨三枚もあったし。
「そうか、そりゃあ困ったもんだな。」
「ま、行って見ないと、どんな状況かはわからないし、どんなお願いされるかもわからないわ。」
「は~、出たとこ勝負ってのが、いちばん対応に困るんだよ。どんな対応するか、決めてねえと動きがおそい。」
「まあね、なにが正しいかわかんなくなるものね。」
「そう言うこと。だれが味方か敵か、判断できない。」
「そう言うのは、顔に出ますよ。」
アリスが、急に言い出した。
「まあな、いやらしい顔してるやつは、信用できないってもんだな。」
あ~あ、面倒はしょい込みたくないなあ。
王都なんか行かずに、バックレてやるか~?
「いま、不穏なこと考えたでしょ。」
「え?いえいえそんな。」
「ほら、考えてた。まったく油断も隙もありゃしない、アリス、そっち押さえててね。こいつ、バックレようと思ってたわよ。」
「え~、逃げるんですか~?そういう時は、私たちも連れて行ってくださいね!」
「そ、そういう問題じゃないんですけど!」
「でも~、置いてきぼりにされると、私たちごはんも食べられませんよ。」
「それもそうか、じゃあ逃げるときはみんな一緒ってことでヨロ。」
はあ~、しゃあねえなあ。
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