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妖鬼対策研究会編
真夜中に現れた悪魔
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「ふざけるなッ!誰がそんなものになるものか……ッ!」
日下部暁人は刀を突き付けながら叫ぶ。
彼の目は敵意に満ちていた。そのために、見開かれた両目で目の前に現れた女性を睨む。
だが、女性は唇の下に人差し指を当ててクスリと笑うと、無言でその場から飛び上がり、彼の背後に回り込む。
そして、細くて白い手で彼の視界を覆う。それから、暁人の首元を舐め回す。
「とっても綺麗よ。対魔師なんかにしておくのは勿体ないくらいだわ」
暁人は刀の代わりに、拳を喰らわせようとしたが、女性はすぐさまその場から離れてしまったので、彼の拳は女性には当たらない。
女性が離れたのを確認すると、再度、刀を両手で握り締めて辺りを確認していく。
だが、彼女の姿は見えない。少なくとも、彼の視界の前には見えない。
何処に行った?三百六十度の方角を向いて彼は女性を探すが、彼女は姿を見せない。
その時だ。突如、自身の頭の上が取られ、彼の髪が引っ張られていく。
彼が恐る恐る背後を見つめると、そこには先程の女性の姿。
彼女は暁人を捕らえると、妖艶な笑みを浮かべて言った。
「いい、これは警告よ。日下部くん。菊園寺和巳から手を引きなさい。今はまだ、あなた達が動いてはダメなの」
彼女の言葉を聞くなり、彼はある一定の事実へと辿り着く。
それは、この大学の学生闘争に妖鬼が結び付いているという明確な確証。
頭を押さえ付けられたままであったが、彼は思わず表情を柔らかくしていく。
少なくとも、先程までの頭を押さえられ、髪を引っ張られて無言の悲痛を上げていた彼の顔はない。
それを見た彼女はこのままこの男の頭を潰してしまおうかと画策したのだが、彼は挑発する様に彼女に向かって笑う。
瞬間。彼女は自分の体から湯沸かし器で沸かした様な湯気が出た様な白い湯気が湧いた様な感触に陥っていく。
彼女がそれ程、怒りに満ち溢れたのは初めてであった。恐らく、もし、ここに機関銃が落ちていたとしたのなら、躊躇いもなく使用していただろう。
それくらい、彼女の頭は怒りに満ち溢れていた。
ならば、この男をご要望の通りにこのまま握り潰してやろう。彼女が力を込めた時だ。
男の体が温かくなっていく。冬の時期に湯たんぽを触る時のようなあの様な心地の良い温かさではない。
火中の栗を拾うかの様な痛みを伴う熱さが彼女を襲ったのだ。
堪らずに、彼女は男の頭から手を離す。そして、反射的に背後へと飛んでいく。
日下部暁人はそれを見て刀を突き付けながら、彼女に向かって言った。
「オレの破魔式はちょっと特殊な形だからなぁ。オレの破魔式はオレ自身とオレが触れる物を温めるだけのカスみたいな破魔式なんだ。けど、触れれば大怪我するぜ」
それを聞いて妖艶な女性もとい、星泉雪はたじろいでしまう。
だが、直ぐに自身の魔獣覚醒の事を思い出し、弛緩する。
彼女の魔獣覚醒は遠距離に頼っての物が多い。このまま距離を保ち続ければ、あの男の攻撃を交わす事も容易だろう。
それどころか、自身の魔獣覚醒であの男を下僕にし、スパイとして動かす事も可能かもしれない。
そんな事を考えながらも、彼女は自身の姉妹にして忠実なる分身である体が使用したのと同じ、ポケットから小柄なナイフを取り出し、自身の手に傷を付けて、そのままナイフの刃先に垂らして、ナイフを槍へと変えていく。
文字通り、血で染められた槍を振り回しながら、彼女は相手にする振りをしていく。
日下部暁人はそんな女性を刀を構えて見守っていた。いつでも来るのならば、来るが良い。
両者ともに動かない睨み合いが続いたが、そこに変化が訪れてしまう。
「お、おい、お前たち、大学の前で何をしているんだ!?」
そう、何故か、史学部の長根教授が大学の前に立っていたのだ。
豚の様に肥え太った男はベロンベロンに酔っ払った表情を浮かべて両者の間に割って入ったものの、女性の方には向かずに、日下部に向かって嫌らしい笑顔を浮かべて言った。
「おい、日下部。これでお前も終わりだな?まさか、今の日本で刀を持ち歩いている奴がいるとは思わなんだぞ、ええ?」
「退いてください!オレは今ーー」
「廃刀令が何年に出たのか言ってみろ!」
日下部暁人は普段の仲は余り宜しくはないものの、彼はあくまでも妖鬼とも討滅寮とも関係のない一般人。
そんな彼を遠ざけるために、彼は退く様に言ったのだが、向こうは法律という絶対的な盾を、道徳という絶対的な正義とを持って彼を弾劾していく。
なので、彼は教授が酔いながら問い掛けた問いに対して自身の答えを答える。
「明治九年……いえ、1876年です」
「今は西暦何年だ?そして、今、現在使われている元号は?言ってみろ!?」
彼は答えに窮してしまう。それを答えるのはこの教授に全ての事を打ち明けてしまう事に他ならないからだ。
長根教授はそんな暁人を暫くの間は不敵な笑みを浮かべて見つめているだけであったが、やがて彼に背を向けて彼と向かい合っていた女性と対峙しようとする。
流石に不味い。あの女性は怒らせたら何をするか分からない。そう思って、彼は足を踏み出して長根教授を止めようとしたのだが、その前に長根は首を飛ばされてしまう。
彼女は心底から、気を害した様な表情を浮かべて言った。
「何よ。このクソ爺……銃刀法違反に目を瞑る代わりに、研究室に来い?こっちが下手に出ていれば、いい気になりやがってクソが」
彼女は上品な外見には似つかわしくない暴言を吐いて、彼の死体を蹴っていく。
それから、刀を持ったまま複雑な表情を浮かべている日下部暁人に向かって告げた。
「悪いけれど、今日はもうお開きですわ。少々、気分を害してしまったもので……」
彼女はそう言うと、夜の闇のとばりへと消えていく。
日下部暁人は刀を持ってそれを追い掛けたが、彼女は既に姿を消してしまったらしい。
暁人は舌を打つと、刀をしまってその場から立ち去っていく。
翌日になり、死体が発見されても自分のアリバイを証明する人間は元から居ない。
そもそも、怪しいというだけで警察もむざむざ自分を捕らえたりはしないだろう。
そんな事を考えながら、日下部暁人は自宅に向かっていく。
そして、彼は気を紛らわせる様に机の上に置いてあったキャラメルを舐めた。その味は妙に甘かった。
日下部暁人は刀を突き付けながら叫ぶ。
彼の目は敵意に満ちていた。そのために、見開かれた両目で目の前に現れた女性を睨む。
だが、女性は唇の下に人差し指を当ててクスリと笑うと、無言でその場から飛び上がり、彼の背後に回り込む。
そして、細くて白い手で彼の視界を覆う。それから、暁人の首元を舐め回す。
「とっても綺麗よ。対魔師なんかにしておくのは勿体ないくらいだわ」
暁人は刀の代わりに、拳を喰らわせようとしたが、女性はすぐさまその場から離れてしまったので、彼の拳は女性には当たらない。
女性が離れたのを確認すると、再度、刀を両手で握り締めて辺りを確認していく。
だが、彼女の姿は見えない。少なくとも、彼の視界の前には見えない。
何処に行った?三百六十度の方角を向いて彼は女性を探すが、彼女は姿を見せない。
その時だ。突如、自身の頭の上が取られ、彼の髪が引っ張られていく。
彼が恐る恐る背後を見つめると、そこには先程の女性の姿。
彼女は暁人を捕らえると、妖艶な笑みを浮かべて言った。
「いい、これは警告よ。日下部くん。菊園寺和巳から手を引きなさい。今はまだ、あなた達が動いてはダメなの」
彼女の言葉を聞くなり、彼はある一定の事実へと辿り着く。
それは、この大学の学生闘争に妖鬼が結び付いているという明確な確証。
頭を押さえ付けられたままであったが、彼は思わず表情を柔らかくしていく。
少なくとも、先程までの頭を押さえられ、髪を引っ張られて無言の悲痛を上げていた彼の顔はない。
それを見た彼女はこのままこの男の頭を潰してしまおうかと画策したのだが、彼は挑発する様に彼女に向かって笑う。
瞬間。彼女は自分の体から湯沸かし器で沸かした様な湯気が出た様な白い湯気が湧いた様な感触に陥っていく。
彼女がそれ程、怒りに満ち溢れたのは初めてであった。恐らく、もし、ここに機関銃が落ちていたとしたのなら、躊躇いもなく使用していただろう。
それくらい、彼女の頭は怒りに満ち溢れていた。
ならば、この男をご要望の通りにこのまま握り潰してやろう。彼女が力を込めた時だ。
男の体が温かくなっていく。冬の時期に湯たんぽを触る時のようなあの様な心地の良い温かさではない。
火中の栗を拾うかの様な痛みを伴う熱さが彼女を襲ったのだ。
堪らずに、彼女は男の頭から手を離す。そして、反射的に背後へと飛んでいく。
日下部暁人はそれを見て刀を突き付けながら、彼女に向かって言った。
「オレの破魔式はちょっと特殊な形だからなぁ。オレの破魔式はオレ自身とオレが触れる物を温めるだけのカスみたいな破魔式なんだ。けど、触れれば大怪我するぜ」
それを聞いて妖艶な女性もとい、星泉雪はたじろいでしまう。
だが、直ぐに自身の魔獣覚醒の事を思い出し、弛緩する。
彼女の魔獣覚醒は遠距離に頼っての物が多い。このまま距離を保ち続ければ、あの男の攻撃を交わす事も容易だろう。
それどころか、自身の魔獣覚醒であの男を下僕にし、スパイとして動かす事も可能かもしれない。
そんな事を考えながらも、彼女は自身の姉妹にして忠実なる分身である体が使用したのと同じ、ポケットから小柄なナイフを取り出し、自身の手に傷を付けて、そのままナイフの刃先に垂らして、ナイフを槍へと変えていく。
文字通り、血で染められた槍を振り回しながら、彼女は相手にする振りをしていく。
日下部暁人はそんな女性を刀を構えて見守っていた。いつでも来るのならば、来るが良い。
両者ともに動かない睨み合いが続いたが、そこに変化が訪れてしまう。
「お、おい、お前たち、大学の前で何をしているんだ!?」
そう、何故か、史学部の長根教授が大学の前に立っていたのだ。
豚の様に肥え太った男はベロンベロンに酔っ払った表情を浮かべて両者の間に割って入ったものの、女性の方には向かずに、日下部に向かって嫌らしい笑顔を浮かべて言った。
「おい、日下部。これでお前も終わりだな?まさか、今の日本で刀を持ち歩いている奴がいるとは思わなんだぞ、ええ?」
「退いてください!オレは今ーー」
「廃刀令が何年に出たのか言ってみろ!」
日下部暁人は普段の仲は余り宜しくはないものの、彼はあくまでも妖鬼とも討滅寮とも関係のない一般人。
そんな彼を遠ざけるために、彼は退く様に言ったのだが、向こうは法律という絶対的な盾を、道徳という絶対的な正義とを持って彼を弾劾していく。
なので、彼は教授が酔いながら問い掛けた問いに対して自身の答えを答える。
「明治九年……いえ、1876年です」
「今は西暦何年だ?そして、今、現在使われている元号は?言ってみろ!?」
彼は答えに窮してしまう。それを答えるのはこの教授に全ての事を打ち明けてしまう事に他ならないからだ。
長根教授はそんな暁人を暫くの間は不敵な笑みを浮かべて見つめているだけであったが、やがて彼に背を向けて彼と向かい合っていた女性と対峙しようとする。
流石に不味い。あの女性は怒らせたら何をするか分からない。そう思って、彼は足を踏み出して長根教授を止めようとしたのだが、その前に長根は首を飛ばされてしまう。
彼女は心底から、気を害した様な表情を浮かべて言った。
「何よ。このクソ爺……銃刀法違反に目を瞑る代わりに、研究室に来い?こっちが下手に出ていれば、いい気になりやがってクソが」
彼女は上品な外見には似つかわしくない暴言を吐いて、彼の死体を蹴っていく。
それから、刀を持ったまま複雑な表情を浮かべている日下部暁人に向かって告げた。
「悪いけれど、今日はもうお開きですわ。少々、気分を害してしまったもので……」
彼女はそう言うと、夜の闇のとばりへと消えていく。
日下部暁人は刀を持ってそれを追い掛けたが、彼女は既に姿を消してしまったらしい。
暁人は舌を打つと、刀をしまってその場から立ち去っていく。
翌日になり、死体が発見されても自分のアリバイを証明する人間は元から居ない。
そもそも、怪しいというだけで警察もむざむざ自分を捕らえたりはしないだろう。
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