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妖鬼対策研究会編
桐生桃動く!
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海崎英治は優れた対魔師の素質を持っていたのだが、両親が大学を卒業する事を期待していたため、両親の信頼に応えるために、彼は名門と名高い正妖大学を受験し、合格したのだ。
当初、彼はそこで四年間の勉学を務めてから、対魔師になろうかと考えていたが、ある日、そんな彼に転機が訪れる。
何と、彼の前に妖鬼と化した男が駅の近くの喫茶店に現れて銃を振るい始めたのだ。
彼はやむを得ずに普段は隠し持っていた刀を使用して地面の下にその刃先を思いっきり突き刺す。
すると先程までの男と自分との位置が入れ替わり、男は両手に持っていた散弾銃を持ったまま喫茶店の椅子の上に座っていた。
そして、そのまま英治は刀を持って席にまで走り、無言で男の首を跳ね飛ばす。
その時に女性の店員が悲鳴を上げたのは跳ねた男の首から血が飛び散り、店内に飛び散るのだと思ったからだろう。
だが、不思議と血は飛び散らない。あろう事か、彼らの前で跳ねた男の体が光り、ついには消滅するという字体が代わりに起こったためである。
英治の破魔式の特徴は自身と相手の立ち位置とを入れ替えるというものであった。
それ以外の特性もあるのだろうが、幼少期から勉学が優先されたままであったために、未だにこれ以外の破魔式は使えない。
だが、それでもこれだけの騒動を起こしたのだ。彼は十分に目を引いた。
後日、三年生の日下部暁人となる青年が大学の図書室で古書を読んでいた自分の前に現れて、彼を妖鬼対策研究会へと誘う。
英治はその誘いを二つ返事で請け負い、以後は学業と妖鬼を倒すための研究。そして、周辺もしくは、電車で移動できる範囲内の妖鬼の討伐を行なっていく。
その際に役に立ったのが、彼の破魔式『悪魔の取り替え』である。
いざという時にこれは不利な状況を打開するのに使われ、何度も仲間に頼られ、その度に自分と敵の位置を入れ替えていく。
今回もそうだ。彼は面倒臭がりながらも、仲間のために破魔式を使用する。
彼は木の上で仲間たちが猿を追い詰めていく姿を眺めながら、苦笑する。
仲間はそれぞれが目立つ破魔式を持っているのだ。
自分の様な破魔式は大人しくしておくに限る。
そんな事を思いながら、彼は木の上に寝転がっていく。
自分の番がくるまで寝ておくのが的確だと思ったのだ。
それに夜もそろそろ深くなってきている。だが、彼らは自分を寝かしてはくれない。
部長の日下部暁人は大きな声で木の上で寝ている青年を呼ぶ。
「お前も参加してくれ!あの忌々しいエテ公を消し去るためにな!」
彼は緩やかな微笑を浮かべて木の上から飛び降りて、持っていた剣を構えて中央の庭園に向かう。
てっきり、事態は良い方向に向かっているかと思われたのだが、そうでもないらしい。
六人対一体の戦いは互角に進み、全員が疲弊している様だ。
どういう状況なのかを部長の暁人に尋ねると、彼はこう答えた。
「あのエテ公め、頻繁に指を切ってオレたちを爆殺しようとしやがる。だから、こんだけの人数でも仕留めるのに苦労しているんだ」
彼はそっけない返事を返して例の猿と向き合う。
猿はもう一度、指を飛ばして攻撃を仕掛ける。
だが、今度もまた風太郎の氷の牢によって猿の起こす爆発は未然に防がれてしまう。
どうすれば良いのかとあぐねていると、彼はある秘策を思い付く。
彼は青色の丸い眼鏡をかけた地味な事務員の女性、桐生桃に向かって声を掛ける。
「私の破魔式でですか?本気で使うなら、構いませんが、どうなっても知りませんよ」
「あぁ、構わん!責任はオレが持つ!あのエテ公を地獄に引き摺り込んでやろう!」
桐生は黙って眼鏡を人差し指で上げてから、大きく呼吸を吸って刀を振るう。
すると、地面の上に大きな炎と岩が描かれた紋章が描かれてそこから炎が湧き上がったかと思うと、同時に岩石が飛び、空中を飛び回っていた小さな猿の顔を直撃したかと思うと、その勢いのまま地面へと下がっていき、猿を地面の上で捕らえた。
猿はいやらしい悲鳴を上げてその場から逃れようとしたが、それは彼女の岩石が許さない。
岩石はそのまま小さな猿の上で爆発を起こして猿の体を燃やしていく。
猿指は狂気の乱舞を踊りながら、雄叫びを上げたが、桐生桃としてはそんな敵の苦痛など知った事ではない。
彼女はそのまま地面を蹴って、飛び上がると燃え盛る炎を猿指に向かって振っていく。
猿指は最後の悪あがきとばかりに、指を飛ばしたが、それは風太郎の氷結下僕に捕らえられて小さな氷の手下を道連れにしたのみで終わってしまう。
宙の上で氷が粉々に砕かれるのと猿指の首が桐生の刀によって跳ね飛ばすれるのはほぼ同時であった。
彼女はふぅと小さな溜息を吐いて刀を鞘に収めて集まった仲間たちに向き直る。
「これでいいかしら?」
「見事!流石は桐生さんだよ!あんたの炎と岩の紋章はいつ見ても美しいよ!」
紋章?どういう事だ?破魔式の一種なのか?風太郎が首を傾げていると、彼の師である斑目綺蝶が風太郎の側で答えを告げた。
「我々、対魔師は破魔式を二つ使用する事が出来ると、それぞれの式神同士を重ね合わせて紋章を作り上げる事が出来るんです。最も、それは上位の対魔師にしか出来ませんが……」
「待ってくれ、ならお前もーー」
「ええ、使えます。けれど、普段は安全性を垣間見てあまり使わない様にしているんですよ。お恥ずかしい話ですが」
「じゃあ、一体、どんな紋章を使っているんだ?」
風太郎の疑問に綺蝶は答える事がなかったが、彼女の代わりに青色の丸渕眼鏡を掛けた女性が代わりに答えた。
「光と闇の紋章。それがあなたの使う紋章でしょう?斑目綺蝶」
答えが分かったのは嬉しいが、突っかかる様な口調なのが風太郎には気になった。
だが、綺蝶は気にする事なくいつもの可愛らしい笑顔を浮かべて答えた。
「その通りです。桐生さん。全く釣れないですねぇ~それに、昼間もわざわざ無視する様な態度を取らなくてもいいじゃありませんか?」
「ふん、何か勘違いをしている様だから言っておくよ。私はお前が嫌いなんだ。闇の破魔式を使う奴なんて恐ろしく信用できないし」
「だから、普段は封印しているって言ってるじゃあないですか。分からない人ですね。あなたも」
二人の間に無言の火花が鳴っている気がするが、風太郎はそこに介入する気にはなれない。
頭の中で必死に打開策を考え、彼が思い付いたこの場を円満にする言葉はこれだった。
「あの、オレたちまだ風呂入っていないので、良かったら、全員で行きませんか?」
その言葉を聞いて二人が火花を散らすのをやめて、代わりに風太郎を一瞥する。
それから、互いに溜息を吐いて刀を鞘にしまって大学の入り口へと向かう。
それに続く部員や仲間たち。風太郎が声を上げようとしていると、その前に一番最後だった月島が彼に声を掛けた。
「何してるの?君が言い出しっぺでしょ?早く銭湯に行こうよ。閉まっても知らないよ」
風太郎はそれを聞いて全員の後を追い掛けていく。二人の顔に笑顔はなかったが、どうやら、自分の作戦は上手くいったらしい。
彼は一番端の方で密かに安堵の笑みを溢した。
当初、彼はそこで四年間の勉学を務めてから、対魔師になろうかと考えていたが、ある日、そんな彼に転機が訪れる。
何と、彼の前に妖鬼と化した男が駅の近くの喫茶店に現れて銃を振るい始めたのだ。
彼はやむを得ずに普段は隠し持っていた刀を使用して地面の下にその刃先を思いっきり突き刺す。
すると先程までの男と自分との位置が入れ替わり、男は両手に持っていた散弾銃を持ったまま喫茶店の椅子の上に座っていた。
そして、そのまま英治は刀を持って席にまで走り、無言で男の首を跳ね飛ばす。
その時に女性の店員が悲鳴を上げたのは跳ねた男の首から血が飛び散り、店内に飛び散るのだと思ったからだろう。
だが、不思議と血は飛び散らない。あろう事か、彼らの前で跳ねた男の体が光り、ついには消滅するという字体が代わりに起こったためである。
英治の破魔式の特徴は自身と相手の立ち位置とを入れ替えるというものであった。
それ以外の特性もあるのだろうが、幼少期から勉学が優先されたままであったために、未だにこれ以外の破魔式は使えない。
だが、それでもこれだけの騒動を起こしたのだ。彼は十分に目を引いた。
後日、三年生の日下部暁人となる青年が大学の図書室で古書を読んでいた自分の前に現れて、彼を妖鬼対策研究会へと誘う。
英治はその誘いを二つ返事で請け負い、以後は学業と妖鬼を倒すための研究。そして、周辺もしくは、電車で移動できる範囲内の妖鬼の討伐を行なっていく。
その際に役に立ったのが、彼の破魔式『悪魔の取り替え』である。
いざという時にこれは不利な状況を打開するのに使われ、何度も仲間に頼られ、その度に自分と敵の位置を入れ替えていく。
今回もそうだ。彼は面倒臭がりながらも、仲間のために破魔式を使用する。
彼は木の上で仲間たちが猿を追い詰めていく姿を眺めながら、苦笑する。
仲間はそれぞれが目立つ破魔式を持っているのだ。
自分の様な破魔式は大人しくしておくに限る。
そんな事を思いながら、彼は木の上に寝転がっていく。
自分の番がくるまで寝ておくのが的確だと思ったのだ。
それに夜もそろそろ深くなってきている。だが、彼らは自分を寝かしてはくれない。
部長の日下部暁人は大きな声で木の上で寝ている青年を呼ぶ。
「お前も参加してくれ!あの忌々しいエテ公を消し去るためにな!」
彼は緩やかな微笑を浮かべて木の上から飛び降りて、持っていた剣を構えて中央の庭園に向かう。
てっきり、事態は良い方向に向かっているかと思われたのだが、そうでもないらしい。
六人対一体の戦いは互角に進み、全員が疲弊している様だ。
どういう状況なのかを部長の暁人に尋ねると、彼はこう答えた。
「あのエテ公め、頻繁に指を切ってオレたちを爆殺しようとしやがる。だから、こんだけの人数でも仕留めるのに苦労しているんだ」
彼はそっけない返事を返して例の猿と向き合う。
猿はもう一度、指を飛ばして攻撃を仕掛ける。
だが、今度もまた風太郎の氷の牢によって猿の起こす爆発は未然に防がれてしまう。
どうすれば良いのかとあぐねていると、彼はある秘策を思い付く。
彼は青色の丸い眼鏡をかけた地味な事務員の女性、桐生桃に向かって声を掛ける。
「私の破魔式でですか?本気で使うなら、構いませんが、どうなっても知りませんよ」
「あぁ、構わん!責任はオレが持つ!あのエテ公を地獄に引き摺り込んでやろう!」
桐生は黙って眼鏡を人差し指で上げてから、大きく呼吸を吸って刀を振るう。
すると、地面の上に大きな炎と岩が描かれた紋章が描かれてそこから炎が湧き上がったかと思うと、同時に岩石が飛び、空中を飛び回っていた小さな猿の顔を直撃したかと思うと、その勢いのまま地面へと下がっていき、猿を地面の上で捕らえた。
猿はいやらしい悲鳴を上げてその場から逃れようとしたが、それは彼女の岩石が許さない。
岩石はそのまま小さな猿の上で爆発を起こして猿の体を燃やしていく。
猿指は狂気の乱舞を踊りながら、雄叫びを上げたが、桐生桃としてはそんな敵の苦痛など知った事ではない。
彼女はそのまま地面を蹴って、飛び上がると燃え盛る炎を猿指に向かって振っていく。
猿指は最後の悪あがきとばかりに、指を飛ばしたが、それは風太郎の氷結下僕に捕らえられて小さな氷の手下を道連れにしたのみで終わってしまう。
宙の上で氷が粉々に砕かれるのと猿指の首が桐生の刀によって跳ね飛ばすれるのはほぼ同時であった。
彼女はふぅと小さな溜息を吐いて刀を鞘に収めて集まった仲間たちに向き直る。
「これでいいかしら?」
「見事!流石は桐生さんだよ!あんたの炎と岩の紋章はいつ見ても美しいよ!」
紋章?どういう事だ?破魔式の一種なのか?風太郎が首を傾げていると、彼の師である斑目綺蝶が風太郎の側で答えを告げた。
「我々、対魔師は破魔式を二つ使用する事が出来ると、それぞれの式神同士を重ね合わせて紋章を作り上げる事が出来るんです。最も、それは上位の対魔師にしか出来ませんが……」
「待ってくれ、ならお前もーー」
「ええ、使えます。けれど、普段は安全性を垣間見てあまり使わない様にしているんですよ。お恥ずかしい話ですが」
「じゃあ、一体、どんな紋章を使っているんだ?」
風太郎の疑問に綺蝶は答える事がなかったが、彼女の代わりに青色の丸渕眼鏡を掛けた女性が代わりに答えた。
「光と闇の紋章。それがあなたの使う紋章でしょう?斑目綺蝶」
答えが分かったのは嬉しいが、突っかかる様な口調なのが風太郎には気になった。
だが、綺蝶は気にする事なくいつもの可愛らしい笑顔を浮かべて答えた。
「その通りです。桐生さん。全く釣れないですねぇ~それに、昼間もわざわざ無視する様な態度を取らなくてもいいじゃありませんか?」
「ふん、何か勘違いをしている様だから言っておくよ。私はお前が嫌いなんだ。闇の破魔式を使う奴なんて恐ろしく信用できないし」
「だから、普段は封印しているって言ってるじゃあないですか。分からない人ですね。あなたも」
二人の間に無言の火花が鳴っている気がするが、風太郎はそこに介入する気にはなれない。
頭の中で必死に打開策を考え、彼が思い付いたこの場を円満にする言葉はこれだった。
「あの、オレたちまだ風呂入っていないので、良かったら、全員で行きませんか?」
その言葉を聞いて二人が火花を散らすのをやめて、代わりに風太郎を一瞥する。
それから、互いに溜息を吐いて刀を鞘にしまって大学の入り口へと向かう。
それに続く部員や仲間たち。風太郎が声を上げようとしていると、その前に一番最後だった月島が彼に声を掛けた。
「何してるの?君が言い出しっぺでしょ?早く銭湯に行こうよ。閉まっても知らないよ」
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