転生魔族は人類滅亡の為に暗躍する(仮)

真昼

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1章 転生→カタリナ村脱出

2話 高い塀に囲われた村

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 <カタリナ村>。


 キャビーの生まれた村は、そう呼ばれていた。


 かの有名な<勇者ハイル>の出身地である、史上最大の人間大国──<アルトラル王国>の南西、<お咎め様の森>という大樹海の只中にカタリナ村はあるらしかった。


 転生の際、ある程度の条件が設定出来るようだが、こればっかりは仕方ないだろう。現に、攻略対象であるアルトラル王国の人間に転生することは叶ったのだ。


 アルトラル王国を陥落させれば、人類滅亡に最も近付く。だからキャビーはここに送り込まれた。


 先ずキャビーの目指すのは、王都<ヘイリム>であった。



 キャビーは自宅の屋根に登り、村を見渡す。


 彼が転生して半年が経過した頃──

 
 幸先はあまり良くない。


 魔族と違い、成長の遅い人間の赤ん坊は身体がとてめ小さく、言葉を喋ることも出来ない。活動時間はごく僅かに限られ、睡魔に襲われると気絶するように寝てしまう。


 加えて、穴という穴から、液体を垂れ流してしまう始末。ファイに掃除させるにも、喚いて伝えるしかない。


 屈辱的だった。


 赤ん坊からやり直すのは、非常に不愉快極まりない。魔王直々の命令でなければ、プライドを保てていなかっただろう。


 だがしかし、ようやく魔法の発現が可能となった。


 魔力の源である<魔素>を体内で貯蓄、生成することが出来るようになり、最も基礎的な魔法──<無属性魔法>による<身体強化>の行使が、つい最近になって可能となったのだ。


 これにより、排水用のパイプを伝って、屋根に登ることが出来た。


「とても不可解な村だ。周囲は高い塀で囲まれ、まるで村民を閉じ込めているみたいだ。それにあそこ──兵士の訓練施設がある」


 キャビーは、喋れない口を使い言った気になる。


 彼は転生前に何度も人間の村を襲っている。しかし、そのどれとも、この村の様相は違っている。


 カタリナ村の村民は20人程度と、ごく少数であった。代わりに駐在している兵士は多い。また、奴隷制度を導入している為、獣人の奴隷も多数見受けられる。


 村民におかしな点はなく、至って普通だ。カクモという果物を主に栽培し、基本的に自給自足の生活を行っている。


 しかし──


「やはり、あの高い塀は気になるな」


 カタリナ村の周囲を囲う5メートル近くの高い塀。その外には、更に高い巨大な木が群生している。


「森の中というのは、間違いない。だとしても塀が必要な理由は一体……? それこそ、巨大な魔獣(獣型の魔物)でも居なければ──」


 村はそこそこに広い。一部隆起している地面や、段差はあるものの、綺麗に整備された平らな地面となっている。


 半分程度を畑が占めており、村民はその周辺に小さな平家を持っている。馬小屋や、豚や鶏などの家畜も育てていた。


 そして、兵士の訓練施設──


 遠方に見える兵士の様子を伺ってみる。


 10人以上の兵士が重装甲の鎧を身に纏い、訓練をしている。片方は突進し、もう片方がクッションで受け止める。


 まるで、自身よりも遥かに大きな敵を想定しているように見える。


「あれでは格好の獲物だ。確かに防御力は高そうだが、火魔法にとことん弱そうだ。それよりも先ず、魔法をかわすことすら儘ならないだろう」


 馬鹿な奴らだ。そう一蹴するのは簡単だったが、やはり何処か納得がいかない。


 <魔族>との戦闘は、元より意識していないような気がする。


 塀の外に、何かが居るのだろうか──


「キャビーちゃんっ!!??」


 屋根の下から悲鳴に似た声がした。



作者メモ

短いですが、サクッと行きましょう。

お咎め様の森についてですが、人類未踏破のエリアであったりもします。何が居て、何故この場所に村を作っているのか、若干のミステリー要素です。
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