さきのない恋だとしても

真憂

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来る者拒まずな彼の結婚しない宣言

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「…ただいま」

「……」

「ただいま!」

「わーびっくりした。おっつー」

私のこの世で一番大事な人であり、彼氏兼居候の啓は大きく瞬きをしてゲームから目を上げる。今日もゲーム三昧の一日だったようだ。啓は筋金入りのゲーマーだ。課金をしまくって破産するようなことはないが、食う寝る風呂、たまに私とイチャイチャ以外はずっとゲームをしている。よくもまあそんなにやることがあるものだと感心する程だ。正直たまにゲームに嫉妬する。

ゲーム好きで居候癖、というとダメ男のイメージで、DVやギャンブルで金をせびられるなど心配されるが(主にカエデ)啓は一切そういうことはなかった。むしろ…

「洗い物、やっといてくれたの?」

「暇だったから。きぶんてんかん。」

家事、できるんだよな…こういう時、押し寄せてくる願望がある。少し打算的で、でも女としては自然な欲求。

「ねえ、啓。」

「ん?」

「私と本当に結婚するつもりないんだよね?」

「ないよー」

あっさり私に現実を突き付けてくる啓。こんなに簡単に私を絶望の底に落とせる人は彼以外いないだろう。

「カエデちゃんっしょ」意外と察知能力は高い。

「あの娘も世話焼き気質っーか、おせっかいっーか。でも、俺は人生で一回も、誰とも、結婚するつもりはない。責任を負いたくない。でも美智留のことは好きだから一緒にいたい、OK?」

OKな訳がないだろ、と思いながら返事はせず話題を変える。

「…夕飯どうする?」

「コンビニでいいっしょ-」

「うん!コンビニ行こうか。」

コンビニ飯なの?という不満よりも2人でコンビニに行く楽しさの方が勝った。好きな人とコンビニって何でこんなに楽しみなんだろう。ラブホの高揚感と少し似ている気がする。夜中だと特に。

「行こうぜー」

「うん…」アレも買うのかな。

啓と連れ立って私のワンルームアパートを出る。啓は一応バイトをしている。居候代として、家賃と生活費も出している。

だからこれは同棲なのだ…と思いたい。しかし住所を自分のボロアパートからうつしてないし、設備が私の家の方が整っていて居心地が良いから私の家にいるだけだろう。だから同棲とは呼べない。あくまで居候だ。そんな曖昧さ。

…なんか、良く言えば青臭い、ありのままな関係だと思う。お互いに好きだから2人でいるだけ。将来性など一切無し。啓のそういう純粋なところも好きなのだが。

そろそろ寒さが厳しい季節になってきた。「冬が寒くって本当に良かった~」好きなバンドの歌詞になぞらえて啓の上着のポケットに手を突っ込んでみる。啓は来る者拒まずといった感じで握り返してきた。来る者拒まず。啓は基本的にそういう体質だ。だから居候を繰り返しているのだろうか。そうこうしているうちにコンビニについた。

ふとコンビニの店内で目をやると、啓が避妊具のコーナーにいた。小さく手招きされる。

「…いつものでいいっしょ?」

「…りょ。」

そういうことになるんだろうな、それは構わない、というか嬉しいのだが店員さんの視線が気になる。コンビニで一番気まずい瞬間だ。

何度かコンドームに穴を開ける事を考えた事がある。それで結婚してくれるならと。しかし何かが私を止めるのだ。倫理観、ではない。もっと2人の関係性の真ん中の問題。これも上手く言語化できないけど。
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