俺らは多兄弟!

春之介

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1.日常生活

三つ子、次男組のクラス。【粋唯・浮羽・健永】

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速敬「それより、あいつらは今回のテスト、どうだろうな」
ま、いつもみたいなものだろ、と長男の口からそう言った言葉が発せられたのだった。


次男グループのテスト時間へと遡る。

粋「(お、終わった…。)」
自分の机に突っ伏し解けない問題に頭を抱える。
すると後ろからコツコツと机をシャーペンで叩く音がした、健永だ。
健「(やっべ、わっかんねー!キヨと浮羽はわかってんのかなあぁ…)」
両足を交互にバタつかせる音もだんだんとしてくる、どうやら健永もわからないらしいと察する。五男の浮羽に限ってはクルクルと華麗にペン回しを始めていた。
浮「(いかんな、まったくわからないぞ。2人のことだから俺よりも出来ているはず…)」
3人の考えは見事に一致する。
(((赤点だけは、勘弁してくれ…!!)))
勿論、テストがあるからと言って勉強をするメンツでもなく、次男グループの中にも勉強が得意な人物は存在しなかった。むしろ逆に勉強をせずに、高校に上がれたものだと周りからの声がいくつか上がるレベルで。
粋「(解くには解いた、全て当てはめたし問題はない…はず…。)」
浮「(ふ…仕方ない、女神が俺の味方をしてくれることを期待しよう…)」
健「(ま、なんとかなるっしゃ!!)」
3人の不安を残し、授業終わりのベルが鳴り響く。
脱力した様にグッタリと息を吐く三人、三つ子とだけあってその息はピッタリだった。

机に左頬を着きながら、口から今にも魂が出て行きそうな生気のない顔で遠くを眺める。
健「おーい、キヨだいじょーぶ?」
ひょこりと顔を覗かせ心配そうにする、健永が視界に入ってきた、その次に浮羽が健永の後ろから心配そうに声をかける。
浮「最後のテストだったが、顔色が悪いな…まさかテストの悪意に囚われ…!」
「んなわけあるか」と即答をかますと、浮羽は苦笑いを浮かべた。
粋「2人は…どうだったわけ、僕は…うん。」
溜息を深く吐くと健永と浮羽は顔を見合わせ、ニパッと笑う。
その笑みに一瞬、この2人は満足の結果が期待できているのか、と不安になるもすぐに伝わってきた雰囲気のおかげで、わからなすぎての清々しい笑みだとわかった。
浮・健「全然!」
2人して笑顔のまま横に首を振る、要するに兄弟そろって全滅だった。
浮「次こそ己の実力を見せ付けてやろう…」
右手で自分の目元を覆い隠しながら、負けた人間のセリフを吐く浮羽に「あっはは!次こそガンバローよ!」と両手に拳を作り、意気込む健永。
そんな2人のやりとりを見ていて、なんだかどちらでもいい気分になった粋唯もクスッと笑顔になる。
粋「何度目のセリフ?毎回言ってるよね、いつ本気が見られるの」
その言葉にう"っと言葉を詰まらせたものの、今度だ今度!と笑いかける。
単純で明るい2人にはそこがなんだか、粋唯にとっては心強かった。
健「あ、あにさん達はどうなったかな」
浮「多分きっと、速敬兄貴が一番いい点数だろうな、弟として誇りに思うな!」
粋「多分普段通り、正臆兄さんあたりがうるさかったんじゃない。鉛筆でどうも回答してるらしいから」
浮・健「あぁ~、わかるなぁ」
コクコクと同じタイミングで頷く相手を微笑ましげに見つめる。
粋「どちらかというと、弟達の方がどうなってるか、だよ」
あまり点数を見せたがらない弟達については詳細は不明で。
でも赤点を取ったという話は一切聞いたことはなかった。
普通・"ヤバイ"・上の下みたいなバランスの偏った兄弟だった。
健「出来れば弟たちに今の単元教えてほしいっすねー」
粋「あー…ケンもやっぱり思う?でもさ…弟たちに教わりたい?」
「「「(…兄のプライドがゆるさない)」」」
3人とも絶望仕切った表情で心で囁く。
健「やっぱさっきのはなーし。無理だね」
浮「流石に恥ずかしいにも程がある…」
腕を組み、眉を寄せ険しい表情をする。
浮「…なら、いっそ兄貴たちに聞くべきじゃあないだろうか」
粋「ロクな兄がいないだろ、僕らの家に」
ロクな兄じゃない兄を知っていると言わんばかりの表情を浮かべると、机をバンッと手のひらで叩く。
粋「うわっ、うるさ…なに?」
浮「速敬兄貴が居る…!」
健「あんね、速敬あにさんそこまで頭よくないよ」
ピシャァンッと衝撃を受けたかのように目を見開く。
浮「そ、そうなのか…」
今まで知らなかったのか、と言った表情で粋唯が浮羽を見つめる。
あからさまに初めて知り、尊敬していた人物のダメ具合にがっかりしていた。
粋「そう凹まないで…お前よりは頭いいから」
健「ま、とりあえず俺たちがイッチバン悪いから!下はいないっすよー、兄弟のなかで!」
タシタシと浮羽の背中を元気づけるように叩くと相手も釣られて明るくなれるような笑みを向ける。
浮「…健永……」
その笑みに案の定釣られたようにパァァ、と表情が明るくなった。
粋「(簡単にわかりやすいやつ…)」
ダンダンッと机を叩いては上機嫌で「速敬兄貴は頭いい!」と繰り返し言い。
粋・健「はいはい」
簡単な返事で流す。
結構起伏が激しいというか単純なやつだった、浮羽はこの通り。
粋「まぁさ、このテストの悪さは今に始まったものじゃないから…全然驚かないよね」
健「なんとかしないとっすよね」
浮「全然どうにかする術が思い浮かばないぜ」
なんとかしようにもやはりアテがないという結論、という名の振り出しに戻る。
健「先生に頼むとかどうっすかね」
先生、といわれパッと思い浮かぶ人物がいたがそれは保健室に滞在している先生だった。
粋「…仲がよくともあいつからは教わりたくない」
浮「勉強にならなそうだ…」
二人の表情があからさまに不安、と言った顔になる。
健「でもでも!イッチバン聞きやすいっすよ!」
「「ん"ん~…」」
六男の提案に素直に『うん』と言えずに思わず唸る四男に五男。
ここまで悩む理由はまたとある話に出ることだろう。
健「なんでそんなに悩むんすか?」
二人の様子にはてさて、と言った様子で左右に首を傾ける。
粋「まずあいつ勉強できるの。」
一番重要なところについてズバリというも、「そりゃ、先生だからできるっしゃ!」と返答を返される。
浮「…金銭を要求されそうな気がする」
こんな返答に関しても「お礼に保健室のお手伝いくらいどうっすか!」と返されてしまった。
粋「すごい気が進まないんだけど…どうしてケンはそんなにあいつに教わりたいの…」
頬を掻きながら薄っすらと苦笑いを浮かべる。
健「実は実は実は!点数がよかったときは教えてもらってたんだぁ!」
その発言に二人の耳がピクリと動いた。
そう、ごく稀にとてもいい点数を取るときが幾度かあったのだった。
それに保健医が関与していることを知ると、身を乗り出して聞いた。
粋「何、教えるのうまいわけ…」
浮「マジか…代償はなんだったんだ…」
実はいい話を聞いてしまったのではないか、とゴクリと生唾を飲み込む二人。
健「教えるのうまいっすよ!とはいえ、何か要求されるかと思ったら全然ない!だからちょっとだけ保健室の手伝いしまっせ」
二パッと笑うと前回教えてもらった際の記憶を教えてくれた。
粋唯はにたりと笑みを浮かべると、ぐっと親指を立てこう言った。
粋「…出来した、ケン」
その言葉に横でうんうんと頷く浮羽。
浮「早速だが、今日の放課後にでも話をしにいくとしないか?」
有言実行、据え膳食わぬは男の恥!と後から声に出す。
粋「据え膳でもないでしょ…」
健「じゃ、決まりっすねー!よっしゃーっ」
数年経ったものの、なんとか成績をあげる術を見つけたのであった。
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