太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います！

新しい時代の守護者編

ハンセン絶対の危機！

クールになるといいジョー・ハンセン。こんな危機的状況だからこそ、クールになった方が良いんだ。
そもそも、自分がこれまでの戦場でどの様に生き残っていたのかをちゃんと思い出していけば、その解答は直ぐにでもでるじゃないか。
男はそのまま彼ら彼女らに立ち向かう不利をして、まず、彼ら彼女らの目に向かって粘体を飛ばして彼らの視界を奪う事に成功する。
まず、多くの粘体に視界を覆われた彼ら彼女らは悲鳴を上げて逃げ出すだろう。
だが、その場で逃げ出さないとしても一時的に視界を奪われる事は必須である。彼はそうしてその場を逃げ出す。そして、懸命に走り終えると、彼ら彼女らの暴挙に対抗するために、地面に落ちていた拳銃を拾い上げる。
そして、あの二人を撃ち殺そうと銃を構えたが、そこに再び現れる斑目綺蝶。
母国の俳優にさえも劣らない美貌を持つ彼女はあの笑顔とその顔に似つかわしい高音の可愛らしい声で彼の耳元で囁く。
「鬼さんもう鬼ごっこは終わりですか？」
「あ、あ、あァァァァ～！！」
「そこまで叫ばなくても良いではないですか？私が鬼さんに何かしましたか？」
彼女は顔を輝かせんばかりの笑顔を浮かべて尋ねる。
だが、彼が怯えるのもここまでだ。恐らく彼女が粘体を突けば、一瞬で自分は殺されてしまう事を悟ってしまうだろう。
それどころか、粘膜を攻撃する度に自分が不利になってしまうという事を。
つまり、ジョー・ハンセンを殺せない事を悟らせられれば、彼女は自然と離れていくだろう。
ジョーは表向きは引き攣った演技を浮かべつつも、内心は綺蝶を小馬鹿にしていた。
そして、絶望しきった綺蝶に銃口を向けるのが今の彼の予定であった。
けれども、彼女の攻撃はジョーの予想していた以上の成果を上げた。
綺蝶の光に包まれた突きは瞬時に、ジョーの体を覆って彼の体の防衛に努めている粘膜を蒸発させていく。
「どうです？鬼さん？私の破魔式も大したものでしょう？」
彼女はそう言うと刀を振り回して、ジョーの首元に向かって刀を突き付ける。
「ま、待ってくれ！あんたの破魔式とやらは光系統なんだろう！？なのに、粘体を蒸発できるほどの温度が出るのは変だ」
「確かに、鬼さんの言う通り、通常の光であったのならば、それは不可能だったでしょう。けれども、私の光は破魔式……妖鬼という鬼を取り除くための聖なる光です。その光は他のどの光よりも強くなくてはいけません？仰る意味が分かりますか？」
ジョーは感じた。理屈も態度もこの女は真面目ではない、と。
加えて、それ以上に理解ができないのは粘体を蒸発させる程の光の力。
光などどう見繕ったとしても太陽やマグマや炎の熱に勝てるとは到底、思えない。
だが、この女の操る光は自然科学現象の中での唯一の例外だという。
いや、そもそも破魔式そのものが科学への侮辱というものではないか。
ならば、妖鬼の存在はそれ以上の侮辱、最早陵辱になるに違いない。
だが、彼女はジョーが通常とは異なる神学の世界への学問を進めていたというのは全く知らず、土足で彼の崇高なる学問の世界を踏み荒らして、
「答えてくださいよ。鬼さん。あ、もしかしてまた鬼ごっこを再開したいんですか？ええ、構いませんよ。ええ。鬼さんがどんなに逃げようとも、何処まで逃げようとも捕まえて差し上げますから」
彼女の顔には不敵な笑いが浮かぶ。ジョーは恐怖に耐え切れずにその場から逃げ出す。
今は一刻でも早く彼女の元から逃げなければなるまい。
彼はそう決意をして走っていったのだが、彼の前に風太郎が立ち塞がって刀を向けた事により、事態は一変していく。
彼はそれを見た瞬間に、彼は自分が一番になった事を知り、早く彼を倒してその場から逃げ出そうと考えていた。
例えるのなら、地獄の底へと落とされた大泥棒、カンタダが最後に仏様による落とされた蜘蛛の糸。
それが、彼だった。ジョーは魔獣覚醒とピストルの銃口の両方を向けて彼を狙うが、その前に彼は不意に背後から肩を掴まれて地面の上に組み伏せられてしまう。
ジョーが抗議の声を上げようとするものの、彼は抗議できる雰囲気ではない事を知り、思わず絶句してしまう。
と、言うのも自分を押さえ付けていたのは自分との実力差が何倍にも透けて見え、動こうでもするのならば、即座に首を刎ねかねない程の殺気を漂わせる程の男であったからだ。
若くて格好の良い男であったからだ。
彼は考えた。恐らく、彼がアメリカの高校に居たのならば、積極的な女の子たちから毎日の様に絡まれ、更にはダンスパーティーの日には普段は奥出である女子生徒を含めての類稀なる数の女子にダンスの相手に誘われる程の格好の良い顔のした男である事という事を発見した。
彼は顔と技量とを観測していた男の両腕を折って彼に向かって言った。
「落ち着け、獅子王院風太郎は今、お前が倒すべき相手じゃあない。時期を見誤るな」
彼はそう言うてジョーを黙らせると、綺蝶と風太郎、そして氷堂冴子の三名に眼配せをしてから、妖鬼対策研究会の面々の全員に会釈して、相変わらずの冴え渡るほどの透明でいて爽やかな声で大演説会を始めていく。
彼は強く頭を下げると、憎悪の目で自分を突き刺していく彼ら彼女らを無視しながら、自分の演説を始めていく。
「初めまして！既に私の名前を存じてるかと思われますが、一応は名乗っておきましょおう！私の名前は戦雲玄竜！警察に追われ、そして何故かあなた方にも追われている対魔師です！」
彼はそう言って断言してから、討滅寮所属の対魔師とそれに協力する学生たちの面々を見つめていく。
だが、菊園寺和巳は男の態度が癪に触ったのか、江戸時代の浪人よりも荒々しい剣技を上げながら、向かってはいくものの、彼はその攻撃を余裕の表情を浮かべて交わし、菊園寺の首元を掴む事に成功する。
「人が話している最中に斬りかかろうとするなんて……お前、人としてどうかと思うよ」
「へん、流石はエリートな上に行動派の戦雲様だよ。それで、オレたちにあんたの会話を聞いたとしたら、感涙の涙で農場がいっぱいになるだろうなぁ」
嫌味を混ぜた言葉であったためか、エリートの顔が自然と歪んで見えていく。
だが、彼は怒りを飲み込み、そんな平民出身と思われる男の発言など耳を貸す事なく演説の続きへと突入していく。