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32 出航
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「虎吉さん、これを!」
朝早く、某はルナどのの杖を持って宿を出ようとした。
そのとき、マリーナどのが自分が身につけていたキッドの弟から奪い返した光りが封じ込まれた緑の宝石がついた首飾りを某の首にかけた。
「この宝石は『ハサルトの雫』って言われていて、ハサルトが泳いだ後にはこの結晶が海の中を漂っているんだ。あたい達はこの結晶を航海のお守りとして大事にしてるのさ」
「そのような大事なもの某が持つわけには・・・」
某は返そうと首飾りを外そうとした。
そのときマリーナどのが止めた。
「この雫は特大、大きくて特別綺麗なんだよ。これを巡って欲深な商人が艦隊を率いて奪い取ろうとした。あたい達は命をかけてあたい達の大切なこのハサルトの結晶を守った。これがあんたを守ってくれる。だから、ルナちゃんをちゃんと助けて、バートにその宝石を返すんだ」
「かたじけない!」
マリーナどのから首飾りをいただき某は港へと向かった。
「よ~そろ、虎吉」
港でバートどのが待っていた。
「それは『ハサルトの雫』か?」
「マリーナどのから借りている。ルナどのを助けてお主らに返す」
「マリーナはお前と女が死なないよう祈っている。マリーナは自分が着いていながら、ルナどのがさらわれた事を申し訳ないと思っているのだろう」
「マリーナどのは悪くない。悪いのは、そういうことをしないと勝負できない腐った奴らだ!」
拳を握った。
夜、眠れなかった。
いつも側にいてくれたルナどのが、いない。
「お前に力を貸そう。だから女を絶対助けるんだ・・・船に乗るぞ!」
港に15隻の船が停泊していた。
「それで、どれがバートどのの船だ?」
「みんな俺の船だ」
「はい?」
「バート艦隊だ」
「艦隊!?」
「あぁ、俺は帝国との約束で海の治安を守っている。俺がまだ一隻の船長になりたての頃だった。3代目帝王が協定を破棄しようとしやがった。それで俺たち魚人と帝国が争った」
「『海の反乱』か。一体何が原因で争ったのだ?」
「ハサルトの捕獲だ。初代帝王と俺たち魚人は掟を交わした。ハサルトは俺たち海の守り神。そのハサルトを何人たりとも捕らせないと初代帝王は約束し、それを守らせた。それは『皇条』にも定められてある」
バートが手に持っていた小さな書物を開いて某に見せた。
そこには『皇条第84条』にハサルトの捕獲を禁ずる事が書かれていた。
「だが3代目は破りやがった。3代目はロード商人を使ってハサルトを捕ろうとした。俺は20隻の海賊連合の一隻だった。仲間は皆沈められたが俺は最後まで残った」
「それでどうなった?」
「いよいよ俺も終わりかと思ったとき、俺は帝国に言った。お前たちが海を荒らせば俺たちは永久にお前たちの船を襲ってやる!と」
「貴公は何故助かった?」
「オーシャンが俺を助けてくれた。穏やかで争いを嫌うオーシャンが俺を助けるために戦ってくれた」
「オーシャン?」
「俺の古い友だ。その後、ホリー艦隊も駆けつけ俺はホリー国の仲介で3代目帝王と会談が出来た。帝国はハサルトを捕らないと改めて約束した。だが、その代わり3代目の野郎は俺にある協定を結ばせた。」
「どんな協定だ?」
「俺を海賊艦隊の司令官として認める。その代わりに、海賊艦隊は帝国艦隊の支配下に入り、海の宝石を毎年帝国に献上すること。つまり、毎年帝国のご機嫌を取って、いざ戦争が起きたら帝国の味方をしろってことだ」
「その条件をのんだのか?」
「多くの遺恨は残った。だがそうしないと、このハサルトが住む海で俺たちは終わりなき戦いを繰り返しただろう。そして帝国は俺に海の治安を守ることを許した。この艦隊は海を荒らすためにあるんじゃ無い」
バートどのが懐からもう1つの『ハサルトの雫』を見せた。
「この雫は、俺が幼い頃に友達になってくれたオーシャンからもらった俺の大切な宝でありお守りだ」
オーシャンが「自分の誇り」かのように某に見せた。
「俺はこれを絶えず身につけて海を守っている!」
すごいな。
日本に河野水軍がいる。源平合戦の時、鎌倉に味方して伊勢平氏と戦ったという。
だがこのバートどののような大きな船を何隻も持っている豪快な海賊は初めて見た。
「ちなみにお前の目の前に見えるのは俺の艦隊の半分だ」
「半分?」
「残りは今、海に出て悪ガキどもらを探している。俺とお前が乗る船は一番奥にあるあの旗艦、シークイーンだ」
バートどのが一番遠くにある船を指さした。
木の色をしていた他の船と違い、その船は真っ白だった。
船尾にはサメの顎が描かれた旗がなびいていた。
マストの数も他の船より2本多いきれいな船だった。
我らは目の前の小舟に乗った。
小舟は巨大な船の間を通って、シークイーンへと進んだ。
船尾には4つの窓があり、彫刻が彫られている。
側面はまるで白い壁を見ているようだった。
その壁の上から縄はしごが降ろされ、バートどのが上った。
「登ってこい!」
某ははしごをつかむと登り始めた。
縄ばしごなので上るたびに揺れる。
「よし、上ったか。上出来だ」
のぼるとバートとその仲間達がからかうように笑っていた。
甲板を見た。
大木のように大きく高い5本の帆柱が天へと伸びていた。
帆柱に鳥が止まっている。
まるで船から生える木のようだ。
「これは何だ?」
大きくて丸い筒を発見した。
船の両側面に何本もおいていた。
「それは大砲だ」
「大砲?」
いったい何に使うのだ。この黒い大きな筒は使い方がまったく創造できぬ。
「小さいやつはこれだ」
バートどのが腰に差していた小さな筒を見せた。
「こいつは、刀よりも簡単に命を奪う力を持っている武器だ」
バートどのがその武器を某に向けた。
丸い穴から異様な殺気を感じた。
「海の上でこの筒が火を噴き鉄の塊を飛ばす。それで敵の船をぶっ潰す」
そう言ってそれをしまった。
「それだからこいつは品のねぇ武器だ。漢はやっぱりこれで勇敢に戦うべきだ」
バートは刀を抜き、太陽にかざした。
刀から水滴が現れた。
バートは海に向かって振った。
無数の水滴が海に向かって光りながら飛んでいった。
バートは刀を鞘にしまった。
その姿は海の武士とも言うべき誇りある漢の姿だった。
「だが、もう一つ筒で良い奴をおまえにやろう」
バートどのがもうひとつ別の細長い筒、大小の2つを懐から取り出し小さい方を某に渡した。
「のぞいてみろ。こうやるんだ」
某はバートどのから筒を受け取ると、バートどのと同じように片目を当てた。
「あれ?」
某はその筒を当てて、外してそれを何度も繰り返した。不思議なことにこれでのぞいてみると水平線が大きくなった。
「これは魔術か?」
バートどのに尋ねるとバートどのは腹を抱えて笑った。
「お前にはこの小さい奴をやろう。これでこの海のどこかにいるお前の女を探せ」
バートどのがもう一つ持っていた小さい方を某に渡した。
「船長、出港準備ができました!」
「よし、やろうども出港だ!」
バートの号令で、船から笛のような音がなった。それにつられて周りの船からも音がなった。
そして船に備え付けられたマストと呼ばれる柱からサメの歯が描かれた巨大な帆を張っていた。
そして船首で巨大な縄が動き出し海の中から巨大な鉄の塊が引き上げられた。
そして艦隊がゆっくりと動き出した。巨大な船が我らを乗せて縦一列になって海を突き進んだ。
「キッドがいつ見つかるか分からん。それまではずっとこの船にお前はいることになる」
「ああ・・・ルナどのを助けるまで絶対に船は降りん」
船は果てしなく広い海を進み、日が没しても進みそれを何日も繰り返した。
「何とも不思議な寝床だ・・・」
この宙に浮いているハンモックなる寝床は、最初寝れるのか不安だった。
だが、寝てみると以外と包まれて寝れた。
だが、ハンモックから出るときが大変だった。普通の寝床のように起き上がって歩き出すことが出来ぬ。
まずは片足を地面に着地させて、残りの足を地面に着地させた。
「ところで、ブラック・キッドは何者だ?」
海に出て5日経った。
某はバートどのからいただいたテレスコープ(望遠鏡)でルナどのをさらったキッドを探していた。
「ああ。最近、若い奴らで新しい海賊を作ろうってやつが現れてな」
「新しい海賊?」
「「バートは古い」って言う奴らがいてなそいつらが秘密裏に集まって新しい海賊の世界を作ろうとしている。そのリーダーがブラックキッドだ」
「キッドもお主のように艦隊を持っているのか?」
「ふ、あの若造が俺のようになるのは30年はえぇ。一隻くらいはシップは持っていてものこりはカッターしかねぇだろう」
「キッドはなぜお主を嫌っている?」
「あいつが卑怯者だからだ!」
どぉん!
突然、轟音がなった。
「何事だ!?」
朝早く、某はルナどのの杖を持って宿を出ようとした。
そのとき、マリーナどのが自分が身につけていたキッドの弟から奪い返した光りが封じ込まれた緑の宝石がついた首飾りを某の首にかけた。
「この宝石は『ハサルトの雫』って言われていて、ハサルトが泳いだ後にはこの結晶が海の中を漂っているんだ。あたい達はこの結晶を航海のお守りとして大事にしてるのさ」
「そのような大事なもの某が持つわけには・・・」
某は返そうと首飾りを外そうとした。
そのときマリーナどのが止めた。
「この雫は特大、大きくて特別綺麗なんだよ。これを巡って欲深な商人が艦隊を率いて奪い取ろうとした。あたい達は命をかけてあたい達の大切なこのハサルトの結晶を守った。これがあんたを守ってくれる。だから、ルナちゃんをちゃんと助けて、バートにその宝石を返すんだ」
「かたじけない!」
マリーナどのから首飾りをいただき某は港へと向かった。
「よ~そろ、虎吉」
港でバートどのが待っていた。
「それは『ハサルトの雫』か?」
「マリーナどのから借りている。ルナどのを助けてお主らに返す」
「マリーナはお前と女が死なないよう祈っている。マリーナは自分が着いていながら、ルナどのがさらわれた事を申し訳ないと思っているのだろう」
「マリーナどのは悪くない。悪いのは、そういうことをしないと勝負できない腐った奴らだ!」
拳を握った。
夜、眠れなかった。
いつも側にいてくれたルナどのが、いない。
「お前に力を貸そう。だから女を絶対助けるんだ・・・船に乗るぞ!」
港に15隻の船が停泊していた。
「それで、どれがバートどのの船だ?」
「みんな俺の船だ」
「はい?」
「バート艦隊だ」
「艦隊!?」
「あぁ、俺は帝国との約束で海の治安を守っている。俺がまだ一隻の船長になりたての頃だった。3代目帝王が協定を破棄しようとしやがった。それで俺たち魚人と帝国が争った」
「『海の反乱』か。一体何が原因で争ったのだ?」
「ハサルトの捕獲だ。初代帝王と俺たち魚人は掟を交わした。ハサルトは俺たち海の守り神。そのハサルトを何人たりとも捕らせないと初代帝王は約束し、それを守らせた。それは『皇条』にも定められてある」
バートが手に持っていた小さな書物を開いて某に見せた。
そこには『皇条第84条』にハサルトの捕獲を禁ずる事が書かれていた。
「だが3代目は破りやがった。3代目はロード商人を使ってハサルトを捕ろうとした。俺は20隻の海賊連合の一隻だった。仲間は皆沈められたが俺は最後まで残った」
「それでどうなった?」
「いよいよ俺も終わりかと思ったとき、俺は帝国に言った。お前たちが海を荒らせば俺たちは永久にお前たちの船を襲ってやる!と」
「貴公は何故助かった?」
「オーシャンが俺を助けてくれた。穏やかで争いを嫌うオーシャンが俺を助けるために戦ってくれた」
「オーシャン?」
「俺の古い友だ。その後、ホリー艦隊も駆けつけ俺はホリー国の仲介で3代目帝王と会談が出来た。帝国はハサルトを捕らないと改めて約束した。だが、その代わり3代目の野郎は俺にある協定を結ばせた。」
「どんな協定だ?」
「俺を海賊艦隊の司令官として認める。その代わりに、海賊艦隊は帝国艦隊の支配下に入り、海の宝石を毎年帝国に献上すること。つまり、毎年帝国のご機嫌を取って、いざ戦争が起きたら帝国の味方をしろってことだ」
「その条件をのんだのか?」
「多くの遺恨は残った。だがそうしないと、このハサルトが住む海で俺たちは終わりなき戦いを繰り返しただろう。そして帝国は俺に海の治安を守ることを許した。この艦隊は海を荒らすためにあるんじゃ無い」
バートどのが懐からもう1つの『ハサルトの雫』を見せた。
「この雫は、俺が幼い頃に友達になってくれたオーシャンからもらった俺の大切な宝でありお守りだ」
オーシャンが「自分の誇り」かのように某に見せた。
「俺はこれを絶えず身につけて海を守っている!」
すごいな。
日本に河野水軍がいる。源平合戦の時、鎌倉に味方して伊勢平氏と戦ったという。
だがこのバートどののような大きな船を何隻も持っている豪快な海賊は初めて見た。
「ちなみにお前の目の前に見えるのは俺の艦隊の半分だ」
「半分?」
「残りは今、海に出て悪ガキどもらを探している。俺とお前が乗る船は一番奥にあるあの旗艦、シークイーンだ」
バートどのが一番遠くにある船を指さした。
木の色をしていた他の船と違い、その船は真っ白だった。
船尾にはサメの顎が描かれた旗がなびいていた。
マストの数も他の船より2本多いきれいな船だった。
我らは目の前の小舟に乗った。
小舟は巨大な船の間を通って、シークイーンへと進んだ。
船尾には4つの窓があり、彫刻が彫られている。
側面はまるで白い壁を見ているようだった。
その壁の上から縄はしごが降ろされ、バートどのが上った。
「登ってこい!」
某ははしごをつかむと登り始めた。
縄ばしごなので上るたびに揺れる。
「よし、上ったか。上出来だ」
のぼるとバートとその仲間達がからかうように笑っていた。
甲板を見た。
大木のように大きく高い5本の帆柱が天へと伸びていた。
帆柱に鳥が止まっている。
まるで船から生える木のようだ。
「これは何だ?」
大きくて丸い筒を発見した。
船の両側面に何本もおいていた。
「それは大砲だ」
「大砲?」
いったい何に使うのだ。この黒い大きな筒は使い方がまったく創造できぬ。
「小さいやつはこれだ」
バートどのが腰に差していた小さな筒を見せた。
「こいつは、刀よりも簡単に命を奪う力を持っている武器だ」
バートどのがその武器を某に向けた。
丸い穴から異様な殺気を感じた。
「海の上でこの筒が火を噴き鉄の塊を飛ばす。それで敵の船をぶっ潰す」
そう言ってそれをしまった。
「それだからこいつは品のねぇ武器だ。漢はやっぱりこれで勇敢に戦うべきだ」
バートは刀を抜き、太陽にかざした。
刀から水滴が現れた。
バートは海に向かって振った。
無数の水滴が海に向かって光りながら飛んでいった。
バートは刀を鞘にしまった。
その姿は海の武士とも言うべき誇りある漢の姿だった。
「だが、もう一つ筒で良い奴をおまえにやろう」
バートどのがもうひとつ別の細長い筒、大小の2つを懐から取り出し小さい方を某に渡した。
「のぞいてみろ。こうやるんだ」
某はバートどのから筒を受け取ると、バートどのと同じように片目を当てた。
「あれ?」
某はその筒を当てて、外してそれを何度も繰り返した。不思議なことにこれでのぞいてみると水平線が大きくなった。
「これは魔術か?」
バートどのに尋ねるとバートどのは腹を抱えて笑った。
「お前にはこの小さい奴をやろう。これでこの海のどこかにいるお前の女を探せ」
バートどのがもう一つ持っていた小さい方を某に渡した。
「船長、出港準備ができました!」
「よし、やろうども出港だ!」
バートの号令で、船から笛のような音がなった。それにつられて周りの船からも音がなった。
そして船に備え付けられたマストと呼ばれる柱からサメの歯が描かれた巨大な帆を張っていた。
そして船首で巨大な縄が動き出し海の中から巨大な鉄の塊が引き上げられた。
そして艦隊がゆっくりと動き出した。巨大な船が我らを乗せて縦一列になって海を突き進んだ。
「キッドがいつ見つかるか分からん。それまではずっとこの船にお前はいることになる」
「ああ・・・ルナどのを助けるまで絶対に船は降りん」
船は果てしなく広い海を進み、日が没しても進みそれを何日も繰り返した。
「何とも不思議な寝床だ・・・」
この宙に浮いているハンモックなる寝床は、最初寝れるのか不安だった。
だが、寝てみると以外と包まれて寝れた。
だが、ハンモックから出るときが大変だった。普通の寝床のように起き上がって歩き出すことが出来ぬ。
まずは片足を地面に着地させて、残りの足を地面に着地させた。
「ところで、ブラック・キッドは何者だ?」
海に出て5日経った。
某はバートどのからいただいたテレスコープ(望遠鏡)でルナどのをさらったキッドを探していた。
「ああ。最近、若い奴らで新しい海賊を作ろうってやつが現れてな」
「新しい海賊?」
「「バートは古い」って言う奴らがいてなそいつらが秘密裏に集まって新しい海賊の世界を作ろうとしている。そのリーダーがブラックキッドだ」
「キッドもお主のように艦隊を持っているのか?」
「ふ、あの若造が俺のようになるのは30年はえぇ。一隻くらいはシップは持っていてものこりはカッターしかねぇだろう」
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