3 / 8
1章 転生→カタリナ村脱出
2話 高い塀に囲われた村
しおりを挟む
<カタリナ村>。
キャビーの生まれた村は、そう呼ばれていた。
かの有名な<勇者ハイル>の出身地である、史上最大の人間大国──<アルトラル王国>の南西、<お咎め様の森>という大樹海の只中にカタリナ村はあるらしかった。
転生の際、ある程度の条件が設定出来るようだが、こればっかりは仕方ないだろう。現に、攻略対象であるアルトラル王国の人間に転生することは叶ったのだ。
アルトラル王国を陥落させれば、人類滅亡に最も近付く。だからキャビーはここに送り込まれた。
先ずキャビーの目指すのは、王都<ヘイリム>であった。
★
キャビーは自宅の屋根に登り、村を見渡す。
彼が転生して半年が経過した頃──
幸先はあまり良くない。
魔族と違い、成長の遅い人間の赤ん坊は身体がとてめ小さく、言葉を喋ることも出来ない。活動時間はごく僅かに限られ、睡魔に襲われると気絶するように寝てしまう。
加えて、穴という穴から、液体を垂れ流してしまう始末。ファイに掃除させるにも、喚いて伝えるしかない。
屈辱的だった。
赤ん坊からやり直すのは、非常に不愉快極まりない。魔王直々の命令でなければ、プライドを保てていなかっただろう。
だがしかし、ようやく魔法の発現が可能となった。
魔力の源である<魔素>を体内で貯蓄、生成することが出来るようになり、最も基礎的な魔法──<無属性魔法>による<身体強化>の行使が、つい最近になって可能となったのだ。
これにより、排水用のパイプを伝って、屋根に登ることが出来た。
「とても不可解な村だ。周囲は高い塀で囲まれ、まるで村民を閉じ込めているみたいだ。それにあそこ──兵士の訓練施設がある」
キャビーは、喋れない口を使い言った気になる。
彼は転生前に何度も人間の村を襲っている。しかし、そのどれとも、この村の様相は違っている。
カタリナ村の村民は20人程度と、ごく少数であった。代わりに駐在している兵士は多い。また、奴隷制度を導入している為、獣人の奴隷も多数見受けられる。
村民におかしな点はなく、至って普通だ。カクモという果物を主に栽培し、基本的に自給自足の生活を行っている。
しかし──
「やはり、あの高い塀は気になるな」
カタリナ村の周囲を囲う5メートル近くの高い塀。その外には、更に高い巨大な木が群生している。
「森の中というのは、間違いない。だとしても塀が必要な理由は一体……? それこそ、巨大な魔獣(獣型の魔物)でも居なければ──」
村はそこそこに広い。一部隆起している地面や、段差はあるものの、綺麗に整備された平らな地面となっている。
半分程度を畑が占めており、村民はその周辺に小さな平家を持っている。馬小屋や、豚や鶏などの家畜も育てていた。
そして、兵士の訓練施設──
遠方に見える兵士の様子を伺ってみる。
10人以上の兵士が重装甲の鎧を身に纏い、訓練をしている。片方は突進し、もう片方がクッションで受け止める。
まるで、自身よりも遥かに大きな敵を想定しているように見える。
「あれでは格好の獲物だ。確かに防御力は高そうだが、火魔法にとことん弱そうだ。それよりも先ず、魔法をかわすことすら儘ならないだろう」
馬鹿な奴らだ。そう一蹴するのは簡単だったが、やはり何処か納得がいかない。
<魔族>との戦闘は、元より意識していないような気がする。
塀の外に、何かが居るのだろうか──
「キャビーちゃんっ!!??」
屋根の下から悲鳴に似た声がした。
作者メモ
短いですが、サクッと行きましょう。
お咎め様の森についてですが、人類未踏破のエリアであったりもします。何が居て、何故この場所に村を作っているのか、若干のミステリー要素です。
キャビーの生まれた村は、そう呼ばれていた。
かの有名な<勇者ハイル>の出身地である、史上最大の人間大国──<アルトラル王国>の南西、<お咎め様の森>という大樹海の只中にカタリナ村はあるらしかった。
転生の際、ある程度の条件が設定出来るようだが、こればっかりは仕方ないだろう。現に、攻略対象であるアルトラル王国の人間に転生することは叶ったのだ。
アルトラル王国を陥落させれば、人類滅亡に最も近付く。だからキャビーはここに送り込まれた。
先ずキャビーの目指すのは、王都<ヘイリム>であった。
★
キャビーは自宅の屋根に登り、村を見渡す。
彼が転生して半年が経過した頃──
幸先はあまり良くない。
魔族と違い、成長の遅い人間の赤ん坊は身体がとてめ小さく、言葉を喋ることも出来ない。活動時間はごく僅かに限られ、睡魔に襲われると気絶するように寝てしまう。
加えて、穴という穴から、液体を垂れ流してしまう始末。ファイに掃除させるにも、喚いて伝えるしかない。
屈辱的だった。
赤ん坊からやり直すのは、非常に不愉快極まりない。魔王直々の命令でなければ、プライドを保てていなかっただろう。
だがしかし、ようやく魔法の発現が可能となった。
魔力の源である<魔素>を体内で貯蓄、生成することが出来るようになり、最も基礎的な魔法──<無属性魔法>による<身体強化>の行使が、つい最近になって可能となったのだ。
これにより、排水用のパイプを伝って、屋根に登ることが出来た。
「とても不可解な村だ。周囲は高い塀で囲まれ、まるで村民を閉じ込めているみたいだ。それにあそこ──兵士の訓練施設がある」
キャビーは、喋れない口を使い言った気になる。
彼は転生前に何度も人間の村を襲っている。しかし、そのどれとも、この村の様相は違っている。
カタリナ村の村民は20人程度と、ごく少数であった。代わりに駐在している兵士は多い。また、奴隷制度を導入している為、獣人の奴隷も多数見受けられる。
村民におかしな点はなく、至って普通だ。カクモという果物を主に栽培し、基本的に自給自足の生活を行っている。
しかし──
「やはり、あの高い塀は気になるな」
カタリナ村の周囲を囲う5メートル近くの高い塀。その外には、更に高い巨大な木が群生している。
「森の中というのは、間違いない。だとしても塀が必要な理由は一体……? それこそ、巨大な魔獣(獣型の魔物)でも居なければ──」
村はそこそこに広い。一部隆起している地面や、段差はあるものの、綺麗に整備された平らな地面となっている。
半分程度を畑が占めており、村民はその周辺に小さな平家を持っている。馬小屋や、豚や鶏などの家畜も育てていた。
そして、兵士の訓練施設──
遠方に見える兵士の様子を伺ってみる。
10人以上の兵士が重装甲の鎧を身に纏い、訓練をしている。片方は突進し、もう片方がクッションで受け止める。
まるで、自身よりも遥かに大きな敵を想定しているように見える。
「あれでは格好の獲物だ。確かに防御力は高そうだが、火魔法にとことん弱そうだ。それよりも先ず、魔法をかわすことすら儘ならないだろう」
馬鹿な奴らだ。そう一蹴するのは簡単だったが、やはり何処か納得がいかない。
<魔族>との戦闘は、元より意識していないような気がする。
塀の外に、何かが居るのだろうか──
「キャビーちゃんっ!!??」
屋根の下から悲鳴に似た声がした。
作者メモ
短いですが、サクッと行きましょう。
お咎め様の森についてですが、人類未踏破のエリアであったりもします。何が居て、何故この場所に村を作っているのか、若干のミステリー要素です。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる