さきのない恋だとしても

真憂

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別れて早々、イケメンのアタック?

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それからは仕事、仕事で啓のことは忘れようと努めていた。カエデは喜んでくれた。別れてからというものやたらと合コンに誘ってくるが、私は合コンで合う男性と出会った試しがないので断っていた。ふと啓と出会った時の事を思い出す。

場所は高円寺のライブバーだった。楽器が置いてあってお客さんはお酒を飲みがてら、誰からともなくそろそろやるか~、と音出しを始める。そして自然とセッションが始まる。その中で地味にベースを弾いていたのが啓だった。目立たなくはあるが、どっしりとした存在感でバンドの底をしっかり支えていた。

私は聞く専門だったが、自分の好きなバンドの曲をマスターの厚意で流してもらったり、自分で持ってきたマイナーな音楽映画を観てもらったりしていた。客の層は洋楽が好きな中年層の男性が多く、唯一邦楽に詳しかったのが啓だった。誰に言っても「知らない」で終わらせられてしまう私の好きなバンドを「あ~、あれね。俺の聞いた感じだと…」と会話ができた。始めての経験だった。店の中では比較的若め同士だったこともあり、すぐに連絡先を交換する程仲良くなった。そして一線を越えて、居候に至る。

「そこ!ボーッとしてるぞ!」部長の一喝が飛ぶ。

「すみません」私は謝り、仕事仕事…と心の中で唱える。

「まあまあ、部長もちょっと怒りすぎですよ。崎山さんは最近色々あったんだし…」そう言う彼は間宮優一。同期だが役職は私より上。笑うと顔がくしゃっとなって笑いじわが優男風な雰囲気を醸し出している。そして女の勘で分かるが多分私に気がある。そもそも何故彼氏と別れたことを知ってるのだろう。…多分女子社員の誰かだな。間宮優一は人気あるし。まあイケメンの部類に入るだろう。

啓は…イケメンかどうかは評価が人によって分かれる感じの顔立ちだ。眠そうだが切れ長の奥二重とか、中途半端に高めの鼻とか、口角が下がってる口元とか、味のある顔立ちだと私は思っている。

は…いかん、部長が睨んでいる。仕事、仕事…

「崎山さん、何か悩んでるんじゃないですか?」間宮優一が私の顔を覗き込んでくる。

「俺で良ければいくらでも話聞きますよ。」 
屈託のない笑顔で話しかけてくる間宮優一。邪気の一切ないその態度に、学生時代から色んな人に好かれ、モテ、愛されて育ってきたんだろうなあと想像する。不健全さが一切ない。そんな人が何故私なんかに興味を持つのだろう。

…本人に聞いてみないと分からないか。最近暇だと啓の事を考えて泣きそうになるし、渡りに船かな。

「ありがとうございます。話聞いてもらえますか?」それだけで間宮優一は破顔し、ガッツポーズしそうな勢いだ。本当に何故そんなに私にご執心なのだろう?

「よし!じゃあ飲みに行きましょう!場所とか日にちとか決めちゃって大丈夫?」

「はい」

「楽しみだなぁ~崎山さんとずっと話したかったんだよなぁ~」鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で間宮優一は去っていった。…不思議な人だな。女には不自由してないだろうに。あれだろうか。定番どころのハンバーグ的な女は食べ飽きちゃったのかな?それでたまには珍味を味わいたくなった的な…

「崎山君、減給…」

「すみません!」仕事は大事だよ~とアフラックの替え歌で今日も乗り切る。間宮優一と今後どんな感じになるのかまだ少し考えながら。
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