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東京追跡編
何で、私の名前を知っているのよ?
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新聞記者の田村智は今年の内閣を打倒するための穴がないかを探っていた。
彼からすれば、内閣を倒す事は正義であり、ジャーナリストとしての使命でもあると感じていた。
だからこそ、時の内閣総理大臣が白いドレスを着た美しい女性を連れて歩くのを見た時に思わず感嘆の笑みを溢す。
このまま女性の後を付けていれば、あの妖怪と称される総理も簡単に倒れるだろう。
カメラを片手に持ってこっそりと後を付け、路地裏にまで辿り着くと、何故か彼の前から政治家の姿が消え、代わりに大昔に日本人がしなくなったと思われる団子状の髪型をした男が、背後から頭を叩かれて倒れてしまう。
そして、倒れた田村の前に先程の女性が現れて田村の人差し指を手に取ると、爪と肉の間を針で刺す。
「ッ、ギャァァァァァァァ~!!」
耐え切れずに大声を出す田村。だが、目の前の女は容赦しない。
彼女は歪んだ笑みを浮かべて言った。
「あんたの目的は何なの?さぁ、また指と肉との間にこれを挟まれたい?」
女は針を見せて尋ねた。彼女の持つ針は銀色に光り、夜の月光に照らされて薄く透けていた。
田村はそれを見て思わず生唾を飲み込む。
が、女は無言でそれも、目を鷹の様に光らせてたむらを睨んで、彼の中指を手に取って針を爪と肉の間に突き刺す。
「これで喋らないなんて気持ちも吹き飛ぶでしょ?いい加減、喋りなさいな」
「どうする?姉貴?こいつ、このままぶち殺すか」
弟と思われる男の問い掛けに女は首を横に振っていく。
「いいえ、まだよ。こいつの背後に居る奴を炙り出さなきゃ」
彼女はサディスティクな笑みを浮かべて言った。
田村智の背筋が強張っている事に気が付く。冷や汗が首筋を伝って服の下を流れていく。
自分はこのまま殺されてしまうのだろうか。このままあの女に何の意味もなく殺されてしまうのだろうか。
そんな事を考えた時だ。彼はかつて別の取材の時に出会った人から聞いた妖とその総大将の存在とそして名前を思い返していく。
何故、あの顔を見た時に思い出したのだろう。その事とその総大将の名前を。
「玉藻……玉藻紅葉。それがお前の名前だな?」
それを聞いた途端に女の表情が変わっていく。明らかな動揺。そして、醜く釣り上がっていく口の端。
女は倒れていた田村智の顔を蹴り付けて低い声で問い掛ける。
「あんた、何で、私の名前を知ってんのよ?」
「……聞いたんだ。あの男から……私がまだ文化部に勤めていた頃に取材した占い師から……」
それを聞いた時に女は半ば衝動的に足の甲を踏み付けていく。それこそ、手に入らない輸入品のおもちゃを欲しがって泣き喚く幼い子供の様に。
「クソがッ!あの男はいつも、いつも私を追いかけ回してッ!あまつさえ、私が上手く動いている所にまでやって来てーー」
「姉貴、なら、おれがそろそろお灸を据えてやろうか」
それを聞いて妖鬼の総大将、玉藻紅葉は首を横に振る。
「今回はダメよ。あいつは私の逆鱗に触れた。言うなれば、虎の尾を踏んだのよ。もう生かしておけないわ」
「……仰せのままに姉君」
そう言うと、彼女の双子の弟、草薙遠呂智は腰に下げた直剣を振りながらその場を去っていく。
紅葉は弟が立ち去るのを見てから、自分の後を付けてきた記者の男への拷問を再開する。
その顔は明らかに不快感で歪んでいた。
直剣を振り回し、人々の首を落としながら、妖鬼の総大将の双子の弟、草薙遠呂智はここに至るまでの出来事を回顧していく。
彼は姉の命令を受け、例の三人いや、長年、自分たちを追い続けているあの忌々しい陰陽師の男をも纏めて始末するのだ。
そのために、遠呂智は剣を振った。
人の首が飛び、辺りの地面や僅かばかりの電柱へ真っ赤な血が飛ぶ。
人々を殺傷する謎の光、そしてそれが止んだら突如、現れた大昔の服を着た男が現れたためか、建物の中にいた人々はそれを恐れて立て籠ってしまう。
加えて、遠呂智が通行人に戦いの邪魔をしない様に睨んだ事も影響して人々は電話もない家の中へと立て籠ってしまう。
遠呂智はそれを見て笑う。そして、先程、自分の目の前に現れた青年を再び見つめる。
そこに現れた青年は刀ではなく、何と平安の時代以後は公家しか使用していなかった太刀を持っており、最初に対面した際にはは人道的な行動を行なった自分に向かって抗議の言葉を飛ばす程の勇敢な男だと確信した。
自分はその罵声に答えて姿を表し、名乗りを上げる。だが、あの男は自分に向かって斬りかかっていく。
青年の太刀と男の直剣の二つの刃が混じり合い火花を飛ばす。
一度、刃同士を離し合い、今度は互いに右斜め下から刃をぶつける。
金属音が鳴り響くのと同時に、距離を取って刃を交わす。
「はっ、すげぇなお前!中々居なかった逸材だよ!だが、おれを倒すには及ばねぇ!」
そう言って遠呂智は直剣から短い雷を飛ばす。雷を風太郎は太刀から氷を投げ飛ばして防いだが、遠呂智は構う事なく雷を飛ばしていく。
いや、短い雷だけでは足りないと思ったのか、刃に雷を宿らせて風太郎の元へと向かっていく。
風太郎は刃に氷を宿らせて遠呂智を迎え撃つ。
氷と雷とがぶつかり合い黄色のオーラと水色のオーラとを周りに散らす。
二人の凄まじさを垣間見た三人は呆然とその戦いを眺めていた。
だが、このまま黙って戦いを眺めていたのなら、風太郎は死んでしまうに違いない。
そう、確信したのは長年、あの男との戦いを繰り返していた長谷川零。
零は人型の人形を零の元へと飛ばし、遠呂智を攻撃しようと目論むが、遠呂智は飛んできた紙を例の剣で細切れにしてしまう。
しかも、その僅かな一撃を縫って彼の元に刃を振った風太郎をその直後に弾き飛ばしたのだから、彼の器量の凄さが分かる。
遠呂智は倒れても尚、自分に向かって来ようとする風太郎に向かって警告の言葉を投げ付ける。
「やめときな。僕ちゃん。おれには勝てねぇ。姉貴にはあんたらを殺せと言われてるが、オレはお前の様な強い奴を殺すのは勿体ねぇと思っているんだぜ、この場は見逃してやるからよぉ~。大人しく去りな」
へらへらとした口調を引っ込め、最後にはドスの効いた低い声で風太郎の気力を削ぐ。
完璧なやり方だ。風太郎は敵ながら、この男が恐ろしく思ってしまう。
すると、彼の前に一人の男が現れる。それも、風太郎と同じ様な太刀を持った男が。
遠呂智は目の前に現れた男を見て思わず鼻を鳴らす。
「誰かと思えば、ずっとおれに負け続けていた陰陽師の坊主じゃねぇか。ここに来ておれを始末するつもりかよ。おい?」
「勿論だ。天安の時代からずっとお前を殺すために合間、合間に腕を磨いたんだからな」
そう言うと、青年は服の中に隠していた太刀の鞘を地面の上に放り投げて遠呂智に向き合う。
「今、ここでお前を始末して、お前とお前の姉の首を狩るッ!」
「やれるものならやってみろ」
二人の男は互いに地面を蹴って前へ前へと移動して、道の中央で斬り合っていく。
彼からすれば、内閣を倒す事は正義であり、ジャーナリストとしての使命でもあると感じていた。
だからこそ、時の内閣総理大臣が白いドレスを着た美しい女性を連れて歩くのを見た時に思わず感嘆の笑みを溢す。
このまま女性の後を付けていれば、あの妖怪と称される総理も簡単に倒れるだろう。
カメラを片手に持ってこっそりと後を付け、路地裏にまで辿り着くと、何故か彼の前から政治家の姿が消え、代わりに大昔に日本人がしなくなったと思われる団子状の髪型をした男が、背後から頭を叩かれて倒れてしまう。
そして、倒れた田村の前に先程の女性が現れて田村の人差し指を手に取ると、爪と肉の間を針で刺す。
「ッ、ギャァァァァァァァ~!!」
耐え切れずに大声を出す田村。だが、目の前の女は容赦しない。
彼女は歪んだ笑みを浮かべて言った。
「あんたの目的は何なの?さぁ、また指と肉との間にこれを挟まれたい?」
女は針を見せて尋ねた。彼女の持つ針は銀色に光り、夜の月光に照らされて薄く透けていた。
田村はそれを見て思わず生唾を飲み込む。
が、女は無言でそれも、目を鷹の様に光らせてたむらを睨んで、彼の中指を手に取って針を爪と肉の間に突き刺す。
「これで喋らないなんて気持ちも吹き飛ぶでしょ?いい加減、喋りなさいな」
「どうする?姉貴?こいつ、このままぶち殺すか」
弟と思われる男の問い掛けに女は首を横に振っていく。
「いいえ、まだよ。こいつの背後に居る奴を炙り出さなきゃ」
彼女はサディスティクな笑みを浮かべて言った。
田村智の背筋が強張っている事に気が付く。冷や汗が首筋を伝って服の下を流れていく。
自分はこのまま殺されてしまうのだろうか。このままあの女に何の意味もなく殺されてしまうのだろうか。
そんな事を考えた時だ。彼はかつて別の取材の時に出会った人から聞いた妖とその総大将の存在とそして名前を思い返していく。
何故、あの顔を見た時に思い出したのだろう。その事とその総大将の名前を。
「玉藻……玉藻紅葉。それがお前の名前だな?」
それを聞いた途端に女の表情が変わっていく。明らかな動揺。そして、醜く釣り上がっていく口の端。
女は倒れていた田村智の顔を蹴り付けて低い声で問い掛ける。
「あんた、何で、私の名前を知ってんのよ?」
「……聞いたんだ。あの男から……私がまだ文化部に勤めていた頃に取材した占い師から……」
それを聞いた時に女は半ば衝動的に足の甲を踏み付けていく。それこそ、手に入らない輸入品のおもちゃを欲しがって泣き喚く幼い子供の様に。
「クソがッ!あの男はいつも、いつも私を追いかけ回してッ!あまつさえ、私が上手く動いている所にまでやって来てーー」
「姉貴、なら、おれがそろそろお灸を据えてやろうか」
それを聞いて妖鬼の総大将、玉藻紅葉は首を横に振る。
「今回はダメよ。あいつは私の逆鱗に触れた。言うなれば、虎の尾を踏んだのよ。もう生かしておけないわ」
「……仰せのままに姉君」
そう言うと、彼女の双子の弟、草薙遠呂智は腰に下げた直剣を振りながらその場を去っていく。
紅葉は弟が立ち去るのを見てから、自分の後を付けてきた記者の男への拷問を再開する。
その顔は明らかに不快感で歪んでいた。
直剣を振り回し、人々の首を落としながら、妖鬼の総大将の双子の弟、草薙遠呂智はここに至るまでの出来事を回顧していく。
彼は姉の命令を受け、例の三人いや、長年、自分たちを追い続けているあの忌々しい陰陽師の男をも纏めて始末するのだ。
そのために、遠呂智は剣を振った。
人の首が飛び、辺りの地面や僅かばかりの電柱へ真っ赤な血が飛ぶ。
人々を殺傷する謎の光、そしてそれが止んだら突如、現れた大昔の服を着た男が現れたためか、建物の中にいた人々はそれを恐れて立て籠ってしまう。
加えて、遠呂智が通行人に戦いの邪魔をしない様に睨んだ事も影響して人々は電話もない家の中へと立て籠ってしまう。
遠呂智はそれを見て笑う。そして、先程、自分の目の前に現れた青年を再び見つめる。
そこに現れた青年は刀ではなく、何と平安の時代以後は公家しか使用していなかった太刀を持っており、最初に対面した際にはは人道的な行動を行なった自分に向かって抗議の言葉を飛ばす程の勇敢な男だと確信した。
自分はその罵声に答えて姿を表し、名乗りを上げる。だが、あの男は自分に向かって斬りかかっていく。
青年の太刀と男の直剣の二つの刃が混じり合い火花を飛ばす。
一度、刃同士を離し合い、今度は互いに右斜め下から刃をぶつける。
金属音が鳴り響くのと同時に、距離を取って刃を交わす。
「はっ、すげぇなお前!中々居なかった逸材だよ!だが、おれを倒すには及ばねぇ!」
そう言って遠呂智は直剣から短い雷を飛ばす。雷を風太郎は太刀から氷を投げ飛ばして防いだが、遠呂智は構う事なく雷を飛ばしていく。
いや、短い雷だけでは足りないと思ったのか、刃に雷を宿らせて風太郎の元へと向かっていく。
風太郎は刃に氷を宿らせて遠呂智を迎え撃つ。
氷と雷とがぶつかり合い黄色のオーラと水色のオーラとを周りに散らす。
二人の凄まじさを垣間見た三人は呆然とその戦いを眺めていた。
だが、このまま黙って戦いを眺めていたのなら、風太郎は死んでしまうに違いない。
そう、確信したのは長年、あの男との戦いを繰り返していた長谷川零。
零は人型の人形を零の元へと飛ばし、遠呂智を攻撃しようと目論むが、遠呂智は飛んできた紙を例の剣で細切れにしてしまう。
しかも、その僅かな一撃を縫って彼の元に刃を振った風太郎をその直後に弾き飛ばしたのだから、彼の器量の凄さが分かる。
遠呂智は倒れても尚、自分に向かって来ようとする風太郎に向かって警告の言葉を投げ付ける。
「やめときな。僕ちゃん。おれには勝てねぇ。姉貴にはあんたらを殺せと言われてるが、オレはお前の様な強い奴を殺すのは勿体ねぇと思っているんだぜ、この場は見逃してやるからよぉ~。大人しく去りな」
へらへらとした口調を引っ込め、最後にはドスの効いた低い声で風太郎の気力を削ぐ。
完璧なやり方だ。風太郎は敵ながら、この男が恐ろしく思ってしまう。
すると、彼の前に一人の男が現れる。それも、風太郎と同じ様な太刀を持った男が。
遠呂智は目の前に現れた男を見て思わず鼻を鳴らす。
「誰かと思えば、ずっとおれに負け続けていた陰陽師の坊主じゃねぇか。ここに来ておれを始末するつもりかよ。おい?」
「勿論だ。天安の時代からずっとお前を殺すために合間、合間に腕を磨いたんだからな」
そう言うと、青年は服の中に隠していた太刀の鞘を地面の上に放り投げて遠呂智に向き合う。
「今、ここでお前を始末して、お前とお前の姉の首を狩るッ!」
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