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新しい時代の守護者編
氷堂冴子さんをこちらに引き渡してください
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玄竜と獅子王院風太郎との決闘が風太郎の完勝で終わったのに対し、鎧武者と妖鬼対策研究会の面々との戦いはまだ付いてはおらず、それどころか鎧武者がまだ有利に戦いを進めているという始末であった。
彼は両手に握る大小の刀を自由自在に振り回し、同時に魔獣覚醒も的確な時に使用するために、隙は出ない。
正直に言えば、全員でかかっても相手にもならないというべきだろう。
安土桃山時代から江戸時代の初期にかけて活躍した剣豪だ。腕も面構えもそして、魔獣覚醒も彼らが今まで戦ってきたどの妖鬼も彼からすれば刀のおもちゃを持った子供。
そう感じざるを得ない。今まで、多くの元剣豪や剣士、或いは侍の妖鬼を葬ってきた自分たちだからこそ断言できた。
鎧武者は両手に掴んでいる大小の刀を瞬時に動かし、集まった七人を寄せ付けない。
日下部と桐生、氷堂の指揮の元に激しい戦いが繰り広げられていた時だ。
突如、彼らの中に彼岸花のあの独特の香りが漂う。
彼らがふとその方角を向いた時だ。笛を鳴らす音が聞こえ、彼らの前に一人の鎧を着た若い男が入り込む。
若い男は武者の妖鬼の姿を見るなり、丁寧に頭を下げて、
「初めまして、私の名前は涼介と申します。矢那内涼介。それが、私の名前です。以後、お見知り置きを」
彼はそう言って頭を下げると、刀を抜いて鎧武者の男に向かって斬りかかっていく。
鎧武者の男は大小の二本の刀を構えた後に魔獣覚醒を唱えて涼介を迎え討つ。
「魔獣覚醒『幻海楼連』!!」
大小二本の刀が次々と絶え間なく振りかぶられて相手を海の波の様に襲っていく事から、そう名付けられたという。
実際、この魔獣覚醒の前に殆ど誰もこの武者に手も足も出なかったのだが、涼介なる騎士風の男は例外であるらしい。
彼は剣を抜くと、破魔式を唱えた後に素早く駆けて、魔獣覚醒を繰り出す彼の体にすれ違い様に斬撃を繰り出す。
両者は互いにすれ違う際に攻撃を振るったのだろうが、喰らった量には大きな差があったらしい。
暫くの間、剣を構えたまま立っていた二人であったが、やがて武者の男が刀を落として地面へと倒れ込む。
どうやら、勝ったのはこの男であったらしい。
彼は刀を鞘に収めると、今度は対魔師の人々に頭を下げていく。
「皆様、初めまして私の名前は矢那内涼介と申します。この格好からもご存知かとは思いますが、私は闇祓い課或いは天道騎士団と呼ばれる警視庁にては黙認されている妖鬼退治の専門家です」
彼は胸を張って自慢しているのだが、何処か周りの反応が静まり返っているのを見て空咳をして話題を本題へと上げていく。
「では、単刀直入にお尋ねしようと思います。あなた方が戦っていたのは戦雲玄竜ですよね?彼は今、何処に居られるのでましょうか?」
「居ないよ。もうこの世にはね」
氷堂冴子は躊躇う事なく答えた。涼介は彼女の目を見たが、それは真っ直ぐとこちらを向いており、到底、嘘を吐いている様にも思えない。
彼はそれを聞くと、上空を向いて大きな声で笑い始めてから、目を怪しく光らせて、彼ら彼女らを一瞥していく。
「成る程、成る程、あなた方が戦雲玄竜とその他の妖鬼を仕留めてくださったんですね。ありがとうございます!では、次の質問なのですが、この中に氷堂冴子さんはいらっしゃいませんか?」
氷堂冴子はその問い掛けに対して無言で挙手する。挙手をした女性を見つけて、こちらに手招く。
だが、冴子はそれに応じようとしない。嫌な予感がしたのだろうか。はたまた、何か別の予感がしたのだろうか。
それは誰にも分からない。ただ、彼が溜息を吐いたのは事実だ。
困った様子の彼は暫く頭をかいていたのだが、次に大きな声で背後、街へと繋がる場所から大勢の人を呼び寄せる。
「あ、皆さん。聞いてくださいよ。彼女が任意同行に応じようとしないんです。私はただ詳しくお話をお伺いしたいんですが……」
「待ってください。氷堂さんを何の容疑で捕まえるつもりなんですか?」
そう口を挟んだのは瀬戸口花陽。彼女はこの騎士団の逮捕劇に彼女を巻き込ませないと必死だったのだが、彼はそんな彼女を軽くあしらうと、誰にも断る事なく冴子の元へと歩いていき、呆気に撮られた彼女に手錠をかけようとしたのだが、その前に海崎によってそれを止められてしまう。
「離しなよ。その薄汚い手を」
「あなたは……あぁ、正妖大学の学生さんでしたか?あなたは何をしに来たんですか?悪いですが、彼女は連行させて貰いますよ」
「法律は常に知っている人の味方……場合によっては警察にもそれが適用されます」
「ほー、知った風な口を利きますね。自分の置かれた状況を理解してのご発言何でしょうか?」
涼介は笑顔は崩してはいないが、あくまでも威圧的。
そして、何よりも恐ろしいのはその笑顔が排水溝の中のヘドロよりも暗くて汚れているという事。
海崎英治はそれを理解するのと同時に、この男に冴子を連れさせてはなるまいと必死になって彼に弁舌での勝負を挑む。
一応は文の力で大学の受験に合格した身。弁舌にはそこそこの自身があった。
だが、涼介も口では負けてはいない。海崎の反論に彼は二倍、三倍もの量で反論をしていく。
そして、とうとう海崎英治を黙らせてしまう。
彼は貝崎の手を払い除けると、冴子の腕を引っ張って騎士団の元へと向かおうとしたが、その前にただならぬ冷気と風を放った一人の青年が立ち塞がる。
「待ってください。彼女は我々討滅寮の大事な上位の対魔師なんです。任意なんですよね?逮捕状が出たわけではないんでしょう?それなのに、どうしてこんなにも慌てて彼女を連れ去ろうとするんですか?」
風太郎の殺気と冷たい視線が涼介の胸を突き刺す。涼介は苦笑してから、彼に向かって先程、海崎を論戦で論破してやった時と同じで理論を武装しようとするが、その前に背後から綺蝶が現れて、彼の前に刀を突き刺して言った。
「もう小難しい議論などそれくらいにしておけば良いでしょう?昔、西郷隆盛は二条城の会議の際に『短刀一本あれば片付く』と言ったそうです。試してみませんか?」
綺蝶の放った言葉の真意に驚き、何か言葉を口に出そうと口をゴモゴモと動かしていた時だ。
「まだか」という言葉と共に白い毛並みの馬に乗った長い髪の女性が現れた。
彼は両手に握る大小の刀を自由自在に振り回し、同時に魔獣覚醒も的確な時に使用するために、隙は出ない。
正直に言えば、全員でかかっても相手にもならないというべきだろう。
安土桃山時代から江戸時代の初期にかけて活躍した剣豪だ。腕も面構えもそして、魔獣覚醒も彼らが今まで戦ってきたどの妖鬼も彼からすれば刀のおもちゃを持った子供。
そう感じざるを得ない。今まで、多くの元剣豪や剣士、或いは侍の妖鬼を葬ってきた自分たちだからこそ断言できた。
鎧武者は両手に掴んでいる大小の刀を瞬時に動かし、集まった七人を寄せ付けない。
日下部と桐生、氷堂の指揮の元に激しい戦いが繰り広げられていた時だ。
突如、彼らの中に彼岸花のあの独特の香りが漂う。
彼らがふとその方角を向いた時だ。笛を鳴らす音が聞こえ、彼らの前に一人の鎧を着た若い男が入り込む。
若い男は武者の妖鬼の姿を見るなり、丁寧に頭を下げて、
「初めまして、私の名前は涼介と申します。矢那内涼介。それが、私の名前です。以後、お見知り置きを」
彼はそう言って頭を下げると、刀を抜いて鎧武者の男に向かって斬りかかっていく。
鎧武者の男は大小の二本の刀を構えた後に魔獣覚醒を唱えて涼介を迎え討つ。
「魔獣覚醒『幻海楼連』!!」
大小二本の刀が次々と絶え間なく振りかぶられて相手を海の波の様に襲っていく事から、そう名付けられたという。
実際、この魔獣覚醒の前に殆ど誰もこの武者に手も足も出なかったのだが、涼介なる騎士風の男は例外であるらしい。
彼は剣を抜くと、破魔式を唱えた後に素早く駆けて、魔獣覚醒を繰り出す彼の体にすれ違い様に斬撃を繰り出す。
両者は互いにすれ違う際に攻撃を振るったのだろうが、喰らった量には大きな差があったらしい。
暫くの間、剣を構えたまま立っていた二人であったが、やがて武者の男が刀を落として地面へと倒れ込む。
どうやら、勝ったのはこの男であったらしい。
彼は刀を鞘に収めると、今度は対魔師の人々に頭を下げていく。
「皆様、初めまして私の名前は矢那内涼介と申します。この格好からもご存知かとは思いますが、私は闇祓い課或いは天道騎士団と呼ばれる警視庁にては黙認されている妖鬼退治の専門家です」
彼は胸を張って自慢しているのだが、何処か周りの反応が静まり返っているのを見て空咳をして話題を本題へと上げていく。
「では、単刀直入にお尋ねしようと思います。あなた方が戦っていたのは戦雲玄竜ですよね?彼は今、何処に居られるのでましょうか?」
「居ないよ。もうこの世にはね」
氷堂冴子は躊躇う事なく答えた。涼介は彼女の目を見たが、それは真っ直ぐとこちらを向いており、到底、嘘を吐いている様にも思えない。
彼はそれを聞くと、上空を向いて大きな声で笑い始めてから、目を怪しく光らせて、彼ら彼女らを一瞥していく。
「成る程、成る程、あなた方が戦雲玄竜とその他の妖鬼を仕留めてくださったんですね。ありがとうございます!では、次の質問なのですが、この中に氷堂冴子さんはいらっしゃいませんか?」
氷堂冴子はその問い掛けに対して無言で挙手する。挙手をした女性を見つけて、こちらに手招く。
だが、冴子はそれに応じようとしない。嫌な予感がしたのだろうか。はたまた、何か別の予感がしたのだろうか。
それは誰にも分からない。ただ、彼が溜息を吐いたのは事実だ。
困った様子の彼は暫く頭をかいていたのだが、次に大きな声で背後、街へと繋がる場所から大勢の人を呼び寄せる。
「あ、皆さん。聞いてくださいよ。彼女が任意同行に応じようとしないんです。私はただ詳しくお話をお伺いしたいんですが……」
「待ってください。氷堂さんを何の容疑で捕まえるつもりなんですか?」
そう口を挟んだのは瀬戸口花陽。彼女はこの騎士団の逮捕劇に彼女を巻き込ませないと必死だったのだが、彼はそんな彼女を軽くあしらうと、誰にも断る事なく冴子の元へと歩いていき、呆気に撮られた彼女に手錠をかけようとしたのだが、その前に海崎によってそれを止められてしまう。
「離しなよ。その薄汚い手を」
「あなたは……あぁ、正妖大学の学生さんでしたか?あなたは何をしに来たんですか?悪いですが、彼女は連行させて貰いますよ」
「法律は常に知っている人の味方……場合によっては警察にもそれが適用されます」
「ほー、知った風な口を利きますね。自分の置かれた状況を理解してのご発言何でしょうか?」
涼介は笑顔は崩してはいないが、あくまでも威圧的。
そして、何よりも恐ろしいのはその笑顔が排水溝の中のヘドロよりも暗くて汚れているという事。
海崎英治はそれを理解するのと同時に、この男に冴子を連れさせてはなるまいと必死になって彼に弁舌での勝負を挑む。
一応は文の力で大学の受験に合格した身。弁舌にはそこそこの自身があった。
だが、涼介も口では負けてはいない。海崎の反論に彼は二倍、三倍もの量で反論をしていく。
そして、とうとう海崎英治を黙らせてしまう。
彼は貝崎の手を払い除けると、冴子の腕を引っ張って騎士団の元へと向かおうとしたが、その前にただならぬ冷気と風を放った一人の青年が立ち塞がる。
「待ってください。彼女は我々討滅寮の大事な上位の対魔師なんです。任意なんですよね?逮捕状が出たわけではないんでしょう?それなのに、どうしてこんなにも慌てて彼女を連れ去ろうとするんですか?」
風太郎の殺気と冷たい視線が涼介の胸を突き刺す。涼介は苦笑してから、彼に向かって先程、海崎を論戦で論破してやった時と同じで理論を武装しようとするが、その前に背後から綺蝶が現れて、彼の前に刀を突き刺して言った。
「もう小難しい議論などそれくらいにしておけば良いでしょう?昔、西郷隆盛は二条城の会議の際に『短刀一本あれば片付く』と言ったそうです。試してみませんか?」
綺蝶の放った言葉の真意に驚き、何か言葉を口に出そうと口をゴモゴモと動かしていた時だ。
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