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「俺を斬ったつもりだったか?」
カトスが某をつかんだ。
太刀を掴まれ刃を抜けなかった。
カトスがその1つ目の瞳孔を最大限見開き、真っ黒な眼になった。
「なに・・・!?」
深い暗闇に墜ちた。
耳が何も聞こえなくなった。
目も何も見えなくなった。
「・・・・・・すぅ・・・・・・」
深く息を吸った。
カトスが短刀を抜いて虎吉を刺そうとした。
「虎吉さま!」
ルナどのの声が聞こえた。
ガッ!
活を入れて幻術を振り払り、カトスの短刀を止めた。
「お前の幻術などきかぬわ!」
脇差でカトスの目を刺した。
「かっ・・・」
カトスは光に包まれた。
「どうやら倒したようだな」
「おっそっちもサイクロプスに倒されずに、倒したか?」
「ナイトを甘く見るな。見ろ!」
1000名ほどはいるだろうか。ロベルトと同じ甲冑を着た者達がロベルトの後ろにいた。
「『自由の風』のリーダー、サー、ジャックが戦士を集めて、騎士団を作り俺がその団長となったアイネ騎士団だ!見ろ・・・我らの守護聖人アイネ様だ」
馬にまたがっているアイネどのが笑顔で手を振っていた。
アイネどのも己をさらに鍛えたようだ。
一段と美しくなっている。
「お主、この者達の棟梁になったのか!?」
「ああ。北東の小国、ルバツ国がホリー国に、魔物の大群の討伐を依頼してきた。俺とアイネ様はサー、ジャックの私兵と共にルバツ国を助けに向かった。サー、ジャックは俺たちの功績を褒め称え、俺たちの騎士団を作ってくれた」
なんてことだ。
某が『光明』を作っている間にロベルトがそこまで出世してたとは。
竹崎季長いらいの悔しさだ。
「しかし、お前の太刀変わっていないか?」
「四聖獣の素石を集めたハンツどのから最強の太刀を作ってもらった。イーミーの素石はサハリどのからもらいハサルトの素石はバートがくれ、龍の素石は龍にもらった。アルブティガーは自ら倒した」
「四聖獣の素石だと!?アルブティガーを倒した!?」
ロベルトの目が、先ほどのカトス以上に大きくなった気がした。
「それで帝王しか持てないと言われている太刀を・・・ぐっ、俺がジャック・ハラルに協力している間にそこまで強くなっているとは!?」
某が最強の太刀を手にしたと知って、ロベルトがかなり悔しがっている。
ざまあみろ。
「ルナ王女!」
ルナに一人の老人が駆け寄ってきた。
「シンド無事だったの!?」
「ルナ様も。ルナ様がこの国のために命を賭けて、勇者を探す旅に出たとき、私は覚悟を決めながらも、幼い頃よりその笑顔を見てきたルナ様の無事をずっと願っておりました。・・・よくぞお帰りになられました」
ルナとその老人はお互いに無事を喜び合った。
「シンド、こちらは遠い世界より来られ、そしてずっとわたしを守ってくれた勇者、虎吉さまです!」
「おぉ、わたくしはこの国の宰相シンドでございます。今までルナ王女を守っていただき感謝を申し上げます」
シンド宰相が某の両手をとって深く感謝の意を示した。
「ルナ・・・王女?」
「はい。虎吉さま、わたしはこの国の王女なのです」
「あ、さよか・・・」
まあ、薄々は感じていた。
何とも高貴な雰囲気を薄らと出していたからなぁ。
王女と分かった以上、呼び方を変えねば。
「ここでは、何ですので壊れていますが館にご招待しましょう」
我らはシンド宰相の案内で館へと向かった。
外観は壊れていたが、中はさほど壊れていなかった。
蒼い床に天井は黒く、満点の星空が描かれていた。
シンド殿は某の部屋を用意してくれ、風呂の準備と新しい直垂も用意してくれた。
「お待ち申しておりました。風呂上がりに楽しみましょう」
風呂から上がると宴の用意が出来ていた。
シンドが某を席まで案内した。
座るとシンドが某の器に酒を注いだ。
目の前には、豪華ではないが質素にならないほどの食べ物が並んでいた。
「ルナ・・・王女様は?」
「ルナ様は、民に自らの無事を見せております。民は王女様がご無事に帰ってこられて、消えかけた希望が戻っているでしょう」
酒が注がれた器の底に、綺麗な月が描かれていた。
注がれる前は見えなかったのに、注がれたとき、その月が現れた。
月が映る酒を一息で飲んだ。
「シンド殿、聞くところによると、この国で初代帝王が1人の女と出会ったとか?」
「その通りでございます。100ネン前、この国に1人の美しい踊り子がおりました。初代帝王が我がセレーネ国を訪れたとき、その踊り子の踊りを見て感激して、そして恋に落ちたと聞いております」
「それでどうなった?」
「初代帝王は踊り子の願いを聞きました。その願いはセレーネ国の『月の清水』を帝国に護って欲しいとのことでした。初代帝王はその約束を聞き入れ、後の世までセレーネ国を守るようにと言われました」
「それを4代目は破ったのか?」
「はい。それほど4代目も必死なのです。【覚醒(アウェイクニング)】を越えるさらなる力を求めて」
なるほど。
4代目はそれほどまでに守りたいのか。
初代帝王が交わし、今まで守ってきた約束を破ってまで。
「失礼ですが、私の手を握ってくれませんか?」
「ん?」
突然シンド殿が某に手を伸ばしてきた。
某はシンド殿の手を握った。
シンド殿が腕に力を入れた。
某は冷静に力を合わせた。
「これが、そうか・・・。【覚醒(アウェイクニング)】は大魔術師サハリがこの世の生きとし生けるもの限界を考慮して調整しながら作ったと言われております。あなたはその最高の強さを手に入れております」
シンド殿は手を離した。
「4代目もまた【覚醒(アウェイクニング)】に耐えられる屈強な身体を持っております。しかし、その身体を持ってしても『月の清水』は・・・」
「いったいどうなる?」
「あまりにも大きすぎる力にその身は耐えられないでしょう。『月の清水』は、この世界そのものの力を暗い場所で密かに輝きながら存在しているものといわれております。世界を手中に治めた者とて、世界そのものの力は大きすぎます」
「その4代目に会うことはできるか?」
「・・・1人、会わせてくれるかもしれない人物がおります。お会いになりたいのですか?」
「もうすでに会っている。このまま終わらすわけには行かぬ」
この国は帝国と友好関係を結んでいた。
だが帝国はそれを破った。
これで奴は某の敵であることは明白だ。
「ですが、今の4代目は危険です」
「某を誰だと思っている。戦を誇りとする武士だぞ」
殺気のこもった目をシンド殿にむけた。
「失礼いたしました。後ほどお教えいたしましょう」
「最後にもう一つ。その踊り子はどうなった?」
「ある日、国を出て行きました。初代帝王は彼女を妃にしたかったのですが、帝王にはすでに妃がおりました。それでも帝王は諦めきれず、彼女はその帝王から逃れるように消えたと言われいます。ただ・・・」
「ただ?」
「彼女はそのとき、帝王の子供を身ごもっていたと言われています」
「本当か?」
「確証はありません。国を出て行ったのは事実のようですが、身ごもっていたのは単なる噂かもしれません」
「そうか・・・」
その踊り子はどこへ行ったのだ。
もし子供を身ごもっていればその子供はちゃんとおおきくなったのであろうか。
「はは、宴会がしんみりしてしまいましたな。ささ、ここからは酒を飲んで盛り上がってください」
シンドどのは話を終えると某の器に酒をついだ。
その後は王女ルナどのは今までどんな旅をしてきたのか聞いてきたので某はそれを語った。
シンドどのも過去の帝国と今の帝国、初代帝王から今の4代目まで知っている限りのことを教えてくれた。
やがて宴が終わり寝床についたとき某はしばらく寝ることなく考えていた。
「・・・某に出来るのはこれしかない・・・」
某の器ではこれしか出来そうになかった。
城のバルコニーなるところに出て、太刀でも振ろうかと思っていたが、太刀をふる気がしなかった。
ガンガン。
扉を叩く音が聞こえた。
某は部屋の中に入ると扉を開けた。
「虎吉さま、夜遅く失礼いたします」
ルナどのが立っていた。
カトスが某をつかんだ。
太刀を掴まれ刃を抜けなかった。
カトスがその1つ目の瞳孔を最大限見開き、真っ黒な眼になった。
「なに・・・!?」
深い暗闇に墜ちた。
耳が何も聞こえなくなった。
目も何も見えなくなった。
「・・・・・・すぅ・・・・・・」
深く息を吸った。
カトスが短刀を抜いて虎吉を刺そうとした。
「虎吉さま!」
ルナどのの声が聞こえた。
ガッ!
活を入れて幻術を振り払り、カトスの短刀を止めた。
「お前の幻術などきかぬわ!」
脇差でカトスの目を刺した。
「かっ・・・」
カトスは光に包まれた。
「どうやら倒したようだな」
「おっそっちもサイクロプスに倒されずに、倒したか?」
「ナイトを甘く見るな。見ろ!」
1000名ほどはいるだろうか。ロベルトと同じ甲冑を着た者達がロベルトの後ろにいた。
「『自由の風』のリーダー、サー、ジャックが戦士を集めて、騎士団を作り俺がその団長となったアイネ騎士団だ!見ろ・・・我らの守護聖人アイネ様だ」
馬にまたがっているアイネどのが笑顔で手を振っていた。
アイネどのも己をさらに鍛えたようだ。
一段と美しくなっている。
「お主、この者達の棟梁になったのか!?」
「ああ。北東の小国、ルバツ国がホリー国に、魔物の大群の討伐を依頼してきた。俺とアイネ様はサー、ジャックの私兵と共にルバツ国を助けに向かった。サー、ジャックは俺たちの功績を褒め称え、俺たちの騎士団を作ってくれた」
なんてことだ。
某が『光明』を作っている間にロベルトがそこまで出世してたとは。
竹崎季長いらいの悔しさだ。
「しかし、お前の太刀変わっていないか?」
「四聖獣の素石を集めたハンツどのから最強の太刀を作ってもらった。イーミーの素石はサハリどのからもらいハサルトの素石はバートがくれ、龍の素石は龍にもらった。アルブティガーは自ら倒した」
「四聖獣の素石だと!?アルブティガーを倒した!?」
ロベルトの目が、先ほどのカトス以上に大きくなった気がした。
「それで帝王しか持てないと言われている太刀を・・・ぐっ、俺がジャック・ハラルに協力している間にそこまで強くなっているとは!?」
某が最強の太刀を手にしたと知って、ロベルトがかなり悔しがっている。
ざまあみろ。
「ルナ王女!」
ルナに一人の老人が駆け寄ってきた。
「シンド無事だったの!?」
「ルナ様も。ルナ様がこの国のために命を賭けて、勇者を探す旅に出たとき、私は覚悟を決めながらも、幼い頃よりその笑顔を見てきたルナ様の無事をずっと願っておりました。・・・よくぞお帰りになられました」
ルナとその老人はお互いに無事を喜び合った。
「シンド、こちらは遠い世界より来られ、そしてずっとわたしを守ってくれた勇者、虎吉さまです!」
「おぉ、わたくしはこの国の宰相シンドでございます。今までルナ王女を守っていただき感謝を申し上げます」
シンド宰相が某の両手をとって深く感謝の意を示した。
「ルナ・・・王女?」
「はい。虎吉さま、わたしはこの国の王女なのです」
「あ、さよか・・・」
まあ、薄々は感じていた。
何とも高貴な雰囲気を薄らと出していたからなぁ。
王女と分かった以上、呼び方を変えねば。
「ここでは、何ですので壊れていますが館にご招待しましょう」
我らはシンド宰相の案内で館へと向かった。
外観は壊れていたが、中はさほど壊れていなかった。
蒼い床に天井は黒く、満点の星空が描かれていた。
シンド殿は某の部屋を用意してくれ、風呂の準備と新しい直垂も用意してくれた。
「お待ち申しておりました。風呂上がりに楽しみましょう」
風呂から上がると宴の用意が出来ていた。
シンドが某を席まで案内した。
座るとシンドが某の器に酒を注いだ。
目の前には、豪華ではないが質素にならないほどの食べ物が並んでいた。
「ルナ・・・王女様は?」
「ルナ様は、民に自らの無事を見せております。民は王女様がご無事に帰ってこられて、消えかけた希望が戻っているでしょう」
酒が注がれた器の底に、綺麗な月が描かれていた。
注がれる前は見えなかったのに、注がれたとき、その月が現れた。
月が映る酒を一息で飲んだ。
「シンド殿、聞くところによると、この国で初代帝王が1人の女と出会ったとか?」
「その通りでございます。100ネン前、この国に1人の美しい踊り子がおりました。初代帝王が我がセレーネ国を訪れたとき、その踊り子の踊りを見て感激して、そして恋に落ちたと聞いております」
「それでどうなった?」
「初代帝王は踊り子の願いを聞きました。その願いはセレーネ国の『月の清水』を帝国に護って欲しいとのことでした。初代帝王はその約束を聞き入れ、後の世までセレーネ国を守るようにと言われました」
「それを4代目は破ったのか?」
「はい。それほど4代目も必死なのです。【覚醒(アウェイクニング)】を越えるさらなる力を求めて」
なるほど。
4代目はそれほどまでに守りたいのか。
初代帝王が交わし、今まで守ってきた約束を破ってまで。
「失礼ですが、私の手を握ってくれませんか?」
「ん?」
突然シンド殿が某に手を伸ばしてきた。
某はシンド殿の手を握った。
シンド殿が腕に力を入れた。
某は冷静に力を合わせた。
「これが、そうか・・・。【覚醒(アウェイクニング)】は大魔術師サハリがこの世の生きとし生けるもの限界を考慮して調整しながら作ったと言われております。あなたはその最高の強さを手に入れております」
シンド殿は手を離した。
「4代目もまた【覚醒(アウェイクニング)】に耐えられる屈強な身体を持っております。しかし、その身体を持ってしても『月の清水』は・・・」
「いったいどうなる?」
「あまりにも大きすぎる力にその身は耐えられないでしょう。『月の清水』は、この世界そのものの力を暗い場所で密かに輝きながら存在しているものといわれております。世界を手中に治めた者とて、世界そのものの力は大きすぎます」
「その4代目に会うことはできるか?」
「・・・1人、会わせてくれるかもしれない人物がおります。お会いになりたいのですか?」
「もうすでに会っている。このまま終わらすわけには行かぬ」
この国は帝国と友好関係を結んでいた。
だが帝国はそれを破った。
これで奴は某の敵であることは明白だ。
「ですが、今の4代目は危険です」
「某を誰だと思っている。戦を誇りとする武士だぞ」
殺気のこもった目をシンド殿にむけた。
「失礼いたしました。後ほどお教えいたしましょう」
「最後にもう一つ。その踊り子はどうなった?」
「ある日、国を出て行きました。初代帝王は彼女を妃にしたかったのですが、帝王にはすでに妃がおりました。それでも帝王は諦めきれず、彼女はその帝王から逃れるように消えたと言われいます。ただ・・・」
「ただ?」
「彼女はそのとき、帝王の子供を身ごもっていたと言われています」
「本当か?」
「確証はありません。国を出て行ったのは事実のようですが、身ごもっていたのは単なる噂かもしれません」
「そうか・・・」
その踊り子はどこへ行ったのだ。
もし子供を身ごもっていればその子供はちゃんとおおきくなったのであろうか。
「はは、宴会がしんみりしてしまいましたな。ささ、ここからは酒を飲んで盛り上がってください」
シンドどのは話を終えると某の器に酒をついだ。
その後は王女ルナどのは今までどんな旅をしてきたのか聞いてきたので某はそれを語った。
シンドどのも過去の帝国と今の帝国、初代帝王から今の4代目まで知っている限りのことを教えてくれた。
やがて宴が終わり寝床についたとき某はしばらく寝ることなく考えていた。
「・・・某に出来るのはこれしかない・・・」
某の器ではこれしか出来そうになかった。
城のバルコニーなるところに出て、太刀でも振ろうかと思っていたが、太刀をふる気がしなかった。
ガンガン。
扉を叩く音が聞こえた。
某は部屋の中に入ると扉を開けた。
「虎吉さま、夜遅く失礼いたします」
ルナどのが立っていた。
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