俺らは多兄弟!

春之介

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1.日常生活

長男の休日

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テスト終わりの休日、【威一郎、粋唯、速人】【速敬、浮羽、蒼天】【正臆、健永、莉媛】に分けられた部屋の自室に一人、威一郎は寝転がっていた。

威「あーあー…めっちゃ暇、マジで暇、つかあいつらマジでどこ行ったし…」
大の字に寝転んでも余るくらいだった。
威「誰か一人くらい居てもよくない?」
起き上がると、自室を出て行き他の部屋へと突撃する。
威「速敬ー!」
引き戸を開けるものの、そこの部屋を自室とする人物は誰一人としておらず。
仕方なく他の人の部屋に行くも「正臆~」と開けた部屋にも誰も居なかった。
威「おかしくね、9人も兄弟が居て誰一人としていないんだけど、マジなんなの、わけわかんねぇ」
ごく稀に自分以外が居なくなる現象に、唖然とした表情で毎度同じことを呟く。
仕方なく渋々自分の自室に戻ると、胡座で部屋のど真ん中に座り辺りを見回す。
共有の収納スペースとして大半のものは、部屋の押し入れの中へと仕舞われていたのだが…ふと威一郎はその押し入れに目が行った。
威「やましいものって男兄弟の癖に見当たらないんだよなぁ、あいつら。」
ニタァ、と極悪人面と言われても良いような歪な笑みを浮かべる。
せめて同室者のいかがわしいものだけでも漁りだしてやろうという魂胆だった。
威「まぁ、止める奴もいないから仕方ないよな、漁られてm」
と呟き押し入れを開けた瞬間に、部屋の扉が開く。
速人「忘れ物した…!!!」
押し入れをピシャンと閉めると、自分のテリトリーに戻ってきた弟の方へと即座に振り向く。
速人「って…あれ、兄さん暇人?」
即座に振り返ってきた相手に驚きを隠せないようで、瞬きを数回しながら相手を見る。
威「…実はさ、オレ今からちょーっと物色しようと思って…サ?」
相手の異様な雰囲気とニタァと笑った極悪人みたいな笑みに慌てて押し入れと長男の間に押し入る。
速人「へ、へぇ…そっか。」
頑なに押し入れを開けさせまいと両手を広げてガードの体勢をとった。
威「やっぱ押し入れん中になんかあんだな?」
あからさまな態度にニタニタと笑い出す長男、タチが悪い。
速人「い、いいい、いや、あるわけないって!!そんなの!」
威「どーけって、ほらほら、ないなら見せられるよな?」
自分の目の前にいる弟が左右にぶんぶんと首を振る。
速人「ほ、本当に勘弁…!!」
押し入れの扉の枠に手をかけ、踏ん張りながら退く気配はなく。
10センチほど離れた身長の相手は容赦なく相手に近寄り。
身長165センチの速人に対し、177センチの威一郎、大分身長差があった。
斎条家では、どのグループの三男も160センチ代というなぜか不思議な現象があった。
正臆、健永…三男グループだけは速人が160センチ代だった。
威「…まぁ、お前退かすくらい造作もないけど」
そう言った長男は七男の腕の下に手を通すとヒョイと担ぎ上げる。
速人「!!ば、うわっ、降ろせよ!?ちょ、誰かー!!!」
一気に視界が高くなり、不安定な場になったことにより、うわぁぁぁあ!!と悲鳴を上げながら助けを請う。
威「へっへっへっ…泣き叫ぼうかどうだろうが、助けは来ないからなぁ、なんせオレ以外は誰もいないからなぁ…」
もはや極悪人だ。
威一郎と見比べるとどうも中学生をおちょくっている高校生にしか見えず。
速人「うわ、うわぁぁあ!?」
弟の声からは悲鳴しか上がらない。
威「まぁまぁ、それはさておき…」
相手を片手で担ぎ直すと、空いている片手でガラリと押し入れを開ける。
速人「ちょっ!本当に勘弁、して!!」
降ろしてもらうために暴れるわけにもいかず、相手の肩にしがみつくも開けられた押し入れに焦りの表情を見せ。
威「ちょーっと見るだけだからな、ちょーっと」
片手で器用にゴソゴソと漁っていくうちに、手にゴトッと鈍い音がするものが当たった。
「ん?」と声を漏らすも、その音がしたものを手繰り寄せる。
速人「う…」
相手が手繰り寄せた箱は案の定速人の物だったようで、低く唸る。
威「あ、もしかしてビンゴ?っしゃー、こういうところだけは、カンがいいんだよなぁ」
にひひ、と笑いながら速人を降ろすと箱に手をかけ開けようとする。
しかしその手は降ろされた速人の手によって遮られた。
威「んだよ、ちょっとだけちょっとだけ~…って、イタタ!」
ぎちぎちと威一郎の手を固く掴む速人。
速人「この愚兄、その箱を開けたらタダじゃ済まさない。」
ゴゴゴゴ…と重いオーラを帯びながら怒り混じりな口調で淡々と告げる。
威「…わかったわかった、やめとくから離してくれや」
はぁ、とため息を吐くと渋々速人にそう言う。
…も、やめるつもりはさらさらなかった。
速人「…本当にやめる?本当に?」
弟からは完璧に疑いの眼差ししかなかった。普段の行いからのせいか全然信用されていない。
威「(手に取るようにわかるなぁ…)」
スッと速人の頭に手を伸ばすと、ポンポンとその頭を数回撫でる。
キョトンとした表情もするもどこかホッとした表情を浮かべた。
威「だけど、なぁ…御免!」
手を引くと、バッとその箱を脇に抱えダッシュして逃げる。
速人「ちょ、まっ!!?」
先に作戦を練っていた兄の方が早く、まんまと置いていかれてしまった。
そんな兄は颯爽と階段を降りていくも「あ"っ」と鈍い声を上げると、ガタタタッと痛々しい音が自室まで響く。
弟を撒こうとしたが為に階段から足を滑らせ落ち、箱の中身は散乱してしまった。
速人「え。ちょ、落ちたの!!」
見られたくない物ばかり入っている箱が無事かと、心配し部屋を飛び出すも「うえっ」っと変な声と共に兄同様に落ちていく。
威「え、マジで落ちてくんの、おう"っ!!」
見事に兄の腹部へと足が入った、その後にズンっと尻餅をつく。
速人「いた、た…」
痛みに声を上げていると、自分の下には青ざめ今にも吐きそうな兄の姿が視界に入る。
威「やばい、やばいやばい、マジでどいて、本当、うえっ」
女性のブロマイドや写真集などが辺りに散乱した状態で嗚咽を漏らす。
そんな現状に嗚咽を漏らしたいのはこっちだ……と内心苛立ちながら吐かれてはひとたまりもないので退く。
速人「…本当信じられない、人のもの漁らないでよ…」
ブロマイドなどを相手を避けて拾い上げながらグスグスと、呟く。
すると玄関から「ただいまー、速人いるー?」と声が響く。
速人「ぁ、正臆兄さん…威一郎兄さんがね…いじめてきた…」
正「女優のArikaちゃんがどっか行っちゃうって…って、弟になにしてんの、お前」
家に上がってきた三男が蔑むように長男を見つめる。
威「帰ってきたの、つか一緒にいたのね…オレ暇だったのよ、だから同室のコイツの部屋ものもを見ようとね?」
威一郎を見つめていた目が段々と細まり、あからさまに軽蔑されているようだった。
正「とりあえず、そこどいて…サインもらうんだから」
床に仰向けに寝転がってる相手を掴むと、はじによせ、一緒に拾い集めては入っていた箱に入れる。
速人「…はぁ…時間がないのに全く…」
箱を持ちあげようとするも、先に正臆がその箱を持つ。
正「ほら、早くサインペンとか持ってきな、これ私が持って行くから」
その言葉にこくりと頷くと、速人は先に階段を上がり二階の自室へ行った。それに続いて、威一郎を一度踏んでから正臆も後を着いて登っていく。
威「ちぇ、なんだよ、二人してさぁ」
二人が登って行ったのを見ると、ひょいっと起き上がりぶつくさと呟きながら立ち上がる。
威「あー、やめたやめた!素っ気なさ過ぎ、年頃かよ本当にマジで」
足音を酷く立てながら、玄関に向かい自分の靴を履くとコツコツとつま先で地面を叩く。家の中を見回しては、静かに戸を開けて出て行った。

威「はーっ、外の空気サイコー…」
両手を天に掲げながら、変化のない日常風景が繰り広げられる道を歩く。
(こりゃ、家に誰も居ねえのもよくわかんなぁ)
頭の後ろに手を組みながら、眉を顰める。この天気のせいで1人でいるようなものなのだから、尚更腹立たしく思うわけで。
「あーあ、やんなっちまうね、本当」
自分を照らす太陽に目を細めながら睨みつけた。
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