転生して最強になった青年の異世界冒険

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プロローグ

最強木の実の伝説

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 高くそびえ立つ世界樹に、それはあった。
世界の闇と光を均衡に保つ重要な役割を持つ世界樹。
そこには光輝く黄金の木の実が、腐ることもなく実っているという伝説があった。

 世界樹の回りには、幾つかの大きな街と、点々と広がっている小さな町が巨大な都市を作り上げていた。
 その内の一つにという村があった。
人口二百人程度の農業が盛んな町で、貧民の割合が最も多い町だった。
その中の一家の長男、17歳の青年は何時か町の外へ出て世界樹の内部へと入ることを夢見ていた。
 都市を作り上げた市長と、政府によって世界樹は厳重に守られていて、町の中から見上げることしか出来なかったのだ。
 世界樹の内部へ侵入することは、政府の条約によって固く禁じられていた。
それでも青年は諦めず、剣の修行や勉学を磨いて夢を叶えようと努力していたのだった。

 そしてで世界樹に侵入、木の実を食べた青年は最強になりましたとさ。

「なんやかんやって適当だよなー?」

青年の隣で部厚い本を閉じた友人がそう問いかける。

「だって世界樹の回りはモンスターの巣窟だし、世界樹だって今は枯れて、モンスターを呼び出す原因になってんじゃん」
「まあこれって五百年前の話だし、伝説って語り継がれてる間に変わっちゃうもんだからさ…気にしない方がいいよ?」

(…そもそも、このなんやかんやって僕しか知らないし)

 そう心のなかで思った青年の名は、レオン=エルサレム。
…世界樹の最強木の実を食した本人で、この世界の冒険者ギルダーである。

 ちなみに、レオンはエルサレムという町出身でもなく、異世界に元々居たわけでもない。
――伝説の青年の部分は恐らく作り話だ。ただ名前と町の名前が一致するので何とも言えない。

 元々東京在住、現在異世界在住。

何故かわからないがいきなり異世界に飛ばされてきた部外者なのだ。

彼、元々の名前は有谷ありや玲音れお

 東京に戻るべく、方法を探しながら冒険同盟ギルドで資金を稼いで日々を過ごしている。


「あ、レオン!いい依頼クエスト来てるぜ!」

 そう言いながら僕に依頼が書かれた紙を突き出してくる、同年代の青年の名前はアトラス=ヴァレンチノ。

「アル、依頼持ってくるのはいいけどレベル平気?」
「もちろん!最近やっとレベル30なったから!」

 愛称のアル、で呼んでやると彼は照れ臭そうな笑みでいつも明るく返してくれる。
彼は僕の命の恩人でもあり、大切な冒険者パートナーだ。

 伝説に書いてある最強木の実は、本当の事実らしい。
何せ、僕が食べた木の実も黄金で、あの樹木も話の内容からして世界樹だったからだ。

 そして知らず知らずに最強になった。

 しかし、流石の異世界最強も空腹には勝てなかった。
思いの外、最強木の実は最強にはなれても満腹にはなれなかった。
 世界樹を何とか降りて、彷徨い、やっと街道に出ると、そこを通りかかったアルが、親切に食べ物を与えてくれて、そのお礼と今後の生活のために、二人で冒険者をしている。

 この異世界は仕組みは分からないが、RPGのようなレベル制があり、それによって体力など全般の能力が決まってしまう。

 もちろん、最強になった僕のステータスは全て最高レベルだ。気がかりなこともあるが、とりあえず考えても仕方がないので放置している。

 それよりも依頼のことだ。

「えっと、畑を荒らすモンスターに困っています。至急討伐をお願いしたい。……モンスターはサンダーウータン」
「…あ、サンダーウータンってデカイ猿だろ?雷系魔法使ってマヒさせてくるB級モンスター」
「そうなんだ…」

 異世界に来て間もない僕には、モンスターに関して知識は全くない。なので度々、アルにはモンスターの解説をしてもらっている。
 例えどんなモンスターでも、僕は負けることはないと思うが、一応最強だということは隠して暮らしているため、わざわざレア度の低い装備を身に付けるようにしている。
レベルが高くても、装備が弱ければそれだけ隠し通せるからだ。

「それじゃあ行きますかー、回復キュアアイテムは?」
「十分仕入れて置いたから大丈夫」

 念のため買い揃えておいたアイテムと剣を持って、依頼場所のへと向かう。

 この森は回復アイテムに使われる薬草や、 序盤でも倒せるランクの低いモンスターが生息していて、狩り場になっている。
その中でのBランクモンスターは中々高い方だ。

 モンスターは、冒険同盟によってランクにより分けられている。
主に、発見されたモンスターはFからSS程まで分布され、そのランクによって依頼書の難易度も変わるわけだ。
 もちろん、受けられる依頼の許可も変わってくる。
冒険同盟側からしたら、レベルの低い冒険者に高難易度の依頼を受けさせるわけにはいかないので、それぞれ冒険者には冒険者資格ライセンスというものが配られている。
これもまた5から1まであり、数字が小さい方が優秀だ。

 こうして冒険者が無謀な依頼で命を落とさないように配慮しているわけだ。
 一つ疑問なのが、仮の肉体になったはずの僕がもし死んだらどうなるか、なのだが…これは当分分かりそうにはなかった。

 僕らは移動用の馬に飛び乗る。
冒険同盟に参加すると、冒険者資格以外にも一人一頭の割合で自分の馬が与えられる。
移動に不便な異世界にとってこれほど優秀な移動手段はないだろう。

 自身の馬腹部を軽く踵で蹴り、ゆっくりと二頭が走り出す。
辺りは涼しい風が吹く平原だ。
何時ものように、僕らは会話を楽しみながら依頼をこなすために駆け抜けた。

――――しかし、今日から平和は訪れない。
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