好き、しよ!

狭雲月

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3.ヤバイ、オレの生活、段々侵食されてないか?

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 っていう、思い出すだけでもすごく疲れる事があり。

 「私はもう滝口くん専用なんだ!」と俺へのノロケと共に、元カレと下心アリアリの男子達を、兵梨がそっけなく追い払ったせいで、オレは学校中の噂の人となった。

 あんまりうれしくない有名人状態だ。

 理一がからかって言うよりも、もっとえげつない言葉でイヤミを行ってくる元カレたちや、噂だけで兵梨の事を判断してる奴らの野次に、オレはうんざりした。
 しかし、理一にカノジョを取られた男達に、厭味を言われるのは結構あるから、それはまだいい。慣れているから、何とか立ち直れる。
 それよりも、なんかズレた兵梨のアタックの方が疲れる。
 あぁ、オレがいることで、彼氏という名の特定多数との奔放な関係を、もたなくなっただけでもいいのか……。
 早くオレ以外の、しっかりしたを捕まえてくれればいいのに。

 そう思ってセクハラまがいの好意を拒否し続けるのだが、兵梨の態度は益々ひどくなる。
 教室でオレだけじゃなく、理一もいるのにパンツ見せてくるなんてどうなんだ。

 ……はっ! いやいやいやっ!!
 オレだけだとしても、教室じゃなかったとしてもっ。
 簡単にパンツ見せちゃいかんだろう!

 兵梨に毒されて、段々オレの価値観もヤバくなってないか?

 理一にやっと数学を教え終わると、「お礼~」と言って差し出されたので、飴かと思って何となく受け取ると、それはコンドーム。
 投げつけて返してやったら「おおー。生でヤルつもりなのか鬼畜ぅ~」とからかわれたので、「もう勉強教えないからな」と言い捨ててやった。
 ぶーぶーと文句を言う声が聞こえるが、男がやっても可愛くない、知るか。
 教室から出ると、少し離れたところでぽつんと一人、兵梨が待っていた。

 ――まだ、いたのか。

 オレに気付くと、うれしそうにぱっと表情を輝かせるが、さっき怒られたことを思い出してすぐにしゅんとして、オレの顔色を伺うように、おずおずと上目使いで見つめてくる。
 のは……可愛い。
 可愛いんだけどさ。

「ねぇ、漣くん」
「何?」
「漣くんって、もしかして理一くんとできてるの? だからゆうあじゃダメなの?!」
「…………はぁ?!」

 この娘とんでもない事、言い出しやがった……。

「男同士だと、AFかぁ……ゆうあやったことないよ」

 おいおいおいちょっと待て、お前一体どんな想像を?
 ちょっと想像しかけて、鳥肌が立った。
 もちろん悪い意味で。

「でも、漣くんが好きだっていうならっ、今度のお小遣いで色々買って予習してくるから! 理一くんより漣くんを満足させ……」
「いや努力の方向性が違うから、っていうかキモい妄想するなよ、理一とは普通に友達だ」

 一体、どんな努力を。

 その想像を打ち消すように、ごすっと、結亜の額にチョップをする。
 が、兵梨は今度は動じず。
 チョップを受けたまま、じっとオレの顔を見た。

「本当?」
「それ以上言うと、兵梨とは口もききたくなくなる」
「そうなんだ、よかったぁ。じゃあ……一緒帰ろ?」
「別に……いいけど」

 だからなんで「じゃあ」なんだ。

 すごくうれしそうに笑う兵梨に。
 オレと帰るのが、何がそんなにうれしいのか本気でわからなかった。



 一緒に下校しながら、兵梨は上機嫌だった。

 胸をぎゅうぎゅうと押し付けて、無理やり腕を組んでくる。初めは振り払おうとしていたオレだったが、あきらめて好きにさせることにした。ダメなの? とか、しゅんとした目で見つめられるとこっちの方が悪い事してる気になってくるほうが、心臓に悪い。
 兵梨は制服のシャツの胸元のボタンをかなり外していて。ブラがチラチラどころか……腕を組むほど密着しているオレの視点からは、かなり見えていた。
 今日は黒とエメラルドグリーンのストライプで、縁取るように黒のフリルが付いている。
 黒いフリルが好きなのか?

「おい……見えてるぞ」
「みせてるんだよ~かわいいでしょ? みせブラ!」

 そう言って、服の襟をめくって、ブラを見せてくる。
 自信ありげにいいきったよ、こいつは……。
 ちょっとウンザリしたオレのオーラを感じ取ったのか。

「あれこの色。き、嫌いだった?ピンクの方がいい?あ、もしかしてノーブラの方がスキ?じゃあ外すね」
 道の真ん中にも関わらず脱ぎかけたので、またまたチョップをお見舞いする。
 今度は、結亜はわざとらしく痛がった。
 オレは理一をそばで見てきて培った知識を総動員し、胸元のボタンとスカートの長さを、常識の範囲内に納めることに誘導する事にした。
 「オレの好みじゃないから、変えろ」というモテ男にしか言えない我儘なセリフ。
 まさかオレごときのレベルで、理一テクニックを使えるような事態に陥るとは。通用するかはわからんが。

「スカート短いな」
「うん、短い方がカワイイし……足見せたいんだもん! あ、今はモチロン漣くんにだけ、だよ?」
 なんでも可愛い=エロいが基本なのか。
 なにかを期待するように、首を傾げながら兵梨はこっちを見るが、オレは心を鬼にして言う。
「オレ、実は短いの好きじゃねーんだよ」
「え?」
「制服もネクタイしてる方が、かわいいと思うし」
「そ、そうなの?」

 ネクタイしてたら、まだ胸元あかないしな。という本音は隠す。

「漣くんって……チラアリズム萌え? パンモロよりパンチラ派? じゃあ、明日からしてくるね!」

 うわぁ、理一テクニック本当に通用した。
 結亜の斜め上の反応はともかく、何だか……感動してしまう。

「あ。でも使わないから無くしちゃった……買いに行きたいから付き合って、くれる……かな?」

 オレの一言でわざわざ買うのか。
 少しびっくりしてオレは慌てて言った。

「じゃあオレ何本か持ってるし、やるよ」

 無言。

「あ。嫌だったか?」
 兵梨が固まる。
 うちのガッコは結構校則がゆるい。
 制服のブレザーさえ着ていれば、ネクタイとセーターは校則で自由だから何着てもいいけど。まぁオレの学校指定のネクタイなんて兵梨には趣味じゃねーんだろう。

「ううん! すっごくうれしい~えへへぇ」

 オレが声をかけると我に返ったように、兵梨はとろけるように喜んだ。
 マジで顔がゆるゆるだ。
 使い古しのネクタイごときでこんなに喜ばれるとは……と、その時は思っていたが。
 次の日に理一から「あーカレカノでネクタイ交換するの流行ってるよな。俺はキリ無いんで断ってるけどさー結局交換しすぎて、女の子同士が交換することになっちゃうし、はは」といわれ。
 そんなつもりは一切なかったオレは、途端に恥ずかしくなった。

「いや、まてまて、オレ達は交換してはいないから、ノーカンだっ!」

 反論してみても、反対に兵梨は上機嫌だ。
 それはまるで彼氏に指輪でも買ってもらったような勢いで。


 それを見てると……オレも仕方ないか。と、思いながらもどこか自然と胸の鼓動が早くなっているのにそれを見て見ぬフリをした。
 
 
 
 
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