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第一章 魔法学校入学前
04.傭兵
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傭兵の基地。
傭兵として生きる『ガルド・フェルメス』の人生は過酷だった。
貧しい平民の生まれ、その日の食事すらままならない生活。
子供は金を稼ぐ手段。
労働の道具。
だがその道具にも費用が掛かる。
三男坊として産まれたガルドは、兄達と比べて身体が小さく、ロクに働けない。
なのに食費は掛かる。
両親や兄達からすれば、自分達の食い扶持を減らす、やっかみがられる存在でしかない。
だから『数ベらし』と称し、物心つく頃には両親に売られた。
売られた先は奴隷市。
それを管理する奴隷商人。
各国には『奴隷制度』が存在する。
奴隷は言わば〝物〟だ。
同じ人間では無い。
イカれた制度。
他種族ではその様な制度は無いのだから。
やはり人間はイカれている。
血を分けた子供を売り飛ばす両親は特に。
ガルドの取引価格は銅貨3枚。
その日の食事程度の金額。
ガルドはその泡銭で売り飛ばされた。
身包み剥がされ、汚い布一枚。
動物の様に鎖で繋がれ、檻に入れられる。
水浴びは無し。
食事は1日に一度切り。
家畜が喰らう様なハエが集る腐ったパンと、泥水。
それらは鼻がひん曲がる様な激臭。
泥水の入った入れ物は、犬が使う様な入れ物。
だがガルドは生きる為に餌を喰らう。
獣の様に生にしがみつく。
胃が拒絶反応を示し吐き気を催すが、無理矢理胃に流し込む。
その日は激痛で一日中眠れなかった。
それを繰り返す内に耐性が付く。
『体内に毒の抗体が作られた』と言えば分かり易い。
それからはタダ只管チャンスを待った。
耐え忍ぶ戦い。
チャンスを掴む為に〝従順な奴隷〟を演じる。
自我を失った奴隷を。
心の奥底に確かな反抗心を宿しながら。
そしてその生活を繰り返して数年の時が経った時、目の前にチャンスが訪れた。
ガルドの飼い主が現れたのだ。
本来奴隷を購入する際、飼い主との間に契約魔法を施す。
飼い主の命令に逆らえず、飼い主の命を狙えない.........従順になる処置を。
だがそれが千載一遇のチャンス。
契約魔法。
それを行使するにはお互いの血が必要不可欠。
血を得る際にはナイフを使う。
現に他の奴隷の時はそうだった。
奴隷商人は指先を切る為に、奴隷に近づく。
ならその時ナイフを奪い、奴隷商人を殺し、繋がれた鎖の鍵を奪えば、脱出は不可能では無い。
相手は油断してるのだから尚更。
そう思っていた。
だが考えるのと実行に移すのとでは難易度が段違い。
ガルドは緊張の余り、ナイフを掴み損ねる。
千載一遇のチャンスを取り逃す。
それからは最悪だ。
毎日ボロ雑巾の様に扱き使われ、悪戯に殴られる。
水浴びも許可され、食事もマシになったが、傷跡が増える一方。
死んだ方がマシだと思える生活だが、主人の命令で死ぬ事も許されない。
正しく生き地獄。
意味もなく命を繋ぐ日々。
だがそれが3年続いた時、目の前に神が舞い降りた。
飼い主が突如目の前で悶え苦しみ、そのまま息絶えたのだ。
心臓麻痺。
俺は突然の好機に慌てふためく。
持てる限りの金貨を持ち、逃亡。
ようやく地獄から解放された。
だが金貨も数年で底を尽きる。
それからはその日の食事と宿代を稼ぐ為に盗みを働く日々。
それを繰り返してるうちに、盗人としての才を見込まれ、傭兵団に拾われた。
そこで俺は2年間下っ端で働き、雑務をこなし、下済みを重ねる。
頭領の信頼を買う。
そして10年の月日を得て、『先代の頭領が引退する』と同時に、ガルドは頭領に任命されたのだ。
傭兵団体を纏め上げる頂点に。
「頭領、準備が整いやした」
身長の低い無精髭の男、見かけは盗賊にしか見えない『ザフ・ランドリー』がガルドに報告する。
「御苦労」
労いの言葉を掛けると.......
「しかし今回の依頼美味しいですね」
ザフは欲望を隠さずに笑った。
「ふ、そうだな」
ガルドはププに同意を促す様に笑い返す。
今回の依頼内容は村の殲滅。
依頼料は金貨30枚。
相場の8倍。
前金で既に金貨10枚は貰っている。
これを聞けば、かなり美味しい案件だと分かるだろう。
勿論村の殲滅など犯罪。
でも後ろ盾がある。
良心の呵責もない。
私情など愚か。
傭兵は金さえ貰えば何でも受けよる便利やなのだから。
悪いな。村には恨みはないが、死んでもらう。
これも俺達が生活する為だ。
「しかし雇い主もおかしな野郎ですね..........まさか自分の領地を襲ってくれなんて」
そう今回の依頼主は貴族...........男爵家のブブ・ロースト。
都市ヴィ・ロストの領地主だ。
正直『自分の領地を襲って得がある』とは思えないが、ガルド達にとっては有難い。
ブブ・ローストから受け取った情報によると、都市ヴィ・ロストは辺境の村。
住民はまともに武器も扱えない。
そもそも武器すらない。
なら村の殲滅など容易い。
散歩がてらに大金が懐に舞い込む。
女の摘み食いも。
なら貴族の思惑など些細な事。
用心して依頼を蹴り、大金を掴み損ねるなど、傭兵の風上にも置けない。
「貴族の考える事など、我々傭兵には分からんよ」
ガルドはそう言って話を切り上げた。
そしてガルドを筆頭に目的地に向かう。
傭兵として生きる『ガルド・フェルメス』の人生は過酷だった。
貧しい平民の生まれ、その日の食事すらままならない生活。
子供は金を稼ぐ手段。
労働の道具。
だがその道具にも費用が掛かる。
三男坊として産まれたガルドは、兄達と比べて身体が小さく、ロクに働けない。
なのに食費は掛かる。
両親や兄達からすれば、自分達の食い扶持を減らす、やっかみがられる存在でしかない。
だから『数ベらし』と称し、物心つく頃には両親に売られた。
売られた先は奴隷市。
それを管理する奴隷商人。
各国には『奴隷制度』が存在する。
奴隷は言わば〝物〟だ。
同じ人間では無い。
イカれた制度。
他種族ではその様な制度は無いのだから。
やはり人間はイカれている。
血を分けた子供を売り飛ばす両親は特に。
ガルドの取引価格は銅貨3枚。
その日の食事程度の金額。
ガルドはその泡銭で売り飛ばされた。
身包み剥がされ、汚い布一枚。
動物の様に鎖で繋がれ、檻に入れられる。
水浴びは無し。
食事は1日に一度切り。
家畜が喰らう様なハエが集る腐ったパンと、泥水。
それらは鼻がひん曲がる様な激臭。
泥水の入った入れ物は、犬が使う様な入れ物。
だがガルドは生きる為に餌を喰らう。
獣の様に生にしがみつく。
胃が拒絶反応を示し吐き気を催すが、無理矢理胃に流し込む。
その日は激痛で一日中眠れなかった。
それを繰り返す内に耐性が付く。
『体内に毒の抗体が作られた』と言えば分かり易い。
それからはタダ只管チャンスを待った。
耐え忍ぶ戦い。
チャンスを掴む為に〝従順な奴隷〟を演じる。
自我を失った奴隷を。
心の奥底に確かな反抗心を宿しながら。
そしてその生活を繰り返して数年の時が経った時、目の前にチャンスが訪れた。
ガルドの飼い主が現れたのだ。
本来奴隷を購入する際、飼い主との間に契約魔法を施す。
飼い主の命令に逆らえず、飼い主の命を狙えない.........従順になる処置を。
だがそれが千載一遇のチャンス。
契約魔法。
それを行使するにはお互いの血が必要不可欠。
血を得る際にはナイフを使う。
現に他の奴隷の時はそうだった。
奴隷商人は指先を切る為に、奴隷に近づく。
ならその時ナイフを奪い、奴隷商人を殺し、繋がれた鎖の鍵を奪えば、脱出は不可能では無い。
相手は油断してるのだから尚更。
そう思っていた。
だが考えるのと実行に移すのとでは難易度が段違い。
ガルドは緊張の余り、ナイフを掴み損ねる。
千載一遇のチャンスを取り逃す。
それからは最悪だ。
毎日ボロ雑巾の様に扱き使われ、悪戯に殴られる。
水浴びも許可され、食事もマシになったが、傷跡が増える一方。
死んだ方がマシだと思える生活だが、主人の命令で死ぬ事も許されない。
正しく生き地獄。
意味もなく命を繋ぐ日々。
だがそれが3年続いた時、目の前に神が舞い降りた。
飼い主が突如目の前で悶え苦しみ、そのまま息絶えたのだ。
心臓麻痺。
俺は突然の好機に慌てふためく。
持てる限りの金貨を持ち、逃亡。
ようやく地獄から解放された。
だが金貨も数年で底を尽きる。
それからはその日の食事と宿代を稼ぐ為に盗みを働く日々。
それを繰り返してるうちに、盗人としての才を見込まれ、傭兵団に拾われた。
そこで俺は2年間下っ端で働き、雑務をこなし、下済みを重ねる。
頭領の信頼を買う。
そして10年の月日を得て、『先代の頭領が引退する』と同時に、ガルドは頭領に任命されたのだ。
傭兵団体を纏め上げる頂点に。
「頭領、準備が整いやした」
身長の低い無精髭の男、見かけは盗賊にしか見えない『ザフ・ランドリー』がガルドに報告する。
「御苦労」
労いの言葉を掛けると.......
「しかし今回の依頼美味しいですね」
ザフは欲望を隠さずに笑った。
「ふ、そうだな」
ガルドはププに同意を促す様に笑い返す。
今回の依頼内容は村の殲滅。
依頼料は金貨30枚。
相場の8倍。
前金で既に金貨10枚は貰っている。
これを聞けば、かなり美味しい案件だと分かるだろう。
勿論村の殲滅など犯罪。
でも後ろ盾がある。
良心の呵責もない。
私情など愚か。
傭兵は金さえ貰えば何でも受けよる便利やなのだから。
悪いな。村には恨みはないが、死んでもらう。
これも俺達が生活する為だ。
「しかし雇い主もおかしな野郎ですね..........まさか自分の領地を襲ってくれなんて」
そう今回の依頼主は貴族...........男爵家のブブ・ロースト。
都市ヴィ・ロストの領地主だ。
正直『自分の領地を襲って得がある』とは思えないが、ガルド達にとっては有難い。
ブブ・ローストから受け取った情報によると、都市ヴィ・ロストは辺境の村。
住民はまともに武器も扱えない。
そもそも武器すらない。
なら村の殲滅など容易い。
散歩がてらに大金が懐に舞い込む。
女の摘み食いも。
なら貴族の思惑など些細な事。
用心して依頼を蹴り、大金を掴み損ねるなど、傭兵の風上にも置けない。
「貴族の考える事など、我々傭兵には分からんよ」
ガルドはそう言って話を切り上げた。
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