蒙古を倒したのに恩賞がない!?故に1人の女と出会い、帝王が支配する異世界へと赴く。

オオカミ

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26 鍛錬開始

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「あっ虎吉さま、おはようございます!」

「おう、おはよう」

 今日から偉大なる魔術師サハリさまから直々に魔術を教えていただけるということで朝早く起きて、杖を持って外に出た。

 するとわたしより先に虎吉さまが鍛錬をしていた。
 虎吉さまはアートリアからギルドハウスで宿泊していたときもずっど朝早くから鍛錬をしていた。

 この人は強くなるために怠けていない。

「虎吉さますごいです。ずっと鍛錬を欠かすこと無く続けているなんて!」

「ルナどのも凄いでは無いか。いつも暇があれば何かを読んでいる。そして調べた魔術に関する事をかいているのであろう。それをもとに鍛錬しているのを見ているぞ」

「・・・わたしの場合は真面目とかじゃ無くて、怖いから必死になっているとというか・・・。世界がこれからどうなるか分からない・・・だから怖くて必死になって」

「某も時々、恐怖を感じる・・・」

「え?」

「短いかもしれんが人生生きていると、時々過去の事や未来の事を思うと考えてしまう。もしかして己は無駄な事をしているんじゃ無いかと・・・」

 以外だった。
 虎吉さまは今までの戦いを見て、自分の人生に迷い無く戦士として生きているのかと思った。
 でも虎吉さまも、人生にそんな恐怖を持っていたなんて。

「おやおや、お二人ともえらいね」

 サハリさまが現れた。
 若い魔術師の姿で縁側に足を組んで座った。

「サハリさまおはようございます」

「さぁて、今日からあたいはルナちゃんの師匠になってあげよう」

「はい!」

 サハリさまは穏やかな口調でしゃべってはいるけど、わたしは緊張している。

「何か魔術を見せておくれ」

「はっはい!」

 わたしはサハリさまの要望にこたえて呪文を唱えた。
 杖を1本のパイリウムに向けた。

「【雷矢(ライトニングアロウ)】!」

 【雷矢(ライトニングアロウ)】を飛ばした。
 矢は一本のパイリウムを貫いた。

「伸び悩んでいるね」

「はい・・・」

 幼い頃、国のために魔術を覚えようと今日まで頑張ってきた。
 でも、最近限界を感じていてその先に行けない。

「最近はどんな修行をしているのかね?」

「は、はい。魔術に関する技術書を読んで色々を試行錯誤をしてます」

 わたしは側に置いていたノートをサハリさまにお見せした。
 サハリさまはわたしがこれまで書いてきた魔術に関する考察を一枚、一枚じっくりと読んでくれた。

「ルナちゃん大したもんだね。呪文と習得方法を記述しない秘密の魔術までも情報を手がかりに推察して、自分の魔術スタイルにどう組み立てるか考えているね」

「はい、ですが・・・」

「頭の中で必死に考えたことが実現できない」

「はい・・・」

 その通り。自分なりに調べてそれを実現させるために色々と努力した。
 でも出来なかった。
 超えられない大きな壁を感じている。

「見ておきなさい」

 サハリは立ち上がると姿勢をまっすぐにして半身に構えた。そして杖を上空にかざした。

「世界の調和を守る、静かなる力よ。わたしの心に応えたまえ・・・」

 サハリの周りに風が起き、無数の光の玉が現れた。それに応えるかのように森からも無数の光の玉が現れた。

「【世界の息吹(ブレスオブザワールド)】!」

 調和魔術、【世界の息吹(ブレスオブザワールド)】でイーミーの森が光に包まれた。
 木々が大きく揺れ、光を発した。その光がサハリへ飛ぶと、サハリは白いオーラに包まれた。

「すごい・・・調和魔術をここまで高めるなんて・・・」

「魔力を高めるということは自分自身を高めること・・・あたしの言うことを素直にやるんだよ」

 サハリはルナに近づき、ルナのお尻と顎に触れた。

「骨盤は少し前傾させて恥骨を体の一直線上に乗せる。顎は重心のライン上に!」

「はっはい!」

「よし、その姿勢を絶対に崩さないで息を深く吸って」

「すう・・・・・・」

 わたしはサハリさまの言われたとおり腹の底まで息を吸った。

「ゆっくりと吐く」

「はぁ・・・・・・」

 深く息を吸うと心が落ち着く。

「あたいが良いと言うまで、姿勢を絶対に崩さないで吸って吐き続ける!」

「はい!」

 わたしはサハリさまの言われたとおり、姿勢を崩さぬようにしながら呼吸を続けた。

「兵法の修行と通ずるな」

 見ていた虎吉がつぶやいた。

「魔術も武術も一番大切なのは『己』だからね・・・ところで・・・」

「ん?」

「あんた森の中で修行しなさい」

「はい?」

「あたいはルナちゃんと2人っきりで居たいのさ。あんた邪魔。だから森の中で修行しなさい」

「あ、さよか・・・では」

 虎吉は森の中へと向かった。

「あ、そうだ」

「ん?」

「なんだったら妖精達があんたの相手をしてくれるよ」

「あい、わかった」

 虎吉は返事をすると森の中へと入っていった。

「すう・・・はぁ・・・」
 
 虎吉さまが居なくなってわたしは今サハリさまと2人っきりになっている。

「!?」

 突然、サハリさまが両手でわたしの顔に触れた。

「怖がって呼吸が乱れてる!呼吸を戻して!」

「はっはい!」

 サハリさまの眼がずっとわたしを見ている。
 その状態で言われてたとおり呼吸をずっと続けた。

 サハリさまが一歩下がった。

「そのままの状態で・・・右の手のひらをあたいに向けるんだよ」

「はい・・・」

 わたしは言われたとおりの呼吸を続けたまま右手をサハリさまに向けた。

 サ・・・

 サハリさまの右手がわたしの右手に触れた。

「・・・・!?」

 恐怖を感じた。
 サハリさまのとてつもない魔力を感じた。

「呼吸を止めるんじゃ無い!呼吸を止めたら恐怖に負けるんだよ!」

「はっはい!」

 恐怖で息をするのを忘れていた。
 わたしはサハリさまに言われたとおり、呼吸を続けた。

「あう!」

 衝撃を感じた。
 今、わたしはサハリさまの魔力に押しつぶされそうになっている。

「潰されるんじゃ無いよ!あたしの魔力に調和するんだよ!」

「は・・・はい!」

 この修行が日が傾くまで続けられた。

「よし、今日はこれまでにしようかね」

「あっありがとう・・・ござい・・・ます」

 あたしは膝をついた。

「疲れたかい?今日はルナちゃんのためにとっておきの疲労回復ご飯を作ってあげよう」

 サハリさまはそう言って家へと戻っていった。

 わたしは立てなかった。

 震えていた。
 サハリさまの魔力に比べてわたしの魔力などそこら辺の誰にも見てくれない小石程度に思えた。

 わたしは上達できるのだろうか。
 強くなりたい。

「お、そちらも終わったか?」

「あっ虎吉さま!?」

 森の奥から虎吉さまが戻ってきた。
 顔にあざを作っていた。

「妖精共らに歯が立たなかった。やつら完全に某の動きを読んでいる。必死に反撃したが、1つも当たらなかった」

 そうあざだらけになった虎吉さまは悔しそうに言っていた。
 でも眼は絶対に負けないと言っているのが見えた。

「ルナどの、いい顔をしておる」

「え?」

「その顔を見れば、明日も張り切れる!」

「ありがとうございます。わたしも頑張ります!」

「そうか・・・では立とう・・・」

 虎吉さまが手を差し出してくれた。
 わたしは虎吉さまの手を握り立ち上がった。

「虎吉戻ったのかい?」

 縁側から老婆のサハリさまが顔を出した。
 サハリさまが顔を出すとわたしたちは慌てて手を離した。

「お風呂を沸かすんだよ」

「おう」
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