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贈り物
しおりを挟む晩餐会に招待されたのは、王と直属の血縁がある王族達。
皆華やかなドレスを纏って、各々通された席に座っている。当然王太子のノエル様は上座に案内されるわけで、玉座からも近い。
こんなに良い席に僕が座って良いのか、ソワソワと辺りを見回す。ノエル様に替えて貰ったシャツの襟を正して、きっちりと1番上のボタンまで閉じられた。
緊張からか、暑くて少し窮屈だったから、ボタンを一つ開けると
「緊張してる?レイが一曲歌ったら帰ろう。」
「はい、でも……精一杯頑張ります。上手く歌えたら良いですけど。」
「大丈夫、僕がいる。」
さり気なく僕が開けたボタンを閉め直しながら、優しく頭を撫でてくれた。
今日もアイマスクをして、顔の半分しか見えない。悪いことかもしれないけど、ノエル様の顔や表情の全部を知ってるのは僕だけ、みたいで……嬉しい。
愛って、怖い。こんな僕でさえ人並みの独占欲が芽生えてしまうんだから。
ノエル様の斜め前の席は空席。きっと、メルが言っていた婚約者が座るんだろう。
頭では仕方ないこととわかっているのに、胸の奥がちくちくと痛んだ。
ノエル様の席にはひっきりなしに皆が挨拶に来て忙しない。無視していたノエル様だけど、側近の1人に王様が呼んでいるといわれて、渋々席を立った。
「すぐに戻るから、座っていて?」
「はい!わかりました。」
「この間みたいなことは、ダメだよ。
わかってるね?」
「もちろんです、もう…勝手にいなくなったりしません。」
「良い子。何かあったら呼んで。」
「へ?」
そう言って、右手の薬指に嵌めてくれたのはノエル様の瞳の色と同じアクアマリンの宝石が付いた指輪。
「……うわぁ、ノエル様の瞳の色だ。
綺麗ですね。」
「……あげる。ひと時も離さず付けていて。」
「こ、こんな高価なもの貰えません!!あ!?ノエル様!?」
外しちゃダメだよ、と言い残したノエル様は瞬きの間に目の前から消えた。
話を最後まで聞いてくれないのは、あの人の悪い癖だな。
こんなに美しい指輪、貰っちゃって良いのかな。
キラキラと輝く碧色の宝石を眺めていると、不思議とノエル様と目が合っている気がして……嬉しくなる。
「ありがとうございますって
……言いたかったのに。」
……ノエル様の瞳の色、綺麗だ。
うっとりと指輪を眺めていると
ふいに、僕の肩にポンと手が置かれて
「ひゃあ!?」
「!?」
驚いて飛び上がった。
「くくっ、相変わらず色気のない声だな。」
そう言って、小さく笑うネオ様が立っていて、慌てて頭を下げる。
「お、お久しぶりです。
先日は失礼なことを……お許し下さい。」
「あぁ、お前のローブを返しに何度か家に行ったのに、あの小さな双子達が通してくれなかった。直接渡したいと言ったらノエル兄様の許可がない人は家に入れないと。」
「そうだったのですね、わざわざ…すみません。僕の手縫いなので捨ててくださっても……」
「そんなことは出来ない。……晩餐会が終わったら返しに行くから。」
「でも、わざわざそんな……。」
「ノエル兄様が許可するはずないから、
部屋の窓を開けておけ。」
「窓、を?」
「必ずだぞ。」
「あっ、ネオ様……!?待って下さ…!」
それだけ言うと、ネオ様も踵を返し
いなくなってしまう。
この兄弟は……話を聞いてくれない血筋なのだろうか。
「……僕は、どうすれば良いの?」
わざわざネオ様に、家に足を運んでもらうわけにはいかないこと、わかってるけど。
ローブを返して貰うだけなら、大丈夫かな?
うーん、と悩みながら
不意に指輪に視線を移すと
チリッ……
「え?熱……い?」
指にチリチリと焦げつくような熱を感じた。
軽く抓られるような僅かな痛み。
気のせい……?かな。
とにかく、今は晩餐会と披露する歌に集中しよう。
指輪を片手でぎゅうっと握って、ふうっと息を付いた。
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