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妖鬼対策研究会編
玉藻姑獲鳥の二重暗殺計画
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玉藻姑獲鳥は本をガラスの扉付きの本棚に全集を仕舞うと、まるで探偵小説に登場する探偵の様に忙しなく部屋の中を歩き回ってから、ここぞという場面で姉に向かって人差し指を突き出す。
当初こそ、姉にして妖鬼の総大将、玉藻紅葉は面食らった表情を浮かべていたが、次第に口元の端を緩めていく。
彼女の完璧なまでの計画を聞いて次第に態度も緩んできていたのだ。
そして、玉藻姑獲鳥が全ての計画を喋り終えた際に思わず両手を叩いて妹を褒めそやしていく。
「素晴らしい。素晴らしい計画だわ。まさか、奴らを引っ掛けるとはね……」
「ええ、現在も姉様はあの大学に居る忌々しい妖鬼対策研究会の面々を始末するために、妖鬼を一体潜り込ませていますが、ここに私が加わりましてぇ、既に潜入している一体に加えて、私が次々と妖鬼を増やしていくんですぅ、それで、多くの我々の同胞を精製し、最終的には大学の中に包囲網を作り、僅かな人間の学生と引き換えに妖鬼対策研究会の面々と大学生の息子とを同時に始末するんです。勿論、手を汚すのは妖鬼対策研究会の面々。これでぇ、お姉さまにとっての二つの敵が同時に片付くという寸法ですわぁ」
「素晴らしい!素晴らし計画だわ!聞けば聞くほど、深みが増していくとは……中々やるじゃあない」
それを聞いた姑獲鳥は長いオーケーストラの指揮を終えた指揮者の様に丁寧に頭を下げて彼女の元を去っていく。
そして、その後は聴講生募集の記事に応募し、自身も聴講生として潜り込んだのだ。
それにしても、あの時の姉の表情は見所があった。普段は凛と澄ました顔の姉があからさまに喜ぶなど通常は見られない光景だろう。もし、この計画の途中で下手な騒ぎを起こしてバレでもしない限りは完璧だと言えるだろう。
彼女はもう一度、夜の闇の中で笑うが、それは例の真面目な顔の学生によって止められてしまう。
「何をやっておられるのですか!?あなた様はそんな事をしている場合ではありません!ここは直ぐにでも後を付けてーー」
「ねぇ、仁也。あなた、昼間のあたしの言葉を聞き忘れたのぅ?」
それを聞くなり、仁也は全身に寒気を覚えてその場を去っていく。
取り敢えず、今夜は解散という所だろうか。
姑獲鳥は気分を一新して銭湯にでも入ろうかと大学を後にして駅前を目指して歩いていく。
だが、この時、音橋仁也はもう姑獲鳥の指示は待ってはいられぬと極秘裏に自身が初めて精製した妖鬼を研究会の部室に向かわせていく。
それは、元はこの大学の教授であり、戦前は名を馳せた権威の人であった男であり、現在は妖鬼となり、醜悪な日本猿の格好となっている。彼は日本猿に指示を出して、攻撃を指示を出す。
「で、ここがオレたちの研究会だ」
四角い眼鏡の青年に案内されるまま風太郎と綺蝶、日向の三人は大学の校舎の奥に存在する半ば隠された小さな部屋の中に足を踏み入れていく。
そこには丸い眼鏡をかけた若い女性に、白い髪をした陰気な顔の青年、顔をサングラスで隠した遊び人風の男、そして、昼間の事務員の四人が研究会の部室の中央に置かれた四角い机の周りに座っていた。だが、どういうわけか自分たちと同じ任務を言い付けられた月島少年は研究会の本棚の横でもたれていた。
「この研究会の仲間はオレを入れて五人。あー、それぞれ自己紹介をーー」
「机に座っている人を時計周りから見ていくと、瀬戸口花陽。海崎英治。一条新太郎。桐生桃という名前だよ。さっき、教えてもらった順番だとこうかな?」
名前を先に月島に言われたメンバーは護衛を言い付けられた本部の対魔師に頭を下げると、また机を囲んで話し合いを続けていく。
何はともあれ、今日の顔見せは終わった。と、なれば本格的に護衛の仕事に就くのは明日からになるだろう。
風太郎が考え事をしていると、突然、サングラスをかけた青年。一条新太郎がパチンコを机の下から取り出して入り口に向かって飛ばす。
すると、爆音が響き渡り、部室が左右に揺れていく。入り口と入り口まで迫っていた何かが吹き飛ぶ。
中に居た面々は慌てて自身の武器を手に取り、入り口への警戒を強めていく。
部長である日下部暁人は隠していた日本刀を取り出して、入り口に向かって剣先を突き付けて攻撃の準備を大きな声で指示を出す。
もうすぐ、入り口の前に広がる視界を覆う程の真っ黒な爆煙が消えていく。
現れるのは何者であろうか。彼らが固唾を飲んで見守っていると、七人の前に現れたのは一匹の小さな猿であった。
だが、何処か妙だ。都会の真ん中に立つ大学の構内に猿が居るのも。あの爆発に巻き込まれて無傷というのも。
すると、猿は凶悪な態度を見せてこちらへと向かってきた。
それも、ただ噛み付くだけではない。指を千切って、自分たちに向かってそれを放り投げていく。
風太郎は隠し持っていた太刀の塚に手を掛けていたが、慌てて指の正体が何なのかを察知して氷結牢を使用して指そのものを凍らせていく。
氷で固まった指が落ちるのを見届けた猿は悲鳴を上げて部室を後にして逃げ出す。
だが、研究会の面々と風太郎たち対魔師はそれを許さない。
それぞれが武器を持って構内を駆け出す。
猿は構内に潜り込むのと同時に、次々と大学の中に生えている木の中へと潜り込む。
「……厄介だね。あの猿が何処の木の中に隠れたのかを探すのはかなり辛い作業になるだろうね」
月島の言葉は全員の代弁と言っても良いだろう。いくら、本家、討滅寮の方には含まれないとはいえども、一応は七人の対魔師がいるとはいえ、大学の木に隠れた一匹の小さな猿の形をした妖鬼を探すのは至難の業。
勿論、見つけるだけならば簡単だ。だが、見つけた時に不意打ちを喰らわされてはたまったものではない。
だが、放置するのも翌日になればまたやって来る学生たちを危険に晒す事になる。
だから、月島は『厄介』という単語と『辛い作業』という単語を発したに違いない。
すると、白い髪の青年が中央に大学の構内の中央に現れて、全員を呼び寄せる。全員が集まったのを確認してから、何故か溜息を吐いて、地面を刀で勢いよく突く。
すると、先程まで彼が居た場所に先程の猿が現れたのだ。
猿は辺りを見渡すと自分が六人の対魔師に囲まれている事に気が付いて慌ててその場を離れようとするが、その前に氷の小さな人形が彼を囲んで攻撃したために、木の中に逃れるのを阻止されてしまう。
今、ここに猿もとい猿指は自身が追い詰められた事を知った。
当初こそ、姉にして妖鬼の総大将、玉藻紅葉は面食らった表情を浮かべていたが、次第に口元の端を緩めていく。
彼女の完璧なまでの計画を聞いて次第に態度も緩んできていたのだ。
そして、玉藻姑獲鳥が全ての計画を喋り終えた際に思わず両手を叩いて妹を褒めそやしていく。
「素晴らしい。素晴らしい計画だわ。まさか、奴らを引っ掛けるとはね……」
「ええ、現在も姉様はあの大学に居る忌々しい妖鬼対策研究会の面々を始末するために、妖鬼を一体潜り込ませていますが、ここに私が加わりましてぇ、既に潜入している一体に加えて、私が次々と妖鬼を増やしていくんですぅ、それで、多くの我々の同胞を精製し、最終的には大学の中に包囲網を作り、僅かな人間の学生と引き換えに妖鬼対策研究会の面々と大学生の息子とを同時に始末するんです。勿論、手を汚すのは妖鬼対策研究会の面々。これでぇ、お姉さまにとっての二つの敵が同時に片付くという寸法ですわぁ」
「素晴らしい!素晴らし計画だわ!聞けば聞くほど、深みが増していくとは……中々やるじゃあない」
それを聞いた姑獲鳥は長いオーケーストラの指揮を終えた指揮者の様に丁寧に頭を下げて彼女の元を去っていく。
そして、その後は聴講生募集の記事に応募し、自身も聴講生として潜り込んだのだ。
それにしても、あの時の姉の表情は見所があった。普段は凛と澄ました顔の姉があからさまに喜ぶなど通常は見られない光景だろう。もし、この計画の途中で下手な騒ぎを起こしてバレでもしない限りは完璧だと言えるだろう。
彼女はもう一度、夜の闇の中で笑うが、それは例の真面目な顔の学生によって止められてしまう。
「何をやっておられるのですか!?あなた様はそんな事をしている場合ではありません!ここは直ぐにでも後を付けてーー」
「ねぇ、仁也。あなた、昼間のあたしの言葉を聞き忘れたのぅ?」
それを聞くなり、仁也は全身に寒気を覚えてその場を去っていく。
取り敢えず、今夜は解散という所だろうか。
姑獲鳥は気分を一新して銭湯にでも入ろうかと大学を後にして駅前を目指して歩いていく。
だが、この時、音橋仁也はもう姑獲鳥の指示は待ってはいられぬと極秘裏に自身が初めて精製した妖鬼を研究会の部室に向かわせていく。
それは、元はこの大学の教授であり、戦前は名を馳せた権威の人であった男であり、現在は妖鬼となり、醜悪な日本猿の格好となっている。彼は日本猿に指示を出して、攻撃を指示を出す。
「で、ここがオレたちの研究会だ」
四角い眼鏡の青年に案内されるまま風太郎と綺蝶、日向の三人は大学の校舎の奥に存在する半ば隠された小さな部屋の中に足を踏み入れていく。
そこには丸い眼鏡をかけた若い女性に、白い髪をした陰気な顔の青年、顔をサングラスで隠した遊び人風の男、そして、昼間の事務員の四人が研究会の部室の中央に置かれた四角い机の周りに座っていた。だが、どういうわけか自分たちと同じ任務を言い付けられた月島少年は研究会の本棚の横でもたれていた。
「この研究会の仲間はオレを入れて五人。あー、それぞれ自己紹介をーー」
「机に座っている人を時計周りから見ていくと、瀬戸口花陽。海崎英治。一条新太郎。桐生桃という名前だよ。さっき、教えてもらった順番だとこうかな?」
名前を先に月島に言われたメンバーは護衛を言い付けられた本部の対魔師に頭を下げると、また机を囲んで話し合いを続けていく。
何はともあれ、今日の顔見せは終わった。と、なれば本格的に護衛の仕事に就くのは明日からになるだろう。
風太郎が考え事をしていると、突然、サングラスをかけた青年。一条新太郎がパチンコを机の下から取り出して入り口に向かって飛ばす。
すると、爆音が響き渡り、部室が左右に揺れていく。入り口と入り口まで迫っていた何かが吹き飛ぶ。
中に居た面々は慌てて自身の武器を手に取り、入り口への警戒を強めていく。
部長である日下部暁人は隠していた日本刀を取り出して、入り口に向かって剣先を突き付けて攻撃の準備を大きな声で指示を出す。
もうすぐ、入り口の前に広がる視界を覆う程の真っ黒な爆煙が消えていく。
現れるのは何者であろうか。彼らが固唾を飲んで見守っていると、七人の前に現れたのは一匹の小さな猿であった。
だが、何処か妙だ。都会の真ん中に立つ大学の構内に猿が居るのも。あの爆発に巻き込まれて無傷というのも。
すると、猿は凶悪な態度を見せてこちらへと向かってきた。
それも、ただ噛み付くだけではない。指を千切って、自分たちに向かってそれを放り投げていく。
風太郎は隠し持っていた太刀の塚に手を掛けていたが、慌てて指の正体が何なのかを察知して氷結牢を使用して指そのものを凍らせていく。
氷で固まった指が落ちるのを見届けた猿は悲鳴を上げて部室を後にして逃げ出す。
だが、研究会の面々と風太郎たち対魔師はそれを許さない。
それぞれが武器を持って構内を駆け出す。
猿は構内に潜り込むのと同時に、次々と大学の中に生えている木の中へと潜り込む。
「……厄介だね。あの猿が何処の木の中に隠れたのかを探すのはかなり辛い作業になるだろうね」
月島の言葉は全員の代弁と言っても良いだろう。いくら、本家、討滅寮の方には含まれないとはいえども、一応は七人の対魔師がいるとはいえ、大学の木に隠れた一匹の小さな猿の形をした妖鬼を探すのは至難の業。
勿論、見つけるだけならば簡単だ。だが、見つけた時に不意打ちを喰らわされてはたまったものではない。
だが、放置するのも翌日になればまたやって来る学生たちを危険に晒す事になる。
だから、月島は『厄介』という単語と『辛い作業』という単語を発したに違いない。
すると、白い髪の青年が中央に大学の構内の中央に現れて、全員を呼び寄せる。全員が集まったのを確認してから、何故か溜息を吐いて、地面を刀で勢いよく突く。
すると、先程まで彼が居た場所に先程の猿が現れたのだ。
猿は辺りを見渡すと自分が六人の対魔師に囲まれている事に気が付いて慌ててその場を離れようとするが、その前に氷の小さな人形が彼を囲んで攻撃したために、木の中に逃れるのを阻止されてしまう。
今、ここに猿もとい猿指は自身が追い詰められた事を知った。
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