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13. 21→25日目
しおりを挟む「レイスの魔法が生活の質を上げていく……」
食卓という名の岩の上で、じゅうじゅうと焼けるキノコ。黒い岩に光魔法を集中して当てると、フライパンに早変わりした。
木の枝を使ってひっくり返し、両面をこんがりと焼く。
「そろそろいいんじゃないかな?」
「そうね。いただきます」
大きな葉っぱの上に移して、ふーふーと冷ましてから、かじった。
「っ……美味しい~~っ」
毒々しい鮮やかな黄色のキノコは、焼いただけでバターを使ったようにじゅわっとした甘さが口の中に広がる。
しょっぱくてほろ苦くて甘い山菜と一緒に食べると、ソースをかけているようで贅沢だ。
「こっちもいいかしら」
コロコロ転がして焼いていた楕円形の芋を、少し冷まして二つに割る。皮は赤かったのに、中は黄金色だ。
「んっ、あまーいっ」
じゃがいもとは違って、しっとりして甘い。
「レイス、天才っ、ありがとうっ」
「どういたしまして。君って本当に美味しそうに食べるね」
「だって美味しいんだもの」
食べる手が止まらない。そんな私を、レイスは嬉しそうに見つめていた。
そんな食事をここ数日、毎食食べている。雨の日は洞窟でレイスと話しながらゆったり過ごせるし、伯爵家にいた頃とは比べものにならないほどに幸せだ。
魔物もあの日以来現れない。レイスは日に何度も木の上まで飛んで、周囲を警戒してくれている。
(レイスは、本当に幽霊なのね)
ふわふわと浮かんで下りてくる姿を見ると、改めて彼が生きていないのだと実感した。
「ずっと気にはなってたけど……アリィは、友達はいなかったの?」
「いたわよ。一人だけね」
「そっか……どんな人?」
「私と同じ伯爵令嬢で、ローラっていうの。女神様みたいに優しかったわ」
思い出すと、懐かしさで目の奥が痛んでしまう。
父が再婚するまでは、他にも友達がいた。後で気づいたことだけど、その友人たちの手紙やお誘いを、義母が全て断っていた。社交界では酷い噂を流されて、そのうちに友人は誰もいなくなってしまった。
「社交界で、私が義妹を虐げてるって噂を義母と義妹が流してて」
「何それ、どういうことだよ」
「怒ってくれてありがとう、レイス」
私も未だに怒りは消えない。愚かだった自分に対してもだ。
でも、今の私にはこうして怒ってくれる人がいる。あの頃もローラが怒ってくれたから、私は心が折れずにいられた。
「ローラはその噂を逆手にとって、私と友達でい続けてくれたの」
そう言うと、レイスは「どういうこと?」と首を傾げた。
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